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経済的、社会的、心理的、時間的メリットを解析

近年、価値観や社会規範が変わる中、恋愛に対する関心が薄れていくという傾向が広がっています。以前の記事では、この「恋愛離れ」という現象に焦点を当て、未婚化の要因として交際相手を持たない未婚者の割合が増加していることを探りました。

恋愛離れの傾向が進み、1人でいたい・いる人が増えている現代社会。このような状況を背景に、今こそ、何で人はパートナーを持つのか、2人で共に過ごすことのメリットについて、改めて考えてみたいと思います。

Pairs(ペアーズ)は2021年、第2弾「少子化・未婚化の改善について考えるアドバイザリーボード」を設置し、有識者たちが交際・結婚の前段階の課題としてパートナーを持つことのメリットなどについて、様々な角度から議論しました。

議論は、経済学やマーケティング、心理学・コミュニケーション、ミレニアル世代の新たな価値観など、それぞれ異なる専門分野の委員により(下記参照)、2022年10月から12月にかけて、3回の会合に分けて行いました。

ここでは、そのアドバイザリーボードでいただいた有識者の意見を紹介します。
【アドバイザリーボード参加者】 
治部 れんげ氏(ジャーナリスト・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)(座長) 
青木 幸弘氏(学習院大学経済学部教授) 
石山 アンジュ氏(一般社団法人Public Meets Innovation代表) 
岡本 純子氏(株式会社グローコム代表取締役社長) 
山口 慎太郎氏(東京大学経済学研究科・政策評価研究教育センター教授)


なぜ、1人でいたい、いる人が増えているのか

2021年に実施された「第16回 出生動向基本調査」によると、多くの未婚者が「行動や生き方が自由」、「友人などとの広い人間関係が保ちやすい」※などと1人でいることにメリットを感じると回答しています。
※出典:国立社会保障・人口問題研究所 第16回出生動向基本調査 結果の概要 (2021)

なぜ1人でいたい・いる人が増えているのでしょうか。座長の治部氏の進行で、有識者の議論が始まりました。

治部 れんげ氏(ジャーナリスト・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)(座長) 

青木氏は「コンビニをはじめとする生活インフラが充実したことによって、フィジカルな面では、一人暮らしの不便さが解消してきていることが非常に大きいと思います。一人暮らしのための生活用品、食材その他も、すごく充実をしてきてるので、老後も安心だという面もあると思います」とコメント。1人でいたい・いる人が増えている理由に、生活インフラの充実を挙げました。

青木 幸弘氏(学習院大学経済学部教授) 

青木氏が挙げた生活インフラの充実に加え、1人でいる選択肢が増え、個々の自由度が高まったという背景があります。。以前は家族や社会からのプレッシャーによって「適齢期には結婚すべき」という規範が強かったですが、次第に薄れてきました

規範の変化や生活インフラの充実により、若い年代の間でパートナーを持つことに対する価値観が変化しています。併せて、結婚に対する期待値も上がっている面もあり、昔は許されていたようなことも許せないなど「結婚するならこうであるべき」といった理想も高くなっています。

上記のようにパートナーを持つことに対して個人の価値観や期待値が多様化する中で、実際の交際・結婚のあり方は依然として型にはまっているイメージが抜けないため、自分の価値観や理想と異なる、あるいは自分には難しいなどと感じて、交際や結婚が敬遠される傾向があります。

パートナーを持つことのメリット

1人でいたい・いる人が増えている背景をお伝えしましたが、一方で、パートナーを持つことのメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。有識者の意見から、以下の4つの側面が浮かび上がってきました。

  • 経済的

  • 心理的

  • 社会学的

  • 時間的

それぞれのメリットに関する有識者の意見を紹介します。

パートナーを持つことの経済的なメリット

共働きのカップルの場合、1人の収入から2人の収入になるメリットはもちろんありますが、個人と社会レベルにおいて、それ以外の経済的な利点もあります。

例えば、パートナーがいると、旅行や外食などの体験型消費が増えます。自己表現や誰かと一緒に経験したいという欲求、相手を喜ばせるといった目的の消費が増えます。パートナーを持つと経済的負担が増えるイメージがあるかもしれませんが、実はこうした消費が増えることで、働いてお金を増やす意欲が上昇し、社会全体の生産性向上にもつながることになります

