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題名読書感想文:25 とにかく語感だけで選んでみた

 本の題名だけでも感想文が書けるんじゃないだろうか。そんな無謀極まる挑戦が題名読書感想文でございます。

 今回のテーマは「語感」です。もう細かいことは抜きにして、読んで楽しい、見て楽しい、そんな題名を選んでみました。

 まずは「ポチョムキン都市」です。

 ポチョムキンの名が世に広まったきっかけはロシアの軍人、グリゴリー・ポチョムキンでございまして、ロシア皇帝エカチェリーナ2世の愛人だったと言われています。

 ポチョムキン自体はロシアでそれなりにある名前らしく、ロシア語版ウィキペディアの「ポチョムキン(曖昧さ回避)」の項目には結構な数の名前が並んでいます。グレゴリーが有名になったことで、ポチョムキンの知名度がグッと上がったのだと思われます。

 しかし、皆さんもポチョムキンの名を読んでお分かりの通り、日本語圏の人にはどうも軽い感じに聞こえるんです。人の名前にして大丈夫なのかと心配になるくらい軽い。有り体に言えば変な風に聞こえるわけです。だからなのか、漫画で一発ギャグみたいな使われ方をしているのを見たことがあります。

 特定の国では普通に聞こえる名前でも違う国では変に聞こえること自体は珍しくなく、ポチョムキンもそのひとつだと思われます。

 ちなみに、ポチョムキンになぜ都市がついているかと申しますと、もともとは「ポチョムキン村」という言葉があるそうなんです。ポチョムキンはクリミアの開発を担当していたが、まだ荒れ地にもかかわらずエカチェリーナ2世が視察へやってくることになった。こりゃマズいと思ったポチョムキンは、ハリボテの家を作りまくって「こんなに発展させました」と誤魔化した。この伝説から、よろしくないものを隠すために作られた見せかけのものを「ポチョムキン村」と呼ぶようになったそうなんです。上記書籍の題名は、その都市版というわけですね。

 続いては「ブリコラージュの伝言」です。

 「ブリコラージュ」とはもともとフランス語で「繕う」「誤魔化す」を意味する言葉に由来しておりまして、それが転じて「寄せ集めて自分で作る」「ものを自分で修繕する」などの意味で用いられるようになったようです。

 しかし、私にはなぜか「ブタゴリラ」の文字が見え隠れするんです。「ブタゴリラージュ」と書かれているようにさえ見える時がある。

 ブタゴリラとは藤子・F・不二雄の作品「キテレツ大百科」に登場する、いわゆるジャイアンポジションの人物です。

 本名は熊田薫なんですが、女性のような名前にコンプレックスがあるため、自分のことを「ブタゴリラ」と呼ばせている設定となっています。

 ブタゴリラを知らずとも、ブリコラージュは聞き慣れないとなんかブリのコラージュに見えてしまいそうですね。そう言えば、先ほどの「ポチョムキン村」はポチョムキンがブリコラージュした誤魔化した結果とも言えます。

 続いては「ペロブスカイト太陽電池」です。

 ペロブスカイト太陽電池は次世代の太陽電池として期待されているわけなんですが、聞き慣れないと何かをペロペロしているような名前にも聞こえます。

 ペロブスカイトとは灰チタン石とも呼ばれ、発見者であるロシアの鉱物学者、ペロフスキーの名前から来ています。ポチョムキンに引き続き、ふたり目のロシア人でございます。

 ペロブスカイト太陽電池は軽くて柔軟、低コストで大量生産が見込める上、主な材料が日本でよく取れるヨウ素のため、かなり注目されております。ただ、酸素や水の影響を受けやすく、まだまだ安定して発電できないという欠点も指摘されています。

 今でこそ妙に聞こえるペロブスカイトですが、これから世間に広がって行き、皆さんの耳に馴染んでくれば、いろんなところでペロブスカイトペロブスカイト言われる時代がやってくるのかもしれません。

 続いては「にょろり旅・ザ・ファイナル」です。

 いきなりファイナルですが、シリーズの中でこの題名が一番意味が分からなかったので選んでみました。ちなみに、最初に出版されたのが「アフリカにょろり旅」。

 その次に出版されたのが「うなドン 南の楽園にょろり旅」です。

 そしてファイナルと、3部作になっています。「うなドン」から推測できますように、「にょろり」しているのはウナギでございます。題名こそあれですが、著者はウナギの研究者というウナギガチ勢でございまして、世界のあちらこちらでウナギを追い求めていたようです。

 続いては「うふあがりじま入門」です。

 一瞬、何の入門書なのかよく分からない、実に魅力的な題名です。「うふあがりじま」とは沖縄の北大東島を指す言葉でございまして、「沖縄本島からはるか東にある島」という意味のようです。

 「うふ」の辺りがいかにも微笑みを連想させます。それもまた「うふあがりじま」という名前が長く言い伝えられてきた理由かもしれません。

 最後は「マンボ 日本のカナート」です。

 「マンボはきっとマイナーだろうから」と「日本のカナート」との副題を付けたのだと思われます。つまり、カナートを知らない人にとってはお手上げの題名でもあります。

 カナートとはイランの乾燥地帯に存在する地下水路です。

 似たような構造物は世界各地で作られていることが知られておりまして、日本でも江戸時代中期から作られていたようです。特に三重県で多く見られるようです。それをマンボと呼ぶようなんです。

 ラテン音楽にもマンボと呼ばれるジャンルがあり、現代日本ではむしろそちらのほうがメジャーなためか、「日本のカナート」も何だか陽気な感じに聞こえてきます。

 もしくは卵を3億生むとか生まないとか言われている魚ですね。


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