スタジアムまで歩こう。~徒歩30分は近いか、遠いか。迷子常習犯が脳内に広げる地図の縮尺~
この記事は恋する主婦サポーター、むぎちゃさんこと、さとうかずみさん(twitter)に寄稿して頂きました。詩文のような独特なリズムで展開される、「必ず迷子になるけど必ず辿り着く女」ことかずみさんの文章を是非お読み下さい。
OWL's Forestのメンバーによる寄稿ということで無料公開させて頂いております。
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皆さんの「近い」は距離としてどれくらいだろう。
何分までが「近い」感覚なんだろう。
先日、また新しく誕生したスタジアムへ出向いた。「シティフットボールステーション」。アクセス案内には最寄り駅から「徒歩30分」 とある。
Googleマップで最寄り駅から目的地までルートを検索。
「左にずーっと行って右に曲がってまたずーーっと行って右にずーーっと行くだけだな。よし近い!!」
直感。
そして、徒歩決定。
まあ、大体、シャトルバス等がない、となれば歩くことを選択するんだけど、ね。初めての場所ともなると、余計にね。その町ごと見たい。楽しみたい。感じたい。
徒歩30分は私には 無条件に近い(一般的に徒歩30分は2.5kmくらいだろうか?)。
サッカー現地観戦型の友人のなかには、一般的に見たら かなり「麻痺」したツワモノが少なくない。2時間までなら徒歩圏内、なんてのもいる。
「近い」「遠い」はもちろん個人の感覚、感じ方 なのだが……。
都会の1km
田舎の1km
雨の日の1km
晴れた日の1km
寒い日の1km
気持ち陽気、散歩日和の1km
試合前のワクワクな1km
負けたあとの1km
勝ったあとの1km
どれも違う1km。同じ1km なのにね。
私は、なぜか迷子になる。
自信満々にナビ見ながら歩き出すのに迷子になる。自分でも不思議でならない。最近は自覚し、「趣味:迷子」「特技:迷子」と公言している。開きなおり。文句あっか。
東西南北わからない。
距離感もない。
「改札出て西に150mのとこ右ね」がわからないのだ。
(どの改札ですか… 西ってどっちですか… 150mってどれくらい?…どっちに向かって右ですか…)
度胸の良さが裏目に出て、野生の勘で歩き出すと大抵あさっての方向。毎回博打になる。二つに一つの確率なのに大抵当たらない。
ひとに笑われる。
「そもそも、道を歩くのに博打は打たない。当たる、ハズレるって表現しない」
で、諦める。こりゃ、迷子だなと、助けを求めると、ひとは必ず聞く。
「今、どこ!?」
コラ。待て、待て。
どこに居るかわかりゃ苦労しない。
どこに居るかわかんないから迷子なんじゃないか。
助けびとは続ける。
「じゃあ、何がみえる?」
「コンビニ」と素直に答えると、
「はあ?コンビニなんてどこにでもあるよ!どこのコンビニ??」
本当に私を救出する気があるのかと疑い始める。
だから、どこのコンビニかわかるくらいなら苦労せんのだよ。
こっちは大真面目。漫才をしているわけではないのだ。
皆、迷子の扱いに不馴れで困る。
最近気付いたのは、場所への道順話などの話をしているとき、頭のなかに広げる地図の大きさがひととは違うのでは?ということ。
私は栃木県民には珍しく車を保有していていない。車に乗らない。通勤は自転車。幸い生活も自転車で事足りる街にすんでいる。
なので。
頭もなかに広げる地図もせいぜい目一杯広げてもママチャリ範囲レベル。なのだ。
そして、地図は大好きなくせに、地図が読めない。小学3、4年生頃の私は何を教わっていたのか。東西南北なんて知らなくても生きていけると思っていた。
体感、感覚としての距離感がわからない。
1mはわかる。50mはもうわからない。1Km…?
西に300Km。もう、わかるわけないじゃん。
きっと普段から車に乗ったりするひとは、もっと大きな大きな地図が頭になかに正確な向きで広がっているのだろう。
私は、迷子になるべくしてなる人間なんだな。納得。
皆、もっと迷子に寛容であれ。迷子はある種、特殊能力だ。迷子に幸あれ。
迷子になるやつほど、意気揚々歩きたがるのだ。旅を、地域を、楽しみたがるのだ。
いや、迷子になるからこそ、旅の楽しみを知っているのかも知れない。
迷子になり道を行き交うひとに、地元のお店に、声をかける。道を訪ねる。
大抵、おばちゃん、おじちゃんが店番をしているとこなどは、ユニフォーム姿に「おお。どこから来なさった?」と快く迎えてくれる。親切に道を教えてくれる。
お礼にと、ひとつ、お土産になりそうなものを購入する。なんて小さな交流が生まれたりしている。
迷子の特権よね。歩くことの恩恵よね。
迷子のススメ。
これはまた、別の機会にお話させていただこうかしら。
徒歩30分は近いのか。遠いのか。その目的地付近の30分に何があるのか。どんなドラマが見つけられるか。
これからも、私は歩く。どこかのスタジアム付近を。
これからも、私は迷子になる。だろう。
もし見つけたら……。
遠慮なく、保護して、スタジアムまで誘導してください。
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