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飛べ - 週末1000字エッセイ#09 (全文公開)

 夫婦ふたり、夜のファミマ前。小腹が空いたわたしたちは、買ったばかりのファミチキの封を切ろうとしていた。

 “飛べ”

 黄色の縞模様の袋に書かれた文字を見る。
 毛筆で力強く書かれていたそれを、わたしは不思議そうな顔をしてみた。

「“ハイキュー!!”だよ」夫は言った。
「あ、聞いたことある!大学生のとき、友達が好きって言ってた」
 わたしはファミチキに齧りつきながら、答えた。
「面白いんだよ。今度、劇場版やるんだよね」
 そう言うと、のぼりを指差した。そこには、映画の宣伝が書かれていた。どうやら、バレーボールの作品らしい。

「原作は漫画で、アニメがあって、その続編が今度やる映画なんだ」
「へえ、そうなんだね」
「今度アニメ見てみる?」
「見てみる!」

 2024年1月下旬。
 ファミマの前で、わたしはハイキュー!!と出逢った。映画公開は、2月16日だ。

 ハイキュー!!は、高校男子バレーボール部を描いた物語である。主人公の日向翔陽が、烏野高校バレー部に入部し、そこで様々な人と出逢い、春の高校バレーを目指していくというストーリーだ。

 見始めると、止まらない。
 早く次が見たくて仕方ない。

 どのキャラクターも個性と人間味がある。そして、とにかく熱い。高校3年間という一生で一度しか訪れないその時間を、ひとりひとりが、上を向いて羽ばたいている。目の前にあるものに全力でぶつかっていく。
 全てが熱くて、まっすぐで、夢中になり呼吸するのも忘れるほどだった。

 完全にハマった。

 アニメ4期分。約35時間。
 わたしは2週間ほどで、それらを全て見た。
今の時代は便利だ。U-NEXTありがとう。「昔だったらTSUTAYAに行って借りなきゃだもんね」と、夫は笑った。

 ハイキュー!!ファン歴半月。
 いざ、映画館へ。
 劇場版ハイキュー!!ゴミ捨て場の決戦。

 春の高校バレー宮城県代表となった烏野高校が、東京都の音駒高校と戦う。音駒高校とは、合同合宿で切磋琢磨した仲である。その時、日向翔陽は音駒高校の孤爪研磨と約束した。練習試合ではない“もう一回”がない試合をしよう、と。

 その“もう一回”がない試合が始まる。
 わたしは、息を止めた。

 これだけは言える。
 あそこは、映画館ではなかった。
 バレーコートだった。
 わたしたちは、観客だった。

 今はただ“もう一回”がない試合を、“もう一度”見たくて仕方がない。

 夫と知り合うまで、映像作品を見たり、映画館に足を運ぶ機会がほとんどなかった。今では、年に何回も映画館へ行く。それがわたしにとって、良い経験となっている。作品に触れるたび、わたしの感性が揺さぶられるのだ。

 この世は、素晴らしい作品にあふれている。
 またひとつ、新しい世界を知ることができた。

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