2024.6.5 パレスチナ支援イベント"FUK AGAINST GAZA GENOCIDE"に寄せて

ガザ、現在の状況

昨年10月7日、今回のイスラエル軍とイスラム武装組織・ハマスの「戦闘」が始まり、イスラエル軍によるガザ攻撃が継続中。犠牲になったガザの人々は、3万4654人となったと報告されています(ガザ地区保健省、5月4日時点)。
イスラエル側は、「ハマスの潜伏場所になっている」などとして、学校や病院を攻撃対象として集中的に狙い、特に女性と子供の犠牲者は7割超とも言われています。

パレスチナ人という特定の民族に対する集団殺戮である上、あたかもその根絶を目指しているかのように子供をあえて殺すイスラエルの攻撃は、語義通りのジェノサイドという他ありません。
(イスラエル側は、「ハマスの攻撃こそがジェノサイドだ」と言いたいがために、ハマスをナチスの思想と結び付けるプロパガンダに躍起になっていますが。)

ガザ最南端・ラファには、イスラエル軍による「避難勧告」にしたがって、多くの住人たちが逃げてきています。
現在はそのラファが攻撃対象となっており、連日の空爆で犠牲者が増え続けている状況です。
人々を袋小路に追い込んでおいたうえで、そこを叩いている状況なわけです。

現在、このラファへの地上作戦開始の懸念が高まっています。
仲介役の周辺諸国が提示した、ハマス側の人質解放を条件とする停戦案は、ハマスにより受け入れたものの、イスラエルは断固として拒否しています。
さらにイスラエル・ネタニヤフ首相は、「停戦合意の有無に関わらずラファを侵攻する」とさえ発言しています。

イスラエル・ネタニヤフ首相


地上作戦が開始すれば、さらに人道危機が拡大します。

事態は、新たなフェーズに入ろうとしています。

支援イベントやります。

6月7日(水)、福岡市天神・親不孝通りのThe Dark Roomにて、"FUK AGAINST GAZA GENOCIDE"と題し、パレスチナ支援のための音楽イベントを開催することとなりました。

チャージ料金と設置募金箱による収益の全額を、国境なき医師団・「緊急チーム」募金に寄付いたします。
(出演者等のイベント詳細情報については、Instagramアカウント @pankusu_not_dead でアナウンスいたしますので、是非ご確認ください。)

今年1月1日、能登半島地震が発生しました。福岡の音楽シーンでは、親不孝通りの人々を中心に2度に渡る支援イベントが開催され、私もその場にDJとして出演させていただきました。
「絆」とかそういうウエットでエモーショナルなことは抜きで、「やれることをやる、そのために金を集める」をシンプルに実践した先輩たちに大いに刺激を受けました。

とはいえ、その後自分の状況を見つめなおして、能登のためにやったことをパレスチナのためにやれていないということのアンバランスさ、結局は「海の向こうのことは海の向こうのこと」で済ませてしまう島国根性の日本人という状態に陥ってしまっていることの気持ち悪さを、どうしても感ざるを得ませんでした。

先述の通り、今まさに攻撃の目標が拡大し新しい局面に入ろうとしているこのタイミングで、開催することを思い立った次第です。

私がイスラエルに反対する理由 (ガザ攻撃、その長期化の原因)

今回のイスラエルによるガザ攻撃に反対する理由について、書いておきたいと思います。

まず第一には、冒頭に書いたような惨状の拡大です(基本的には、その事実のみで充分反対する理由たりえると思ってます)。

さらには、イスラエル側にこの攻撃をやめるつもりが全くないということ、そしてそれには、イスラエル側の明確な「意図」があるということです。

それはどういう「意図」なのか、そのことを説明するため、現在のイスラエル・第6次ネタニヤフ政権の状況について触れておきたいと思います。

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ベンヤミン・ネタニヤフ首相による第6次政権は、2022年末に成立しました。
ネタニヤフは1996年からそれまでの間に計13年間を務め、贈収賄容疑で刑事被告人となって2021年6月には一時失脚、その後の選挙でも単独での多数派を獲得できずにいましたが、
極右政党や宗教政党などとの連立が成立し、政権復帰を果たしています。

ちなみにこの間イスラエルは、ことあるごとにパレスチナ人を挑発します。イスラエルが実効支配する東エルサレムのアルアクサ・モスクには、ラマダンの日にイスラエル警察の治安部隊が突入。パレスチナ人参拝者たちに殴る蹴るの暴力を加えました。
ネタニヤフは、連立交渉相手である対パレスチナ強硬派の極右勢力の支持を得たいがため、そういったことをあえて野放しにしてきました。

