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OWL magazine 旅とサッカーを紡ぐWeb雑誌

サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポーターは紛れもなく「主役」です。OWL m… もっと読む
スポーツと旅を通じて人の繋がりが生まれ、人の繋がりによって、新たな旅が生まれていきます。旅を消費す… もっと詳しく
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#宇都宮徹壱WM

【世界杯紀行】「自分たちのサッカー」が通用せず、王国のプライドは打ち砕かれ、やたらと消耗した大会<2014年@ブラジル>

「日本代表のワールドカップの目標は何か?」  そう問われたら、多くのサッカーファンは「ベスト8」と答えることだろう。2002年の日韓大会、10年の南アフリカ大会、そして18年のロシア大会でベスト16を達成している日本。とりわけ4年前のラウンド16では、ベルギー相手にあと一歩というところでベスト8に到達できず、開催地の名を冠して「ロストフの14秒」と呼ばれている。  もっとも、日本の目標が「ベスト8」に落ち着いたのは、わりと最近の話である。2010年大会では、当時の岡田武史

【世界杯紀行】ブブゼラの音が騒がしく、治安の悪さに怯えながらも、大いに楽しめた大会<2010年@南アフリカ>

「今年はワールドカップイヤーなのに」──。  最近、このフレーズを目にする機会が多くはないだろうか? 先日のEAFF E-1では、日本代表戦の入場者数が同時期に行われたPSG(パリ・サンジェルマン)のジャパン・ツアーでのそれをはるかに下回った。確かに、両者を単純比較するのは、いささかナンセンスではある。が、ワールドカップイヤーなのに、この熱量の低さは、確かに気になるところではある。  過去のワールドカップの旅を、このOWL magazineにて大会ごとに紹介するシリーズ「

【世界杯紀行】中田英寿が引退し、ジダンが頭突きし、イタリアが優勝したけれども、何も変わらなかった<2006年@ドイツ>

Facebookを開くと、こういう表示をよく目にする。先月から今月にかけては、過去のワールドカップ取材の画像が、たびたび登場した。4年前のロシア大会、8年前のブラジル大会、12年前の南アフリカ大会──。16年前のドイツ大会は、まだFacebookもスマートフォンもなかった。  今年は4年に一度のワールドカップイヤー。けれども4年前や8年前と比べると、どうにも盛り上がりに欠けているように感じられるのは、決して私だけではないだろう。モリヤスさんのせい? いやいや。ゼロではないと

【新・蹴日本紀行】代表ウィークでのささやかな旅の思い出<札幌〜東京〜関西>

 やっと終わった──。何が終わったかといえば、書斎の掃除。そして留守中の郵便物と取材中の領収書の整理である。  6月2日から14日にかけて、日本代表の4試合を取材してきた。すなわち、2日のパラグアイ戦@札幌、6日のブラジル戦@国立、10日のガーナ戦@神戸、そして14日のチュニジア戦@吹田である。本大会を想定した、中3日での4連戦。久々に地上波での中継もあったので、ご覧になった方も多いことだろう。  試合内容については別媒体でのコラムに譲るとして、本稿はOWL magazi

【新・蹴日本紀行】おんせん県でのフットボール旅と2002年の記憶<別府〜日田篇>

 今週は「旅への回帰」を宣言しているOWL magazineに敬意を表し、連載中の「ライターなるには日記」をお休みして、GW中に訪れた大分県の旅について綴ることにしたい。題して『新・蹴日本紀行』。そのオリジナルは、こちら。  このGW中、本書と一緒にフットボール観戦をされていた方もいらっしゃったようだ。ありがたい話である。まだご覧になっていない方は、Vtuberの冬原そのさんによる素晴らしい動画レビューをご覧いただきたい。  さて、今回の大分の旅は、2つの目的があった。ま

【新・蹴日本紀行】おんせん県でのフットボール旅と2002年の記憶<大分〜別府篇>

 3年ぶりに行動制限なしとなった今年のGW、皆さんはどう過ごされただろうか? 私は取材のため、久々に大分県を巡っていた。今年は2002年のワールドカップ日韓大会開催から20年。あの大会が開催地やキャンプ地となった地域に、どのようなレガシーを残したのかを取材する旅である。  OWL magazineが「旅への回帰」を宣言しているのに合わせて、私のほうも今月は「ライターなるには日記」をお休みして、久々に旅の物語を綴ることにしたい。題して『新・蹴日本紀行』。そのオリジナルは、こち

初連載を後押ししたネット黎明期とサッカーブーム〜ライターなるには日記【第9回】<裏>

 今回のテーマは「ライターが連載を持つことの意味」について。私が初めて連載を持たせていただいたのは、フリーランスとしてのキャリアをスタートさせて2年近くになろうとしていた、1998年11月のことである。すでにこの年に『幻のサッカー王国』(勁草書房)でブックライターデビューを果たしていたとはいえ、当時の私はまったく無名の書き手でしかなかった。  そんな当時の私に、連載の機会を与えてくれたのが、NECクリエイティブ(当時)が編集・制作を担当するインターネットサイト「サッカークリ

