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”くろまめさん”から学ぶ、福祉や介護の魅力!職員から経営まで携わっている稲葉さんからのメッセージ


今回、インスタグラムで「介護事業くろまめさん」を知り、よくある「福祉・介護イメージ」が、ガラッと変化した一瞬でした。

SNSの中からでも感じられる暖かさ。そんなくろまめさんの歴史や背景を深堀させていただきたいと思い取材しました。すると、代表の稲葉さんから自身の在り方について悩んでいる方へ、メッセージをいただきました。


【今回お話を聞いた方】
株式会社ひだまり介護 くろまめさん 代表稲葉耕太さん
【プロフィール】
1983年9月24日生まれ、京丹波町出身。介護福祉士として特別養護老人ホームで働き、5年目にして自ら施設を立ち上げ。現在は「介護」「地域」と「田舎暮らし」が合わさり、お年寄りや介護スタッフ、地域のみんなが楽しく生活できるような、サービスを提供。最近では、インスグラムのストーリ発信が話題に(または、熱を注いでいる)Yotubeでは介護を楽にできるワザや、普段聞けないデイサービス運営の裏側など解説。
HP:http://kuromamesan-kaigo.com

順風満帆ではなかった。初めは手探り状態でスタートした事業

ーーよろしくお願いいたします。
稲葉さん:お願いします。ちなみに、なぜうち(介護事業くろまめさん)を知ってくれてたのですか?

ーーSNSのランダム投稿で、くろまめさんの発信が目にとまりました。私の中で、福祉・介護のイメージが変わる、衝撃を受けたのを覚えてます。

そうでしたか。ありがとうございます、嬉しいです。

ーーではまず、事業展開にあたって”ひだまり”から”くろまめさん”へ数年前に変更されましたね。とても特徴的な”くろまめんさん”の由来を教えてください。

そうですね。最後に「ん」が着くのを意識しました。有名な芸人さんってみんな「ん」が着きますよね?ダウンタウン、ウッチャンナンチャン、バナナマンとか。……っていうのは冗談です(笑)

”ひだまり”って名前がつく施設はたくさんあります。当時25歳で立ち上げ、経営が上手くいくかわからず、手探り状態だったので「うまくいくように」と願いを込めて付けました。様々な経験していく中で、移転をきっかけに個性を出したいなと考えてました。

もう1つが、介護とー次産業は合うと思って。そこに、京丹波町も関連づけたいなと思い、特産品の「黒豆」から取りました。で「さん」をつけてたんですけど、最初は大反対の声が多かったです。

ーーそうでしたか。ユーモアがあって、満場一致でついた名前だと思っていました。

難航しました。でも実際、認知されるきっかけになり、今では浸透しています。それで認知してもらえると共に、多くのご要望が寄せられて、自分たちのキャパシティが溢れてました。このままでは支援できなくなってしまう、それなら「新しく建てて移転しようや!」って移転を決めました。

ーなるほど。建物の造りが施設のイメージを感じさせないのも、1つの現れなのでしょうか?

そうですね。どうしたら暖かい雰囲気や居心地の良さが出るのか、めちゃくちゃコンセプト考えました!悩みすぎてストレスになるくらい(笑)たくさんの人に「あれはどう?これはどう?ここ、どう思う?」って聞いて周ったり。

決めきれず、設計士さんに「早く決断してください!」と言われたこともありました。

それでも、よくある施設を建てたかったわけではなかったので、とことん突き詰めていきました。一から作るって大変でしたが、いい経験でしたね。周りの人にも支えてもらって、恵まれてるなと実感していました。

くろまめさん内装

くろまめさん風呂

(上:空間を意識したリビング、下:木の浴槽にこだわったお風呂)

家族や親戚のような関わり方をきっかけに


ーーwebサイトを拝見させていただきました。ホームにS子さんとの出会いが書かれていていました。”お世話する介護”からなぜ、本当の会話をしようと思われたのでしょうか?

僕がやりたいことを書いてしまうと、スローガンのようになり、義務感がでてしまうと感じたので、具体的なストーリーを載せることにしました。

初めてS子さんを見たのが、病院でのリハビリされている姿でした。平行棒の中でお尻を支えられながら、なんとか歩いている彼女がとても印象的でしたね。

ーーなるほど。出会いはまず病院からだったのですね。そこからくろまめさんをご利用に?

