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作曲・編曲家によるShure SE846レビュー

先日、Shure SE846を購入しました。SE846は2013年発売で、2020年現在も主力製品という位置づけになっています。パッケージは何度かリニューアルしているようですが、長い間一つの製品をフラッグシップにし続けていることに好感が持てますね。

買った理由

以前よりハイクラスのイヤーモニターに興味がありました。モニターヘッドホンは多数持っているのですがイヤホンは外出時に使うSONY MDR-EX800STくらいしか持っていなかったので、家でも外でも常に最高の音質で聴けるイヤホンを探していました。
主な用途は作曲、編曲、ミキシング、マスタリング、外出時の音源確認などです。また、音楽系の専門学校の講師もしているため、出先で学生の作品を聴くことなども多いです。
比較検討していた機種はSenheiserのIE500Proです。Senheiserの音はとても好きなのですが、IE500Proはケーブルが独自規格で選択肢が狭まると思い、SE846に決めました。

使い始め

まずはデフォルトで装着されているフォームパッドで聴いてみました。耳がこのイヤホンに慣れていなかったため多少違和感を感じましたが、1曲聴き終える頃にはだいぶこのイヤホンの音に慣れることができました。というのも、自宅で現在メインで使っているヘッドホン、YAMAHA HPH-MT220にやや近い鳴りを感じたためです。左右の音の距離感は異なるものの、低音のタイトさ、誤魔化しのない中低域など、とてもモニターライクな印象を受けました。高音域においては、張り付くような嫌味がなく、ボーカルのサ行やクラッシュの質感を綺麗に出しています。大きい音量にしても天井にぶつかるような潰れた質感にならず、どの音量でも自然に聴くことができます。

パーツによる出音のカスタム

SE846は、ノズルフィルターや、多数付属しているイヤーピースの交換によって、サウンドをカスタマイズできます。初期装備のバランスノズルは、ハイが出ず抜けが悪い印象でしたので、ブライト型に変更しました。高音で耳が痛くなる、といったことがなければレンジの広いブライト一択だと思います。ネットでもほとんどのユーザーがブライトを選択していました。
イヤーピースによる音質の変化も無視できません。迷いましたが最終的にシリコンLが最もよる鳴らすことができ、使いやすい音と判断しました。この辺りは耳の形状の違いもありますので、最も自分に合ったものを選んでみてください。ケーブルに関してはしばらくはリケーブルせず、付属のものを使用してみようと思います。

付属のBluetoothケーブル「RMCE-BT2」

2020年現在のSE846には、Bluetooth化できるケーブル「RMCE-BT2」が付属しています。これの音質がとても良く、たいへん驚きました。
メーカーによるとアンプの品質から見直したSEシリーズのために設計したケーブルのようで、有線接続と同等、場合によっては有線接続を超える音質で鳴らすことができます。iPhone直差しではSE846を上手く鳴らし切ることができませんが、Bluetooth接続であれば影響を受けません。他のMMCX対応イヤホンをお持ちの方にも勧められる品質です。

(9/22追記)イヤーピース沼にハマる

SE846は、非常に高解像度でレンジもかなり広いサウンドのため、ケーブルやイヤーピースの特徴を強く反映します。
イヤーピースは比較的低価格で音をカスタマイズできるパーツです。前述のとおり、シリコンのイヤーピースの印象が良かったので、細軸対応のシリコンイヤーピースを2種類、比較として定番のコンプライアジアンフィットを購入し、比較してみました。

左から、コンプライTS-100アジアンフィット、SpinFit CP800、acoustune AET16、純正イヤーピースSHURE EASFX1です。サイズは全てLサイズを購入しました。

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・コンプライTS-100アジアンフィット
一歩引いた感じで柔らかいサウンド。低音域から高音域までバランスが良い。しかし悪い音まで心地よくしてしまうので、リスニング用途には良くても制作で使えるかについては疑問が残りました。リスニングオンリーだったら間違いなくこれを選択すると思います。ただし価格が高く耐久性も良くない。

・SpinFit CP800
気になっているイヤーピースです。コンプライとは正反対で、一歩近づいた印象のするダイレクトなサウンド。高音域が多少きつく感じる部分がありました。この高音の質感、何かに似ていると思って考えてみたら、SONY MDR-CD900STでした。ということもあり、モニター的にすごくいい音なのでは、という気がしています。一度このイヤーピースで1曲作ってみる予定です。

・acoustune AET16
特に主張がなく、印象の薄い音に感じました。ただ、パッと聴いたバランスは良く制作でもリスニングでもいけそうだと感じました。やや高音域が丸まっているのは頂けません。音、着け心地ともに疲れにくそうな印象でした。

・SHURE EASFX1
SE846らしい音を最もよく引き出している印象がありました。純正ということもあり、下から上までとても素直でスタンダードな音に聴こえます。音の距離感も近すぎず遠すぎず、悪く言えば個性の無い音なのですが、SE846ユーザーであればどこも足しも引きもしないこのサウンドは一度体験しておくべきなのかもしれません。

モニターヘッドホン/イヤホンは単純な音の良し悪しでなく、音が作りやすいかどうかでも印象が大きく変わるため、はじめの印象で使えないと判断してしまうのはよくありません。現状ではSpinFit CP800とSHURE EASFX1を行ったり来たりしながらどちらが良いかを見極めていこうと思っています。

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