パロディAD&D?HackMasterのススメ(勧めるとは言ってない)
本コラムではHackMasterの歴史について、公式サイト資料を元に簡単に解説します。
システムをまとめるとこんな感じです。
HackMaster4版:AD&Dライセンスに基づいて制作され、パロディシナリオも多い
HackMaster Basic:新システム。5レベルまでの基本ルールが無料公開
HackMaster5版:Basicの拡張版で20レベルまで遊ぶことができる。
4版はライセンスの都合で新作が出ることはありません。現在発売されていて遊ぶことができるのは5版になりますが、これはAD&Dとは全く異なるシステムとなっています。
HackMaster原作
「Knights of the Dinner Table(KoDT)」というRPGをテーマとしたコミックがあり、その作品の中で遊ばれていたシステムがAD&Dをパロディした「HackMaster」でした。本作品は一時期D&D公式のDragon誌にも連載されていたので、絵柄に見覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。ちなみにKoDTに登場するPLたちはHackMasterルールブックにも登場して解説してくれています。
HackMaster4版
Wizards of the Coast(WotC)社がAD&D2版からD&D3版に移行してd20ラインナップ展開を進めていたころ、Kenzer and CompanyはWotC社から6年間のAD&Dルール使用のライセンスを獲得してHackMaster4版をリリースしました。
基本的なAD&Dのシステムにハウスルールを追加し、KoDTで取り上げた内容を盛り込んで出来上がりました。一見コミックスのネタから始まったジョークゲームと思われがちですが、システムとして緻密に構築されています。最終的にHackMaster4版は2001年のBest Game of the Yearを受賞したくらい完成度の高いものでした。
HackMaster4版はコアルール・サプリメント・シナリオモジュールを大量にリリースしました。AD&D1版のパロディシナリオが大量に投入され、従来のファンの心をつかむ内容ばかりでした。
AD&Dの名作「The Keep on the Borderlands」
HackMaster4版の「Little Keep on the Borderlands」AD&D版と違って兵士2名が容赦無く槍の餌食になっています。
AD&D版ではアウルベアと戦う様子が描かれています。
HackMaster版ではアウルベアとの戦いで2名惨殺、1名はなんとか逃げ出そうとしています。
AD&Dの「Ravenloft」とHackMaster4版の「Robinloft」
HackMaster版では女性クレリックが捕まり、フック付きロープをガーゴイルに切られ、フェアリーはガーゴイルやバットに追われています。
AD&DのWhite Plume Mountain
HackMasterではWhite Doom Mountain!
マンティコアたちと戦っていますが・・・
ファイターは組み伏せられ、フェアリーは棘が貫通している始末。
パロディではありますが、中身は重厚かつデッドリーなダンジョンシナリオとなっています。HackMaster4版のルールブックやシナリオの表紙ではたいがいPCが惨殺されています。
しかしWotC社とのラインセンスは6年限定であり、契約が切れる前にAD&Dのシステムに依存しない独立したHackMasterのシステムを開発する必要がありました。
HackMaster Basic
HackMaster4版は旧来のAD&Dと同様に遊ぶためにはPHBとGMGとモンスターデータ集を買い揃える必要があり、新規参入するには購入負担が大きいものでした。そこで、2009年に240ページでゲームに必要なルールを全て納めたHackMaster Basicがリリースされました。
これは無料でダウンロードできるpdfファイルとして公開され、これだけで4つの基本クラス(ファイター、メイジ、クレリック、シーフ)と4つの基本種族(ヒューマン、エルフ、ドワーフ、ハーフリング)で5レベルまでの冒険を遊ぶことができます。75種類のモンスターとシナリオ3本がついている大盤振る舞い。
10ドルの有料版(HackMaster Basic Plus)では追加ルールを加えて10レベルまで遊ぶことができるようになっています。ルールは無料で配布して、シナリオモジュール販売で収益を確保するビジネスを採用したようです。
ちなみにゲーム用語はAD&Dとかなり共通しているのですが、システム面では大きく変化しています。特に戦闘ルールはラウンド進行処理から、延々と連続進行するシステムに変わっています。1アクションしたら硬直時間があって、硬直が解けたら再び行動すると言う形で、コンピューターゲームのようなシステムになっています。
HackMaster 5版(New HackMaster)
HackMaster 4版の発売から10年後の2011年秋に新しいHackMasterシリーズがリリースされました。システム的にはHackMaster Basicを拡張したものであり、20レベルまで遊ぶことができます。
最初にリリースされたのが『The Hacklopedia of Beasts』で、その後PHBとGMGと続きました。どれも美しい装丁で素晴らしいクオリティです。公式サイトから通販で購入することもできますが、価格も高いのでpdfファイルのダウンロード販売で購入するのが良いでしょう。
5版ルールブックは表紙にこだわっていて印刷版の価格は高めです。pdfルールの販売もしているので、こちらの方が入手しやすいです。
おまけ
2000年代に「竜の穴」というWebサイトがあり、その管理人さんのグループがHackMaster4版の日本での開拓者でした。
一度セッションに混ぜて頂いて遊び方を教えてもらったことがあります。良家のおぼっちゃんのパラディンを作ったのですが、なけなしのお金(親の脛齧り)で買ったフルプレートが、戦闘の中でゴブリンの攻撃でボロボロにされていく様を叩き込まれたことを覚えています。冒険の報酬よりもフルプレートの修理費の方が遥かに高かったのですから。
おまけ2:HackMasterに特徴的なNPC
トーチベアラー
たいまつを掲げて危険なところを先行して歩く命知らずたち!命を掛けて1日あたり銅貨数枚で働くというコストパフォーマンスが男前。ちなみにトーチベアラーのお奨め種族はハーフリングで、理由は「鎧を着た冒険者と移動速度が同じだから」ちなみにロープや食料といった荷物は別の荷運び人が持つので、PCたちには鎧以上には負荷はないはず。
余談だが、ハックマスターの追加ルールには即席武器(Improvised Weapon)の紹介として「ハーフリングを武器として使って殴ったら何ダメージでるか」がしっかり武器リストに載っている!!
その2:スクロールキャディー
自分でスクロールを管理する時代などとうに終わっているのです!優秀なキャディーがいれば、状況に合わせてお奨めのスクロールをあらかじめセレクトしてくれます!そして唱える人は「両手がふさがっていてもスクロールが読める」といういざというときにありがたい仕様!これも是非お雇いください!
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