そうですね。楽に行える介護技術を知っていたので、心配されていた家族さんに「大丈夫ですよ」とお伝えしていました。

当初は、オムツ交換をするのが難しいくらい、立つのがやっとで。介助量が多いので、ご自宅でもオムツを使用されていました。オムツをずっと着けているのもあったのか、便秘傾向。お食事もあまり食べず、なんでか理由を聞いたら「排泄をしたくないから食べない」って。

どうしたものか悩んでいた中で、ある日の入浴介助の際にS子さんの本当の気持ちが聞けました。S子さんは「死にたい、死にたい」とおしゃられていて。なんでなのか尋ねたら、「娘夫婦に世話になって、今もこんなに世話になってばかりで」って胸の内を明かしてくれました。

僕、今はけっこうオッサンになりましたけど、昔は可愛い顔をしていたので、入浴介助の受け入れが良かったのもあって、あのとき話てくれたのかな?なんて(笑)

ーーS子さんの本音が聞けた瞬間だったんですね。ご自身から歩くようになったのでしょうか?

関係性をつくった中で、「ちょっとでも良いから、歩いて行ってみようよ」と誘って、初めは前と後ろの2人介助でトイレ誘導していました。介助量が多い人でも、なるべく”排泄が気持ちよく行える環境”で排泄をしたいと思うので。

これを繰り返していくと、介助ありながらも少しずつ歩けていきました。「これは2人介助じゃなくて済むのでは?」と、シルバーカー(歩きを補助する機器)を押してもらい、1人介助でトイレへ誘導して。

介助する量が減って様子を見ていたら、ある日一人でシルバーカーを押して歩けるようになっていました。本当に驚きましたね。

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(現在では、段差があるにもかかわらず、お釜の火番をしてくれるS子さん)

今考えると、本人の笑顔や生きる力が引き出されていたと思います。それは、おばあちゃんと孫のような関係であったり、日々のお料理、畑や味噌作りなど。よくある日々の生活を過ごしてました。

そこから、信頼関係が少しずつできて、S子さんの思い出の場所に行って当時の大変だったことや、その中でも楽しかった思い出、恋人の話などたくさん聞いていきました。そうやって、生きる力や笑顔を引き出せたと思います。

ーーなるほど。少しずつ”良い変化”がS子さんに起こっていたのですね。なぜこんなにも暖かく、心地の良い「かいご」が行えているのでしょう?

僕らがしているのは、専門的なことではなくて、日常を一緒に過ごしていることです。みんなでご飯作って食べたり、掃除したり、遊びに行ったり、ただただ生活を送ってるだけで。

”私は介護士だから”とか、そうではなくて、どんな関わりをしたいかを大切にしています。日常の中で「困ったときに手を貸してくれる存在」なだけであって。職業という肩書きに固執してないから自然体なのかもしれないですね。

ーー専門職として良いことをしたいということではなく、人として関わっていく中で、笑顔を引き出せるかということなんですね。

笑顔を引き出すというより、いかにその人の「ココロ」にアプローチできるかどうかだと思ってます。僕らは関わる時間が長いですし、その人の性格や生い立ちが見えてくるからこそ、反応があったときのキャッチが早いと思ってます。

何を大切にしているか、その人の性格も含めて、サービスの選択や接し方、伝え方が合っているかどうかが大事ですね。

ーーなるほど。「気付く、向き合う、付き合う」をされているからこそ、家族に近しい存在に。また、それが利用者様やご家族様の信頼に繋がっているんですね。

そうですね。何かするにしても、できることは精一杯させていただくという気持ちで関わらせていただいてます。そう考えると、覚悟に近いです。その分、日々勉強しています。

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(上:命に関わる大切な救命訓練中、下:楽々な入浴介助について勉強会)

ありのままの自分で関わるからこそ、見えてくる相手の気持ち


ーー喜んだり、怒ったり様々な感情を表出できる関係性が大切ということですね。そのような感情を引き出すのに、どのような工夫をされたのでしょうか?

工夫するというより、”ポイントを捉える”のが大切ですね。「資格者として」ではなく「ありのままの自分」で関わることなんじゃないかなと。資格はあくまで資格、貴方のうしろにあるもので、「根っこの部分は、自分自身。ひとりの人として接する」気持ちがポイントです。

ーー等身大の自分として一緒に過ごすのが大切なんですね。

僕がスタッフに伝えてるのは、「そんなに難しく考えなくていいよ。この場所に集まったみんなが、1日楽しく過ごせられたらいいから」ってシンプルに考えてもらっています。

他は友人と合って過ごしたり、美味しいご飯を食べたり。ゆっくり過ごしたりお風呂に入ったり。利用者さんだって、ひとりの人として生活しています。

そこは、僕たちが生活している過ごし方となんの変わりもありません。
あと僕は自分が話すより、人の話を聞く方が好きで。職場でもみんなに「どう思う?どう思う?」って聞いて周るんです。見え方や考え方は個人によりますし、新しい職員方へも積極的に聞いています。

地域の人たちに、笑えるけれどホッとできる発信をモットーに


ーーホームページを閲覧していて、農業をされている皆さんは、活き活きしているなと感じました。

僕の感覚として、労働ではなくて”働く”が生きていく上で、欠かせないと思ってます。何かを通して動くことで元気になる。それが、誰かのためになっていればより、やりがいがありますね!

