oyu-zawazawa

図書館司書/美術鑑賞が趣味。美術展レビューと絵本·児童書のレビューを載せていきます。

oyu-zawazawa

図書館司書/美術鑑賞が趣味。美術展レビューと絵本·児童書のレビューを載せていきます。

最近の記事

  • 固定された記事

my回顧展2022

観に行った展覧会一覧 1月 フィンランドデザイン フランソワ・ポンポン 松江泰治 マキエタCC 植田正治を変奏する 2月 民藝の100年 3月 ミロ展 4月 奇想のモード 上野リチ 5月 鏑木清方展 ヨシタケシンスケ展かもしれない 6月 特別展 宝石 大正ロマン×百段階段 7月 空箱職人はるきる展 動物の饗宴 東京国立博物館 文化展[常設展、150周年記念の無料公開] かこさとし展 津田青楓 図案と、時代と、 8月 板谷

    • 宇野亞喜良展

      まず量の多さに圧倒された。 “宇野さんの今までのお仕事を網羅する内容” という触れ込みはダテじゃない。 デザインの仕事で出発し(時としてコピーまでご自分で作られてたそう)、 イラストレーターとして ポスター、雑誌、書籍、絵本、舞台装飾、人形劇の人形… ありとあらゆるものに携わられていらっしゃるのに どのジャンルのものも結構な物量が展示されている。 しかも高校卒業後すぐに…というか 何なら在学中から活躍し始めていらっしゃり、 90歳の現在もバリバリに活躍されていてキャリアの長

      • 司書がおすすめの絵本・児童書をただ語る『いばらの髪のノラ』

        【あらすじ】 昔、人間と魔女は一緒に地上に住んでいたが、人間は火の神「神炉(じんろ)」を飼い始め魔女を追い払った。 魔女たちは地上を離れ、自分たちの住む土地を空中に浮かせ、雲で隠して人間から見つからないようにした。 ノラは空中に住む魔女だが魔法がうまく制御ができず、驚くと勝手に魔法が発動してしまう。 また母がノラを産んだ直後に亡くなったため、姉たちからやや疎まれている。 そのためノラは「ちゃんとした魔女になれば姉たちから認められる」という思いが強く、 “地上にある「黄金の心

        • デ·キリコ展

          10年ぶりの大回顧展とのこと。 10年前も行ったけど、その時には気づけなかったことがあった。 それは 形而上絵画を確立させた頃の空は、緑〜黄色のグラデーションだ ということ。 初めは空の明るさを示す黄色に青を重ねたゆえの緑だけど、 どんどんはっきり緑になっていってる。 後年の形而上絵画再構築時代になると青になる。 それから今回の解説で とにかくいろんなことを取り入れていた ということにも気づいた。 古典主義、ルノワールの描き方、シュルレアリスムやポップアートの考え方などなど

        • 固定された記事

        my回顧展2022

          ティファニー ワンダー

          行きたくて、楽しみで、たまらなかった。 眼福の嵐。 滞在時間3時間半!それでも足りなかった。足の捻挫が治りきっていればもう少し粘れたけど… 以下、展覧会の構成に沿って。 ●歴史を一通りなぞる ●デザイナーごとに見せる ●日本との関わり ●過去のショーウィンドウの再現 映画との関わり ●スポーツ·音楽との関わり ●ダイアモンドを使ったアクセサリー大集合 ダイアモンドエリアは質と量でこれでもかと殴られる感じ(笑) 好きですけどね。 すごかったのはデザイナーごとに

          ティファニー ワンダー

          司書がおすすめの絵本·児童書をただ語る

          『ボンジュール、トゥール』ハン・ユンソプ/著 影書房 2024年2月 【あらすじ】フランスに住む韓国人の少年ボンジュは、パリからトゥールへ引っ越してきた。 新しい家の自分の部屋には備え付けの古い机があり、その机に「愛するわが祖国、愛するわが家族、生き抜かなければ」とハングルで落書きがあるのを発見したボンジュは、そのただならぬ内容に、落書きをした人物を探し出そうとする。 一方、新しい学校の同じクラスにはトシという日本人がいた。 両親の友人・同僚の日本人には好感を持っているのに

          司書がおすすめの絵本·児童書をただ語る

          司書がただ最近読んだ絵本・児童書を語る

          『ダーウィンのドラゴン』リンゼイ・カルビン/作 小学館 2022年 【あらすじ】かのチャールズ・ダーウィンがビーグル号で航海をしていた頃、かたわらにはローティーンの助手がいた。 名前はシムズ・コビントン。 嵐の中、ボートから落ちそうになったダーウィンを助けようとしたシムズは、逆に自分が海に投げ出されてしまう。 運良く流れ着いた島で、シムズが目にしたのは… 【レビュー】ダーウィンが航海をしていた時代、雑用係として少年を船に乗せるのはよくあることだったらしい。 シムズ

          司書がただ最近読んだ絵本・児童書を語る

          木村伊兵衛 写真に生きる

          木村伊兵衛。 作品をまとめてきちんと観たことがないな、と思って この展覧会を楽しみにしていた。 2021年に出版された同名の書籍を元にした展覧会。 作家や画家のポートレートや歌舞伎の舞台写真を初めて観た。 スナップ写真のイメージが強かったけど ポートレートもとてもよかった。 里見弴と泉鏡花のツーショットでは 2人の顔ではなく火鉢にかざした手元にピントがあっている。 気兼ねなく火鉢を囲んで談笑できる2人の仲が強調されているのかな。 河原崎長十郎演じる弁慶の、気迫あふれる瞬間の

