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【SNS投稿和訳】ハルキウ州北部方面の戦闘序列と情勢分析(フィンランド軍予備役将校Pasi Paroinen氏)

上記のリンク先から始まるXの連続投稿(日本時間2024年5月17日05:39投稿)は、ウクライナ領ハルキウ州北部方面の戦闘序列(ORBAT)と戦況を分析したものです。投稿者のパシ・パロイネン氏はフィンランド軍予備役将校で、同国のOSINT分析チーム「ブラック・バード・グループ」の一員として、ロシア・ウクライナ戦争に関する分析を発信されている方です。

このnote記事は、上記のX連続投稿の日本語訳になります。なお、本記事中の画像は、パロイネン氏のX投稿に添付されているものを転載して使用しています。

日本語訳

2024年5月16日時点におけるハルキウ州方面の ORBATと情勢分析に関するスレッド。2024年5月10日、ロシア軍はハルキウ州北部のウクライナ・ロシア国境で攻勢作戦を開始した。この6日間でロシア軍は国境沿いの3つの独立した攻勢軸上で5~9km前進している。

この作戦を遂行しているのは、最近、編成された北方(SEVER)作戦・戦略集団(OSG)で、再設立されたレニングラード軍管区を基盤としている。ハルキウ州攻勢作戦は2個軍団で行われている。具体的には、第11軍団(カリーニングラード)と最近編成された第44軍団(カレリア)だ。両軍団の指揮下に2個の自動車化狙撃師団があり、それは第18親衛自動車化狙撃師団(第11軍団)と第72自動車化狙撃師団(第44軍団)である。また、第72師団の一部は、いまだ編成途上にある。

また、ロシア軍は最近、ほかの方面から配置転換した追加部隊を、この攻勢に参加させている。それは、第6諸兵科連合軍の第25・138独立親衛自動車化狙撃旅団隷下部隊であり、それに第1親衛戦車軍隷下部隊も加わっている。

VDV(ロシア空挺軍)の戦闘部隊がこの攻勢に加わっている証拠も存在するが、投入されているVDV部隊の正確な規模は、現状、かなりの部分が不明である。なお、ロシア軍部隊のほとんどは、親部隊から分遣された大隊規模集団として投入されている可能性が高く、各部隊の戦力の中心は、依然として予備戦力として保持されているものと思われる。

ロシア軍の作戦目標は次の3つからなる。

  1. ウクライナ軍が国境を越えてベルゴロド州内に強襲を仕掛けてくることを阻止する目的での緩衝地帯の確保

  2. 国境付近のウクライナ軍部隊の拘束と、できるだけ多くのウクライナ軍予備戦力の誘引

  3. ハルキウ市を野砲の射程内に置くこと

それゆえ、この作戦はロシアの主攻勢である夏季作戦の準備としての牽制行動、もしくは陽動的攻勢として計画されている可能性が高い。そして、ウクライナ軍は乏しい予備戦力をハルキウ方面での戦闘に過剰投入しないように注意深く行動する必要があるだろう。

ところで、ロシア軍が第1親衛戦車軍から複数の部隊を投入していることは、何かしら気がかりな兆候である。これらの部隊がどの程度この方面に投入されているのかは、ハルキウ方面攻勢の正確な目的とその目的の範囲を測るうえで、極めて重要な疑問になるだろう。

ウクライナ軍は予備戦力の一部をハルキウ方面に回しており、戦線上のほかの地区から部隊を引き抜いている。それはロシア軍攻勢を抑え込む一助になっている。送り込まれた具体的な部隊は、第92強襲旅団とハルティア旅団だ。それに加えて、複数のほかの旅団からの部隊も投入されている。

ロシア軍は現時点で、ヴォウチャンシク[Vovchansk]という小都市を占領できていない。この小都市は、ロシア軍が克服するのが困難なボトルネックになっている。リプツィ[Lyptsi]方面とヴェセレ[Vesele]方面というハルキウ市により近いところでは、ロシア軍はもっと成功を収めつつある。

伝えられた話によると、戦闘は苛烈で、安定からはほど遠いとのことだ。ロシア軍はほかの大規模な攻勢をまだ始めていない。脅威にさらされているオチェレティネ[Ocheretyne]周辺の状況は、少なくとも現時点では、一時的だがウクライナ側がコントロールできている状態に戻っている。

ロシア軍は戦線全域において、ウクライナ軍防衛線に圧力をかけ、探りを入れ続けている。私の推測では、ウクライナは未投入の予備戦力をまだ保持しているが、予想されるロシア軍夏季作戦を前に、この予備戦力をバランスよく投入し、過剰投入を避けることが、極めて重要である。

ロシア軍の攻勢がどこで起こるのかを正確に予測するのは難しい。だが、選択肢はいくつか予測可能だ。その一つが、チャシウ・ヤール[Chasiv Yar]、ポクロウシク[Pokrovsk]、リマン[Lyman]の各方面で攻勢を続けるというものだ。また、ここ数カ月間、ロシア軍の行動があまり活発でなかったようにみえる方面で、ロシア軍が行動を起こそうとする可能性もある。

これらには、たとえば、オスキル川に向かってスヴァトヴェ[Svatove]から押し進む動きや、フリャイポレ[Hulyaipole]に向かってポロヒー[Polohy]から進む南部戦線での動きというものが考えられる。また、ロシア軍は最近、オリヒウ[Orikhiv]方面から第76親衛空中強襲師団を引き抜き、配置転換を始めた。

この部隊が次に送られる場所が、ロシア軍の次の主たる重点を示すよい指標になる可能性は高い。しかし、忘れてはならないのは、この部隊やほかのVDV部隊からの小規模な派遣部隊が、"マスキロフカ"(欺瞞)の一部として用いられる可能性があるという点だ。

このスレッドのもとになった情報は、さまざまなテレグラム・チャンネル(コスチャンティン・マショヴェツやWarArchive_ua等々)、Ukraine Control Map、CDS substack、GeoConfirmedから得た。ロシア軍の部隊とORBATの変遷を密接に追跡している@moklasen[*注:Xアカウント]には、特に感謝申しあげたい。

また、ジェニー&アンティ・ウィフリ財団に対して、特別の感謝の気持ちを伝えたい。この財団からの資金によって、私たちはORBAT地図の制作と継続的な情勢分析ができている。なお、日々の前線状況を示した地図は、以下リンク先で閲覧できる。

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