また、それが原始的な「自然」とリンクしていると、老若男女共に元気になると思っています。田舎に引っ越す人もいれば、家庭菜園、農業体験される人も、自然を求めてるんじゃないかなって。

特に、京丹波町で過ごされてきたお年寄りの人たちは、昔から農業をやってましたから。今までやってきたことや得意なことをしてもらう、教えてもらうことで、みんながイキイキと過ごせる環境を作りたいなと思いましたね。

もっと地域やみんなに広がって、認識してもらいたいなと思ってSNS発信し始めました。あと純粋にくろまめさんを気にかけてくれている人たちに向けての発信も含めてます。

ーー地域の人たちと繋がる、ご家族様に伝えるために活用されているんですね。

はい。もちろん、家族さんに投稿の許可はいただいてます。たまに、「日々のデイサービスの様子をSNSにのせて大丈夫ですか?」っていう言葉をよくいただきます。

僕の感覚になりますが、”老いていくことになぜみんな、ネガティブに捉えてしまうんだろう”と疑問に思ってます。老いていくことに対して、一生ネガティブに捉え続けて過ごすのは、辛くないのかなって。であればそれも受け入れて、どうやって楽しく生きてくか、前向きに考えて、自分らしく過ごす方が楽しいと思うんですね。

ーー捉え方によって、どのように行動するかは変わってきますよね。ちなみにですが、SNSやコンテンツへの投稿に対して、好まれない方々はいましたか?


くろまめさんの雰囲気感を好まない方はいましたが、利用者さんの多くは喜ばれますね。観てくれてはる人が家族さんだったりすると尚更。そういった意味では、踏み込んだ関わり方をしているのかもしれません。

SNSに上げるときは、複数のスタッフに内容を確認してもらって、僕だけの判断になってないか、節度を心がけるようにしてます。

普段過ごしている内容が多いですが、ちょっと意識しているのは「クッ」って笑顔になる楽しさを感じるような内容を上げたりもしますね。僕たちがやりたいのは「集まったみんなが、1日楽しく過ごせること」ですから。

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(くろまめさんの利用者さんと買い物から帰ってきたときのツーショット)

笑顔の絶えない活気の溢れた地域づくり、新事業始動!


ーーこのコロナ感染の中ではありますが、これから新たに挑戦しようと考えていることはありますか?

少し前に始めたケアツーリズムを現状行えていないのと、再会しても限りが出てしまうと感じました。そこで、1つ新たに考えているのは介護教室です。

ーーそれは、ご家族様向けに、SNSや動画とかで発信されるのでしょうか?

これは一般の人、興味のある方に向けてですね。実際にきていただいて、介護技術を肌身で感じてもらったり。農業体験は継続して、その様子をインスタグラムに載せようか考え中です。

もう1つが、くろまめさんのみんなが育ててくれた野菜を使って、レストランをやろうと思ってます。利用料金が高かったり、畑仕事をしてくれてくろまめさんを支えてくれている利用者さんに還元したいですね。

どこまで還元できるかはわからないですが、くろまめさんの一員として働いてくれて、ありがとうって意味も含めて。

くろまめさん畑画像

(くろまめさんのみんなで、畑に植えた芋を収穫!)

ーーなるほど!やったことに対しての対価が得られるのは、より利用者さんの活力になりますし、ユニークな発想ですね。
そうですね。でも、打算的なところもありますよ(笑)利用者さんに還元できて、子供から大人まで、地域の人たちの拠りどころを作るためにはどうしたらいいのか?って。

最初はパン屋を検討してたんですけど、「くろまめさんで作った野菜を活かしたい。それやったらお店、野菜も使えるとしたらピザやな!」と結論に至りました。イタリアンで働いている幼馴染がいて、そのお店の店長に聞いて監修してもらっています。

ーーもう、計画が進んでいるんですね!

本当、凄いですよね。借金の方が!(笑)

ーー新事業、楽しみです!稲葉さんがこんなにも、介護に留まらず地域づくりを大切にされているのを感じました。最後になりますが、ひとことお願いします。

そうですね。今は医療や福祉、介護だけに関わらず、社会全体がコロナ禍で疲れている、ストレスを感じて生活されている人が多いなと思ってます。

最近特に思うのは、本当は看護とか介護、人と関わる仕事がしたいのにそれが業務に変わってしまって、ココロに元気が無くなってしまってる人が多いなと。

そこで、くろまめさんを見てもらうことで、元気を取り戻してもらっていただけるそんな発信をこれからも継続していきます。

実際、SNSで自分たちの日常を見ていただいて、「素敵なことをしていて、元気をもらいました」とか、「介護に対してもう一度向き合ってみます」と言ってくださる方々がいらっしゃってて。見てくれる人たちの背中を押せたり、心から元気になっていただく。くろまめさんがそのきっかけとなってくれたら嬉しいですね!


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