          木村伊兵衛 写真に生きる

          司書がただ好きな絵本・児童書を語る『あのころはフリードリヒがいた』

          【あらすじ】 第二次世界大戦下のドイツ。 隣同士に住むドイツ人の家族とユダヤ人の家族は、息子同士が同時期に産まれたことで 家族ぐるみで親しくなるが…。 【レビュー】 昨年、この本を読み返した。 児童書なのに主人公の名前は一切出てこない。 家族ぐるみの話なのにファミリーネームも出てこない。 それはすなわち、 「誰でもこのドイツ人一家のようになり得る」 ことの示唆だと思う。 実際、作者は ナチスの時代が終わるやいなや、 自責や後悔の念のもとにこの物語を書き始めたそうだ。 ド

          司書がただ好きな絵本・児童書を語る『あのころはフリードリヒがいた』

          椅子とめぐる20世紀のデザイン

          籐を使ったり曲木の技術を進歩させたり 天然素材の限界にある意味縛られていた椅子のデザインにおいて、 金属のパイプの使用、というのは革命だったらしい。 言われれば「なるほど」。 戦時下で負傷兵の骨折の添え木から合板を曲げる技術が発展した、とか 飛行機のシートを作っていたところからヒントを得た、とか デザインの考え方が、政権の戦争への考え方と直結していた、とか そういうキャプチャーを見て、 “素材も技術もデザインも、 社会と密接に関わっている”という 当たり前のことを再認識させ

          椅子とめぐる20世紀のデザイン

          本阿弥光悦の大宇宙

          ただ作品を紹介するだけでなく 例えば 今回の目玉の1つでもある『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』なら “こういうモノができた背景にある当時の流行”とか、 彼の作り出すものがブームになったことで誕生した 数々の“光悦風”なものも紹介しているのが、 この展覧会の特徴。 つまり光悦の生きていた時代のカルチャー全体も見えてくる。 衝撃だったのは『桜山吹図屏風』。 簡略化された色面で現されているのは 丘なのか水面なのか雲なのか… もはや抽象画の域。 そこにゴテゴテに塗り重ねた桜や山吹の花と

          本阿弥光悦の大宇宙

          蜷川実花展

          圧巻だったのは花まみれゾーン。 あの空間を作り上げた労力を考えると、くらくらする。 天井までスクリーン張りの部屋で 寝っ転がって映像作品を観れるのはおもしろかった。 自分が、アートアクアリウムの中の金魚になった気分。 空間を楽しむ展覧会。 行く前は色に圧倒されるかと思ってたけど、そんなことはなかった。 誰もが楽しめる。 ここに来れば、誰もが蜷川実花的な写真が撮れるのは間違いない。 そんな敷居の低さから彼女の表現する世界に思いを馳せる。 花·金魚·街·水の揺らめき それら

          蜷川実花展

          マリー・ローランサン−時代を映す眼

          ローランサンの描く椿姫が可愛かった! 椿姫だけで1つの部屋になっていたのだけど、 あまりの可愛さに、その部屋で1人悶絶。 水彩なのがまた良い。 今回、これを観れただけでよかったと思えた。 今回は同時代にパリで活躍していた画家の絵も並列して飾られている。 同時代の画家たちから影響は受けつつ、あまり交流を持たなかったというローランサン。 女性が独立した芸術家としてやっていくのが困難だったこの時代に、 独自のスタイルを黙々と突き進んだということになる。 優しいふわふわした画

          マリー・ローランサン−時代を映す眼

          坂本龍一トリビュート展

          やると知ったときから「行く」と決めていたアート展。 (展覧会でも展示会でもないのでアート展と言ってみる) 坂本さんのやっていらっしゃることは難しすぎて、 私にはたぶん半分も理解ができていない。 だから、それを他者が再構築(=トリビュート)、なんてされると もうほぼ理解不能。 でも、ライゾマくらいキャッチーにしてもらえたらわかる。 他のかたの映像作品も、 細かいことはわからなかったけど、音や映像に包まれているだけで 心地よく、“無”でいられた。 坂本さんの演奏の映像作品を

          坂本龍一トリビュート展

          吉田博 木版画の100年 おまけ

          吉田博の絵のような色で暮れていく熱海の街。 色んな風景画が出ているこの展覧会。 「ここに行った時はこうだったね」と、 絵を元に思い出話をしているかたの姿が多く見られたのが印象的だった。 そうか、思い出に寄り添うというも風景画の重要な側面なんだなぁ。

          吉田博 木版画の100年 おまけ

          吉田博 木版画の100年

          これを観るために、ぶらり熱海へ。 グランド・キャニオンの木版画と油彩画の比較。 同じ版木を使った、昼と夜の摺り分け。 版木やスケッチの展示。 インド·東南アジアシリーズもたっぷり展示。 現在の風景の写真との比較、なんてものもあった。 そしてなにより、『瀬戸内海 帆船』の全ての時間帯の展示。 確かに、2017年に観たSOMPO美術館での生誕140年展に比べると 木版画だけなので、ボリュームは比較にならない。でも、様々なシリーズが潤沢に揃っているのと、版木やスケッチ

          吉田博 木版画の100年