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石神井と雑誌「散歩の達人」

 今月号の「散歩の達人」(交通新聞社)の特集は、「みんなの練馬」だった。首都圏の沿線やエリアに絞って街歩きを指南する雑誌だが、気になった場所だけ買うこともあるだろうし、病院の待合室などにあって、ぱらぱらとめくった方もいるかもしれない。  今回は「江古田」「練馬」「光が丘」「石神井」「大泉学園」をカバーしている。新宿、渋谷のような繁華街であれば、毎日通ったとしても、一生入ることもない店が大半だろう。石神井ならまずまずのところに収まると思ったが、「ちひろ美術館」や人気店の「辰巳軒

    • 石神井と太宰とネジアヤメ

       新宿に「風紋」という文壇バーがあった頃、主人の林聖子さんから、太宰治が湯豆腐を食べたという器を見せてもらったことがある。林さんは生前の太宰と親交があり、短編「メリイクリスマス」のモデルになった方だ。「風紋」はすでに閉店し、林さんもその後亡くなられている。適切な言い方か分からないが、器という形あるものを目にしたことで、生身の人間の姿が浮かび上がってきた。肉筆原稿を見るに近い体験だと思う。  石神井にゆかりのある作家・檀一雄は、太宰治との交遊を「小説 太宰治」という作品の中で

      • 上石神井と青梅街道

         石神井も大泉学園、上井草ぐらいまではご近所感があり、実際、飲食店では移転も多い。これが青梅街道を越えてくると、同じ練馬区でも石神井より中央線に軸足を置いているように思うがどうだろうか。都内は少し歩けばどこかの路線に行き当たるが、中にはどちらの駅とも言い難い場所もある。  上石神井で美味しい町中華を検索して、しばしば上位に上がってくる名前が「梁山泊」だ。住所的には練馬区「関町」で青梅街道を越えたところにある。有名なタレントさんも、この店の「肉あんかけチャーハン」をほめている

        • 石神井の地下飲食街

           阿佐ヶ谷にあるラーメン店「麺処 一笑」に行ったことがある。ここも人気店で人が並んでいるが、修業元は「石神井公園 井の庄」らしい。井の庄が有名な店ということは聞いていたし、実際に何度も頂いているが、いくつかある井の庄のひとつだと思っていて、原点が石神井だとは知らなかった。情報はあやふやだったが、地元としてはうれしい。「麺処 井の庄」があるのはライオンズマンションの地下飲食街「ライオンズプラザ」内だ。  石神井公園駅は高架化とともに隣接して商業施設が出来た。入れ替わりつつも、

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          「クラクラ日記」の中の石神井

           石神井の「ふるさと文化館 分室」では、練馬区ゆかりの文化人がパネルで紹介されているが、太宰治や坂口安吾の展示まではない。二人は石神井でもエピソードを残しているのだが、この地と昭和文壇の面々を結びつけてくれたのは、檀一雄と書き残した「小説 太宰治」や「太宰と安吾」という著作のお陰だと思う。  最近、練馬区教育委員会が旧檀一雄邸のそばに「檀一雄文学顕彰碑」を建てた。今さらな気もするが、いいことだ。  坂口安吾が、妻・美千代と共に石神井在住の檀一雄宅に身を寄せていたのは195

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          石神井「照姫まつり」と再開発

           今年も石神井公園周辺では「照姫まつり」が開催された。室町時代の石神井城主・豊島康経と娘の照姫の伝説にちなんだ行事である。一番の見せ場は時代装束と甲冑を身にまとった照姫行列だが、太田道灌に攻められて石神井城が落城した際、康経と照姫が三宝寺池に入水したという逸話は近代のフィクションとのことだ。始まりは1988年で、祭りとしての歴史もまだ浅い。  石神井公園内では池の周囲の遊歩道沿いに、二人を祀る「殿塚」「姫塚」が築かれている。こちらは祭りの賑々しさとは一線を隔し、見逃しがちだ。

          石神井「照姫まつり」と再開発

          石神井にネパールビール

           私の知人がインド古典舞踊、シタール、激ウマカレーにはまって久しい。映画も面白いし、インドは国として魅力に富んでいるのだろう。自分にとってインドはハード過ぎるイメージがあって、旅行で行くことは一生ないかと思っている。ずいぶん昔、シンガポールのインド人街でフィッシュヘッドカレーを食べたことが、私の持っている数少ない本場に近いインド体験だ。  実感として、ここ十数年でインド・ネパール料理店はかなり増えている。ハヤカワ新書「インドの食卓」では、日本がインド料理を受容する過程が描か

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          石神井とソメイヨシノ

           先日は、コロナが五類になってから初めての花見の季節到来であった。雨や曇りの日が続いたにもかかわらず、石神井池(ボート池)南側の「草地広場」や、三宝寺池側の「野球場(A地区)」の辺りでは、宴が開かれている。公園内に限らず、石神井はいたるところにソメイヨシノの木が植えられ、どこも美しい。  石神井川沿い、南田中の桜は今年も壮観だった。定番は橋の上から撮る写真だろう。川は大規模に掘り下げられているし、水量も少ないから、花筏とまではならなそうだが、川床に近いところも春めいている。

