強い女、さざなみ、人生
自分の主張は絶対曲げない。
相手が自分より目上であろうが目下であろうが関係ない。
相手がどういう印象を持つかなんて一切気にせず、思ったことはストレートに口にだす。
しかも、人一倍カラダが動く。
長時間労働もなんのその、自ら進んで二人前、いや三人前の仕事量をこなす。
決して、自分のやりたいことだけやるのではなく、会社のことを考えてやるべきことに全力を尽くす。
だから、誰もなかなか文句が言えず、ほぼ野放し状態のロンリーウルフ。
強い女、って彼女のような人のことをいうんだろうな、とそう思っていた。ちょっと苦手なタイプだろうな、と。
だから、彼女が自分の部下になる、と決まった時には、頼もしさよりも、面倒だなというネガティブな感情をもってしまった。
それまでのように、離れた部署で台風を巻き起こしているのを遠巻きに見ているのと違って、その台風をうまくコントロールしないといけないのだ。
そう思ってはいたものの、やっぱり台風なんて人間の手でなんとかなるもんじゃなかった。
変わらず、自分の主張は曲げない、上だろうが下だろうが関係なく正論をぶちかます、人の何倍も業務を抱える。
ただ、近くにいるようになってわかったことは、やりすぎた、言いすぎたと感じたら、メッセンジャーできちんと謝罪ができる人なんだ、ということ。
すこしホッとする。
ひとりでずっと喋ってるかと思ったら、言い間違いをして「あっ、間違えた」ってつぶやいてるし。
なんだ、感情豊かなところもあるんじゃないか。
と、そこで印象が180度変わって、一気に距離が近くなる、なんてことはやっぱり小説や漫画、ドラマの世界の話であって、普通の人間の社会ではそうあるものじゃない。恋なんてもちろん始まらないし。
現実には、苦手さがちょっと薄まったぐらいで、これまでとあまり変わらない日々がただ続いていくだけ。
でもね、人間の人生って、そういうほんのささいな心の動きが、ジグソーパズルのように美しく関わり合ってできあがっていくものなんだろうね。
ささいなピースが一つでも欠けると、完成しない。
ささいなピースがあってこその、自分の人生。
そう考えると、こんなさざなみのような心の動きも、忘れないように大事にして心に留めておこう、って、そんな気持ちになる。
さて、明日はどんなさざなみが起こるんだろう。
楽しみにしていよう。
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