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Apron Front Saddle Shoes




学生のころたった一度しかやったことがなかったライトアングルステッチ、このステッチワークを使い靴を作ってみようと思いましたがEdward GreenのDoverタイプはどこのブランドで誰でも作っていますしそういうもうすでにあるデザインの靴を作ることに意欲がないというか気持ちが盛り上がらないということで色々デザインを考えましたがやはりこのステッチワークはUのフロントエプロンが一番しっくり来ますし他のところに持って行くと違和感とまとまらなさで全く上手く行きませんでした。それで出来たデザインがサドルタイプで以前オレンジ色の革で作った靴のデザインの延長に当たる形に落ち着きました。靴のデザインのラインで曲線とカーブを使うことを常に意識をしていて直線や角や鋭角はあまり好んで使っていなかったので今回少しこのあたりのラインも取り入れてみました。サドル羽根とUフロントエプロンを直線で分けて羽根から履き口に繋がるカーブは曲線にせず角を作りそこを強調させるためタンは羽根からはみ出ないようぎりぎり内におさめました。それに合わせてドッグテールは四角い形にしました。Uの分量もあまり大きくなく木型に対して良い塩梅になったと思います。タンの固定縫いの白のステッチ、当初は羽根の直線のステッチと一緒に最後に縫い付けるつもりでその落としステッチの白ステッチは入れるつもりはありませんでした。しかし製甲をしてみるとどうしてもバンプを一気に縫い進めた方が綺麗に楽に無理なく作業が出来るのでそのまま製甲をし最後に落としステッチをミシンで縫いました。しかしそのステッチのピッチやほんの少しの歪みがとても気になり製甲し直すにも革が足りないし無駄にしたくないということでなんとか良い方法はと考えてデザインのひとつとして白のステッチを手縫いで入れました。一度ミシンステッチを入れてそれを抜いて再度手縫いステッチと結果革を傷めることになりましたが。

今回使った革はDu-Puyのカーフ、17年くらい前学生だったとき卒業するときに学校の使わない半端な革を安く譲ってもらったもの。ハリがあり少し硬く吊り込みに不安を抱いていましたが思った以上に吊り込みに苦労しました。学生のころの課題靴一足目も同じ革でしたが当時こんなに苦労した記憶がなく愕然としてしまいました。

ウエルト縫い付け後なんとなくウエルト位置がちょっと外かなト感じましたがミッドソールと本底を貼るとそうでもないと思いましたが次回少し中底設計を変えてみようかとも思いました。私の中底加工は日本式の土手外は傾斜を付ける形で際を1.5〜2ミリくらいに作るやり方で海外の職人がやっている段を作り際をあまり薄くしない方法をやったことがなく後者のやり方もやってみようかと思います。



ソールはVibram2055番ソール、自分の靴では一度も使ったことがなく2055番ソールの靴も持っていません。当初ミッドソールまで手縫い2055番ソールを接着で作るつもりでしたが吊り込みから掬い縫いと色々苦労し手縫い出し縫いする気分がちょっと削がれてしまったので出し縫いはミシンで外注しました。特にステッチのピッチ等注文はしませんでした。ミシン縫いのコバ仕上げのギザ入れは目付け鏝てひとつひとつ付けました。ミシン職人の癖なのでしょうかつま先のカーブのところが少し細かくなっているのが気になりました。細かいギザは華奢にドレスよりに荒くなるとカジュアルになりギザを入れないステッチのみだとちょっと物足りなく感じこのあたりの表情も靴のデザインによって変えるべきところですね。鏝当ての段階でこの辺りをきちんと作るなら出し縫いを手縫いでやった方が良かったんじゃないかと少し悔みました。出し縫いの仕上げの仕方で表情は変わりますし何も手縫いだから華奢さや繊細さを表現出来るわけではなくミシン縫いでも手縫い仕上げとは違うやり方で同等の仕上げが出来ると思っていてステッチを隠すための鏝当てでギザを作る以外の方法もあるのではないかと考えています。


ミッドソールかラバー本底踵部分に歩留まりパーツを差し込むことを考えていましたしその歩留まりパーツを白のラバーにしようとも思っていましたが何かしっくりこない後々やった後悔をするのではといった不安でいつも通りノーマルな積み上げをしました。アッパーの白ステッチに合わせて顎を白く塗り車鏝のかわりに踵周りにグルーバーで薄く溝を掘りエッジペイントで着色。このライン一本で少し垢抜けたようなクラシカルやトラディショナルな感じが抑えられたような感じがしてちょっとモダンぽくなったところは想像していた通り。この白のライン、エッジペイント以外で何かもっと良い方法があったのではと後に思うこともありましたしラバーシートを差し込んでも良かったかなとも思いましたがコバインクのことを考えるとそれも難しいかなと思ったり。

当初のデザインや仕様を製作しながら所々変えていってデザイン画やイメージだけでは決められない、いざ作ってみて作業してそこで分かることが多々あることに気づきました。これは牛床仮靴でも分からなかったことでした。ヒール周りのデザイン、白のラバーを差し込んだりヒールの形を変えたりも考えましたが奇を衒う感じがあまり出すぎるとバランスが崩れたり自分が身に着けてそれがノイズになり気に入らなくなりそうで白一本のラインを入れるくらいでちょうど良く感じます。


紐は古着屋で見つけた古いアメリカ製の紐です。

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