ABS樹脂の3Dプリンター製品 特徴と取り扱い その1

ABS樹脂ってなに

ABS樹脂に関する記載を引用します。。

ABS樹脂とは、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンという3種類の有機化合物を化学的に結合させた合成樹脂のことです。
加熱によって軟化して可塑性を示し、冷却によって再び固化する「熱可塑性樹脂」に分類されます。
正式名称はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂で、「ABS」は各有機化合物の頭文字からとった略称です。

ABS樹脂は、上記3種類の有機化合物のポリマーであるポリアクリロニトリル、
ポリブタジエンおよびポリスチレンの下表に挙げたような特性を組み合わせることで、
それぞれの利点を活かしつつ、欠点を補うように作り上げた合成樹脂です。

ABS樹脂の機械的性質
ABS樹脂の特徴は、まず強度や剛性、硬度と靭性(衝撃耐性)のバランスが良いことです。
つまり、ABS樹脂は、壊れにくく、変形しにくく、その上、硬いにも関わらず、割れにくい素材であることを意味します。

転載 以上

日常的にいろいろな場所、電化製品の外装やらなにやらによく使われています。
そこそこ硬く、そこそこ耐熱性もあり、でも有機溶剤にはちょっと弱い。そんな感じです。

3Dプリンターで使われるUVレジンとの比較

3Dプリンター製品でUVレジンが良く使用されています。
ABS樹脂は「積層タイプ」の3Dプリンターで、UVレジンは「光硬化タイプ」の3Dプリンターで使用されます。
耐熱性はABS樹脂の方が若干優れているようです。
耐光性(耐UV性)もABS樹脂の方が優れています。
硬さはUVレジンの方がありますが、ABS樹脂の方が弾性があるようで、衝撃にはABS樹脂の方が優れているようです。
耐薬品性はUVレジンの方が優れているようです。特に有機溶剤に対してはABS樹脂は弱いです。

UVレジン製品とABS樹脂製品の比較

素材的に見るとABS樹脂の方が優れているように見えるのに3Dプリント製品でUVレジン製品が多いのはなぜか、というのはプリント方法の違いによるところが大きいといえます。
積層タイプと比較して、光硬化タイプの造形精度は数十倍~数百倍です。
積層タイプでは事実上0.1mm単位の造形は不可能です。それに比べて光造形タイプでは0.1mm以下のモールド表現もきれいに表現できています。
積層タイプではどんなに頑張っても積層痕を消すことはできませんし、エッジも丸くなってしまいます。
加えて、天板面や底面部分は織物のような細かな編み構造になってしまうのでそのままでは塗装をしたり、外壁面にしたりすることができません。

ABS樹脂製品の組み立て方、塗装の仕方

自分が作品として作っている3Dプリント品はすべてABS樹脂による積層タイプのものです。
自分の作品を例にして、ABS樹脂キットをどう作るか説明したいと思います。

積層タイプで3Dプリントするということ

積層タイプのプリントの仕方は、ざっくり言うとノズルから溶けた樹脂を押し出し造形し、それを段々に重ねていくという方法。
0.4mmとか0.3mmとかのノズルから出てきた円柱状の樹脂を並べ、もしくは敷き詰め、それを何段も積んでいって形にする。丸太で作るログハウスを想像していただけると良いと思います。0.4mmとか0.3mmの丸太で作るログハウス。
設計図上の線の上に丸太を並べていくので、線より丸太の半径分だけ両側に膨れる。
また、丸太を積み上げるときにある程度重なるように積み上げるから(積層ピッチはノズル径より小さいから)重なった部分が両脇にさらに膨れる。
膨れた部分がいわゆる「積層痕」となって凸凹に見えるわけです。
ログハウスの壁だけではなく屋根や床もそのままでは凸凹ですが、それと同じことが3Dプリントでも起こっているということです。

表面処理

積層痕を消す方法は大きく2つ。
表面をヤスリなどで削る。丸太の凸部分を削っていって平らにする方法。
パテなどで埋める。丸太の凹部分にいろいろ塗りこんで平らにする方法。

実際のところ積層痕は、設計図上の線よりはみ出ている部分になるので、削って平らにするのが一番理にかなっています。

天井や床のような平面の部分は、壁と違って丸太が1列に並んでいるだけで重なり部分がありません。ですのでこの部分は単純に削ってしまうと穴が開いたり薄くなりすぎたりしてしまいます。
ですので平面部分はまずパテ等でしっかりスキマを埋めてから削る必要が出てきます。

自分の場合0.4mmのノズルで、積層ピッチ(上下ピッチ)0.15~0.2mmで制作しています。そのため0.2mm弱の積層痕ができることになります。
船や飛行機の場合、やはり積層痕は気になりますのでヤスリ掛け、パテ+ヤスリ掛けで表面処理しています。
建物の場合は逆に積層痕をあえて残して「屋根のスレート」や「レンガの壁」表現として使っています。瓦屋根の表現の場合、積層ピッチを大きめ(0.2~0.3mm)にして少し粗目の積層痕を残すようにしています。

パテを使用するときに気を付けなければいけないのが、ABS樹脂は有機溶剤に弱いということ。
今までの経験ですと、溶きパテは全体的にダメっぽい(表面が溶ける、荒れる)。エポキシパテは問題ない。ラッカーパテも可能。
自分はタミヤパテ(ベーシックタイプ、ラッカーパテ)を主に使用しています。

接着

ABS樹脂通しの接着には基本的に「ABS用接着剤」を使用します。
瞬間接着剤でも接着できますが、液状、さらさら、流し込みタイプですと表面に吸い込まれてうまく接着できません。瞬間接着剤を使用するときはゼリータイプをお勧めします。

ABS樹脂と他の素材(金属、紙、木、プラ等)の接着の場合は瞬間接着剤(ゼリータイプ)を使用します。

接着面、特にABS樹脂同士の接着面はできるだけきれいに平滑にする必要があります。積層痕を残さないように削る(パテ埋めする)必要があります。
積層痕が残っていると一気に接着強度が落ちます。

塗装

素材にそのまま塗装しても塗料が樹脂に吸い込まれてしまいうまく塗れません。
塗装前に必ずサフを吹く必要があります。
サフもいきなり厚塗りすると表面が溶けてしまいますので、薄く数回に分けて吹き付ける必要があります。

基本的にABS樹脂は脂溶性なので、塗装には水性塗料の使用を推奨します。
ラッカー等を使用する場合、なるべく薄く、様子を見ながら塗装するようにしてください。


今日はここまで。その2はあるのか。














この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?