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塀の中で教えるということ①

改めて、私の経営する持続未来グループには基本理念があります。
「多様な人たちが働いて楽しい」というものです。

これは必ずしも「楽しく働く」ということではありません。もちろんそうであったら素晴らしいとは思いますが、その実現はかなり難しい。
「働いて楽しい」というのは、「働くこと自体が楽しくなくていい。でも、同じ働くなら、何かしら楽しいことがあった方がいい」くらいの意味です。

では「多様性な人たち」とは何かといえば、まず挙げられるのが障害者雇用です。
私たち持続未来グループの障害者雇用率は14.8%です。法定雇用率が2.3%(2024年4月からは2.5%)ですから、低い方ではないと考えています。

でも多様性とは障害者雇用だけではないはずです。それは解っているのですが、特に何かを積極的に取り組むというわけでもありませんでした。

そんなとき、法務省から一つのご依頼を頂きました。
「塀の中で服役している比較的若年の知的障害者に、清掃などの職業教育をしたいので協力してほしい」という趣旨です。


■ 出所者の雇用って取り組んでないよね


ご依頼を受けて気づきました。「そういえばウチ、出所者の雇用って取り組んでないよね」
そう、うっすら「取り組んでみようかな、そのうちに」くらいにしか考えていませんでした。協力雇用主という言葉などは聞いたことがありますが、せいぜいその程度です。

決して楽なことだとは考えていませんが、私たちの手掛けている清掃サービスというお仕事は万年人手不足のうえ、これからヒートアップすること必至な労働人口減少局面です。ありとあらゆる手段を、あれもこれもやってみるべきです。

ということで、「お話くらいは聞いてみよう」となりました。

■ ウチに依頼が来たのは、たらい回しの末だった


お話でわかったのは次のことです。

・千葉県市原市に「市原青年矯正センター」という施設を開所する。
・この施設では、若年の知的障害者の出所後を見据え様々な職業訓練と資格取得を行う。
・こういう施設は全国初である。
・そこで清掃サービスの技能を教えてほしい。
・実は業界団体をはじめあちこちに依頼したがたらい回しにされた

憤慨したのは「たらい回し」を聞いてからです。
「はあ?万年人手不足の業界が何やってるの?っていうか、いっちょやってやろうくらいの気概はないの?」

余談ですが、マンガ『違国日記』の槙生が、両親を亡くし親戚をたらい回しにされそうになった姪の面倒をみることを決意したときのセリフ、「
たらいは臼に水を入れて下に皿を敷くと書く!」を思い出しました。

まあ、考えてみれば当たり前ですよね。千葉県市原市の案件が、なぜ広島の事業者に持ち込まれるのか。まさにたらい回しです。

この施設ですね。NHKでも取り上げられていました。


■ ろくに知らないくせにアドバイスする人たち


このご依頼を引き受けるにあたり、色々な方から 要らぬおせっかい アドバイスを頂きました。
「出所者は難しいよ。すぐまた再犯するし」
「出所後も引き受けてくれとか言われて大変じゃないの?」
他にも、単なる知的障害者への差別的なお言葉も含め頂きましたが、大別するとその2つですかね。

ではこうした 要らぬおせっかい アドバイスをくれた人たちが、どの程度受刑者や出所者について詳しいかといえば、自らが関わった経験がないことがほとんどなんですね。せいぜい「人から聞いたことがある」くらい。

別に私だってそれほど詳しいわけではないけれど、出所者と関わる機会の多いNPOのお手伝いをしているので少しは知っています。そうした人たちからは有益なお言葉を頂きました。

■ やってみるか!(遠いけど)


そして、結論としては「やってみるか!」に決めました。
これまでも人手不足だったうえに、これからはより一層の人的供給制約が進むわけです。あれもこれも考えられる手段は試すべき、打席には数多く立つべきです。

それに「全国初の試み」っていいじゃないですか。こういうことには乗っておくに限ります。

しかし、場所は千葉県市原市…正直に言います。これまで行ったことすらありません。しかし、ウチは北海道十勝でも事業を行っています。それに比べれば全然遠くない。

まあ何とかなるか。というわけでこの試みはスタートすることになりました。


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