初連載を後押ししたネット黎明期とサッカーブーム〜ライターなるには日記【第9回】<表>

 4月4日、サッカー本大賞2022の受賞作が発表された。各賞の発表と全作品の選評はこちら。  エントリー作品の著者や翻訳者は、事前にテキストもしくは動画でメッセージを送ることになっていた。今回は徹壱堂の宣伝も兼ねて、1分ほどの動画を作ったので、ご興味ある方はご覧いただきたい。  残念ながら大賞は逃したものの《気軽に旅に出られない時代だからこそ、未知の場所に思いを馳せるこんな本が必要なのだと思う》という幅允孝さんの評価のとおり、アウェイ旅に持っていくと楽しい一冊だと自負して

ブックライターとデザイナーの理想的な関係性とは?〜ライターなるには日記【第8回】<裏>

 先日(録画ではあるが)久々に民放のバラエティ番組を視聴した。3月14日の夜にテレビ朝日でOAされた『激レアさんを連れてきた。』に、松本光平選手が出演していたからだ。  SNS上での「神回」という評価も納得できる内容。おかげさまで私が構成を担当した『前だけを見る力』の売り上げにも(わずかながらではあるが)貢献することとなった。「オワコン」扱いされて久しいTVだが、まだまだ根強い力を持っていることを、あらためて実感した次第だ。 『前だけを見る力』のカバーデザインは、版元であ

ブックライターとデザイナーの理想的な関係性とは?〜ライターなるには日記【第8回】<表>

 今年の「サッカー本大賞」の読者投票が、3月10日で終了した。優秀作品に選ばれたのは12作。選手ものあり、旅ものあり、歴史ものあり、ハードなジャーナリズムあり。活字離れと言われて久しい昨今だが、2021年は思いのほか、サッカー本の佳作が揃い踏みした年であったと言えよう。  こうしてエントリー作品を並べてみると、書籍の内容だけでなく、カバーデザインのバリエーションを見比べてみるのも楽しい。手にとってもらえるチャンスを増やすという意味で、やはり書籍は「見た目」が大事だ。  今

あなたにとって、どちらが大事?「賞を獲ること」と「本が売れること」〜ライターなるには日記【第7回】<裏>

 今年も「サッカー本大賞」の季節がやってきた。素晴らしい作品が並ぶ中、昨年夏に上梓した拙著『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』、そしてOWL magazine編『”サッカー旅”を食べ尽くせ! すたすたぐるぐる 埼玉編』もノミネートされている。  こちらをご覧いただければわかるが、今回は例年以上に力作揃い。『すたすたぐるぐる』は読者賞を獲得できそうだが、私の『蹴日本紀行』は各賞を受賞するのは難しそう。15年にわたる国内取材の総決算としての自負はあるが、それを上回

あなたにとって、どちらが大事?「賞を獲ること」と「本が売れること」〜ライターなるには日記【第7回】<表>

 私が構成を担当した、松本光平著『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一に挑む理由』が発売されて3週間が過ぎた。さすがに10冊以上も書籍を世に送り出していると、完成した書籍をしみじみ手に取ることはない(少なくとも私の場合は)。私がそこで考えるのは「売らねば」──。それだけである。  現代のブックライターに求められる条件のひとつ、それが「売る力」なのだと思う。私の経験で言えば、書籍の販売にも時間と労力を割いてくれる編集者は、ここ20年でめっきり減った。理由はいくつか考えら

ブックライターは《展開》《突破》《シュート》を繰り返す〜ライターなるには日記【第6回】<裏>

 今週の火曜日、マンションの宅配ボックスに荷物が入っていた。確認すると、小ぶりのダンボール箱がひとつ。私が「構成」で関わった、1月27日発売の『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一に挑む理由』の見本である。  5冊の見本と共に、版元の編集者からのメッセージが目を引く。《厳しいスケジュールのなかでの制作となってしまいましたが、丁寧にご対応いただき、感謝申し上げます。》という一文が、ジンと胸を打つ。  思えば去年の年末から今年の年始にかけて、ほぼすべての予定をキャンセル

ブックライターは《展開》《突破》《シュート》を繰り返す〜ライターなるには日記【第6回】<表>

 2022年になった。早いもので、OWL magazineで月2回の連載をさせていただくようになって、今年で3年目。昨年から始まった「ライターなるには日記」も、無事に新たな1年を迎えることとなった。本年も引き続き、よろしくお願い申し上げます!  さて、この年末年始、皆さんはどのようにお過ごしだっただろうか? 私はといえば(前回も書いたが)年末年始は新しい書籍の準備に追われいていた。クリスマスらしいことも、正月らしいことも、ほぼ皆無。食事と睡眠以外、ほとんどの時間を原稿に向か