政権復帰後まもなく、ネタニヤフは「司法改革案」を公表します。その内容は、最高裁判断を覆す権利を国会に与え、裁判官の任命に対して政府の関与を拡大するといったもので、三権分立など民主主義の諸概念に反する、メチャクチャなものでした。
その目的は、当時も係争中だった収賄の嫌疑をもみ消すために他なりません。
当然、イスラエル市民は反発します。2023年夏、反政権デモはイスラエル全土に広がりました。

ネタニヤフが関連法案成立の目途として設定した2023年11月の前月となる10月7日、ハマスによる攻撃が発生、1200人以上が犠牲となります。世論の怒りの矛先は一時、ネタニヤフからハマスへと移り変わります。
ネタニヤフはハマス一掃を表明、まもなく戦時内閣を発足。そこへ野党党首を入閣させ、それまでの政治的対立を一時的に脇に置くことで合意しました。
かつては汚職の疑惑が連立政権内の極右勢力の反発さえ招いていましたが、いまやハマス根絶論で一致団結。そして係争中だった裁判そのものも、戦争の混乱により中断となりました。

ハマスによる攻撃は結局、ネタニヤフただひとりの「焼け太り」の状況を生み出しました。だからこそ停戦案を拒否し続け、不要に攻撃を長期化させているわけです。

今ではイスラエル国内でも再びネタニヤフ政権批判が拡大しつつあり、人質の早期奪還、ネタニヤフ退陣と早期の選挙実施を訴えて、数万人規模のデモに発展しています。
「選挙による政治的空白は、ハマスを利するだけ」とネタニヤフは言います。しかしむしろ、攻撃の長期化こそ、ネタニヤフを「利するだけ」なのです。

「どっちもどっち」的分析の危うさ

今回のパレスチナとイスラエルのことを「宗教対立」と分析する言説を目にします。宗教的情念どうしのぶつかり合いだというわけです。

しかし、少なくともイスラエル側の攻撃は「宗教的情念」など全く無関係で、ただ単に「権力者の保身」のみが狙いなのです。

またあるいは、パレスチナとイスラエルの両者を「どっちもどっちだ」という語り方で評価する言説をよく目にします。

しかし、現在の両者の状況はつまり「日常的にいじめを行う子がいる、いじめられっ子はカッとなっていじめっ子を一発殴った、それをいいことにいじめっ子はその子を殴り返し、抵抗する能力がなくなってもひたすら殴り続けている」というわけです。
しかも、その子を殴り続けるかぎり、自らが働いた悪事から周りの目を逸らさせることができ、そのことを分かってあえてそうしているのだとしたら?

これは本当に、「どっちもどっち」と言えるのでしょうか?
「いじめる側にもいじめられる側にも原因がある」とでも言うのでしょうか?

私はそうとは思いません。
これが、ガザ攻撃反対の理由です。

最後に。

音楽を、とりわけパンクを愛する皆さん。

私が音楽をやってみようと初めて思ったきっかけは、10代の頃に聴いた70sパンクでした。
パンクカルチャーが私に教えてくれたことで最も重大なものは、「自分の頭で考えることをやめるな」ということです。

不公正に対して抗議の声を上げるのに、「正義感」など一切不要です(かく言う私が、30歳手前にもなって平気で路上喫煙も立ち小便もするような人間ですので、間違いありません)。
必要なのは、自分の頭で考えることをやめない、最低限の「知性」と「誠実さ」だけです。

強い者になびいて、弱い立場にいる者が苦しめられるのを見て見ぬふりすることは、果たしてスマートな生き方なのでしょうか?
(もしそうあると言うのであればもう話すことはありませんので、是非ブラウザバックしてください。)

声を上げることを「無意味だ」と言う方もいるかもしれません。が、ご自身の無力を嘆く必要は一切ありません。
私の身の回りには幸いなことに、たくさんの良い音楽を知り、皆の集まる場を提供し、楽しい会話ができる、賢明で誠実でセンスのある美しい人々がたくさんいて、
その中には、今回のイベントの趣旨に積極的に賛同してくれる人がいました。

友人に恵まれているという数少ない私の長所を活かすだけで、こういったこともできるということです。

今なにができるかを、一緒に考えていきましょう。

パレスチナの人民、そして、アメリカ国内で反戦を訴え続ける学生たちをはじめとした、すべてのプロテスターたちに連帯を。
FREE PALESTINE. STOP GENOCIDE.

6/7(水)、The Dark Roomでお待ちしています。

森本 a.k.a Morrie

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