山口氏は、「パートナーがいると消費も楽しいから、その財源を得るために生産活動が活発になっていくと思います。経済学におけるデータのパターンとしてよく知られているのが、マリッジプレミアムです。結婚している男の人は、そうでない男の人より所得が高いというものです。もちろん所得が高いから結婚できるという話もありますが、逆に結婚することによって、パートナーがいるから頑張ろうというケースもあるかもしれません」とコメント。

パートナーを持つことで消費が増え、働く意欲と生産性が向上し、個人の経済的事情に加え、マイクロエコノミックスのレベルにおいてのメリットを挙げました。

山口 慎太郎氏(東京大学経済学研究科・政策評価研究教育センター教授)

パートナーを持つことの心理的なメリット

アカデミックな研究においても、人や社会とつながっていることが人間の幸福感や健康にとって、一番大事であることが明らかになっています。

石山氏は、「個人の幸せの資産になるものは”つながり”ではないか、と若い世代は上の世代よりも強く思っている傾向が高いと思っています。豊かさの物差しが、お金と自由から、つながりと安心に移行していく、すでに移行してきているのかなと思っています。リーマンショックや、震災、国際社会の情勢でお金の価値は変動します。グローバル経済の不安の中に生きていると、むしろ変動しない確かな資産っていうものは、お金よりもつながりなんじゃないかと思います。明日地震が起きても、お金を持っててもどうにもならないことが多い中、頼れる人がいる、それ自体が資産だという価値に変わっていくのかなと」とコメント。

パートナーを持つことによって、人とつながることで幸福と安心が得られるメリットを挙げました。

石山 アンジュ氏(一般社団法人Public Meets Innovation代表)

パートナーを持つことの社会学的なメリット

“お一人様”に対応した生活インフラの整備にともない、他者と共働する必然性がなくなりました。上記の「心理的なメリット」と矛盾する部分もありますが、実際、人とつながることが面倒であったり、リスクに感じたりするケースもあります。

近年、「コミュ障」とも言われるコミュニケーションが苦手な人が増え、現代の孤独化が一種の社会問題になっています。そのような中、パートナーを持つことで他人と関わることや共働することを経験し、社会とのつながりを持つきっかけを得られます

岡本氏は、「コミュニケーションは慣れと場数が大事です。そういう意味では、結婚や恋愛というのは、まさに自分を鍛える場だと感じています。それがなくても生きていけますが、社会の中で生きていくうえでは、知っておいても損はありません。社会や会社のなかで、その知恵はとても役立つ気がしています」とコメント。

パートナーを持つことによって、コミュニケーション面が鍛えられ、社会とつながるきっかけが得られるメリットを挙げました。

岡本 純子氏(株式会社グローコム代表取締役社長) 

パートナーを持つことの時間的なメリット

1人だと1日24時間ですべてをこなさなければなりません。パートナーと一緒に生活すれば、家事などの役割を分担することで、その時間を別のことに使えるようになります。

青木氏は、「パートナーと一緒に生活すれば、時間のプーリングが可能になります。1人だと1日24時間だけど、2人なら48時間なので、その48時間をどう使うかというフレキシビリティーが生まれてくるわけで、ここは非常に大きいと思います」とコメント。

まとめ

本記事では、1人でいたい・いる人が増えている背景をお伝えしたうえで、4つの側面から、パートナーを持つことのメリットを考えました。

1.経済的メリット
個人的な経済的事情だけではなく、マクロエコノミックスのレベルにおいてもメリットがある

2.心理的メリット
人とつながることで安心できる

3.社会学的メリット
コミュニケーション面が鍛えられ、社会とつながるきっかけを得られる

4.時間的メリット
時間的な余裕が生まれる

ペアーズは引き続き、有識者の方々の知見を参考に、恋活・婚活マッチングアプリを牽引するリーディングカンパニーとして、少子化・未婚化課題の解決に寄与する取り組みを進めてまいります。

他の考察や提案を見てみたいと思う方は、以下のプレスリリースをご覧ください。

エウレカ、第2弾「少子化・未婚化の改善について考えるアドバイザリーボード」設置 〜 今回のテーマは「パートナーを持つことの社会的な波及効果」(2021/10/7)

Pairs (ペアーズ)は、エウレカが運営するマッチングアプリです。ペアーズは、日本で最も使われているマッチングアプリ※として、日本が抱える少子化・未婚化という課題に対して、「出会い」の創出という観点から解決策を提示し、社会に貢献していきたいと考えています。
※MMD研究所「2022年マッチングサービス・アプリの利用実態調査」2022年9月時点。