          石神井とソメイヨシノ

          石神井「路上観察」

           しばらく前から赤瀬川原平の写真集「香港頭上観察」を探している。1997年発売(中国返還の年)ということだから、新品で探すのは難しそうだ。赤瀬川源平の本は「ちくま文庫」に並んでいるのを見てきたが、先日、書店にいったところ、ずいぶん減っている。「超芸術トマソン」も荻窪の古書店で購入した。 「トマソン」とは、用途不明の階段や、正体不明のコンクリート柱などの愛称で、トマソンや看板などを観察する「路上観察学会」なるものまで創設されている。活動は八十年代、九十年代が中心だったようだが、

          石神井「路上観察」

          石神井でタンノイを聴く

           毎月「石神井公園ふるさと文化館分室」ではレコードコンサートが開催されている。これは石神井にゆかりのあった芥川賞作家・五味康祐の死後、所蔵していたLPや音響機器を使って行われているものだ。レコードコンサートの方は以前に抽選で外れ、それっきり縁遠くなっていたが、それとは別にオーディオのメンテナンス(音出し)が、毎週火曜と木曜に行われている。こちらの方は申込が不要で、参加費もかからない。  ふるさと文化室分室は「石神井松の風文化公園」にある。公園はもともと日本銀行の運動場だった

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          石神井と春の行楽弁当

           武蔵野の面影が残り、ボート池では行楽地の賑わいもある石神井は、桜の季節を迎えつつある。南田中の石神井川沿いや「草地広場」などではシートを敷いて、弁当を広げ、花見を楽しむことだろう。  西武新宿線・上石神井駅の近くに、「津多屋」という仕出し弁当の販売店がある。ホームページにも「ロケ弁」と書かれているのだが、屋外の撮影のためでけではなく、テレビなどの収録時、出演者やスタッフに配られる弁当のことだ。有名なところでは、代々木上原の「金兵衛」(「銀だら西京漬け弁当」)や、新宿四谷の

          石神井と春の行楽弁当

          石神井で熱燗

           昨年末、親戚からフグひれをもらったので、石神井公園駅近くの「友野屋酒店」で、燗酒用の日本酒を選んでもらった。昨今は「全国燗酒コンテスト」なるものもあるそうだ。「ぬる燗」「熱燗」「上燗」などと温度の差で呼び方も変わるらしい。以前は「酒を温めるなんて、冒涜だ」などと思っていたが、料理の味が上がり、体にも優しい気がする。  熱燗は寒い季節にぴったりだ。二月になると都心でも雪が降って、石神井もそれなりに積もった。4月~5月並みの暖かい日があってから、再び寒くなって雪もまた降ってと、

          石神井で熱燗

          石神井と光が丘公園

           東京練馬区の光が丘は、「光が丘パークタウン(光が丘団地)」という新興住宅地と、練馬区最大の「光が丘公園」で構成されている。都営大江戸線の始発駅なので駅名だけは目にしても、訪れたことまではないかもしれない。石神井からは北に位置するが、せっせと自転車を漕いでいくとそのうち着いてしまう。電車を使う場合、西武池袋線でいったん練馬駅に向かうことになるので、乗り換えもあって遠回りだ。  ショッピングセンター「光が丘IMA」内にホールがあって、ここで公演を観たことや、発表会を行ったという

          石神井と光が丘公園

          石神井の閉店ラッシュ

           十数年ぶりに井伏鱒二の随筆「荻窪風土記」を読み直した。ここでは関東大震災から第二次戦争後までの間の荻窪界隈の様子が描かれている。  冒頭、土地っ子で正直者の話として「関東大震災前には、品川の岸壁を出る汽船の汽笛が荻窪まで聞こえていた」と紹介されるくだりは、いつ読んでも味わい深い。すでにその頃の荻窪の風景は失われているからだ。   その本を買ったのは石神井に住み始めたばかりの頃だが、荻窪もその頃より詳しくなり、理解が深まった気がする。「荻窪風土記」では、店舗の実名を延々あげる

          石神井の閉店ラッシュ

          上石神井の模型屋さん

           石神井公園駅南口の商店街の中に、以前「大成堂 玩具店」があった。一度調べたことがあったが、閉店したのは2015年だったようだ。二階建てで、純粋に子ども向けのものから、カード類、プラモ、エアーガン、一般的なものからマニアックなものまで、「街のおもちゃ屋さん」と呼ぶには、はるかに充実したお店だった記憶がある。大人が入っても十分面白かったのだ。  その大成堂は閉まってからずいぶんそのままだった。いつの間にか工事が始まって、2022年の秋ごろになって「杉玉 SUGIDAMA」とい

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          石神井の「武蔵野うどん」

           久しぶりに「石神井公園ふるさと文化館」内の「むさしの エン座」で食事をした。最後に行ったのは昨年七月、ふるさと文化館で田中小実昌の企画展を見た時以来になる。  ここは人気のうどん店だが、もともとは近くからお引越しされてきた。今の場所は石神井公園を散策する際にぴったりだし、夏であれば隣のプールに行ってからもよい。休日はやはり込んでいるが、待つようであれば、ふるさと文化館の二階で展示を見て過ごすことも出来る。  エン座のうどんは美しい。緑の部分練馬大根の葉が練り込まれ、赤い部分

          石神井の「武蔵野うどん」