記事一覧
【散文詩】会いたくない人々に
被害妄想と強迫観念が薄っすら積もる
冷えきった部屋に軋む塒
曝け出した月のように
淡く煌く命が耐える喫水線
天国も地獄も着地点ではなかった
定住は強者の妄想だ痛感して
【散文詩】長き碧い影
夕陽の横顔に碧い影
重なり濃くなる蜜柑色
逆さに照らす黒き影に
異名の真贋溌溂と
激流の岩窟を踏む
叩きつける松明
燦々と散る飛火栄える
吝嗇の地平に
散財と蕩尽の浅薄さ
直交する目力で圧す気迫
心の優しさの維持に如く
【散文詩】君の瞳のリップルに
別れ際に
さよならのリップル
かさなるバタフライ
離れるふたりが結ぶ茜色
明日の朝
新しい空気に
おはようがやってくる
遠い気持ちが
くり返されるのに
交差する螺旋階段
合図はふたりでリップル
【散文詩】湿度零パーセントの逆夢
掠れた頬に五月の緑色の汗が墜ちる
赤く色づく整数に挟まれた黒い整数が裏がえる
アスファルトに干乾びた両棲類の天麩羅が黒塩の皿
愛も絆も後ろ手に兇器を潜める
見過ごされる薄色の痣を隠すように角度をつける
丸ごと愛しく包み込む絡みつく表層の皮膚の接触は月蝕に飛び出す骨
甘美な唯物論に現実界が命の灼熱
行為主体を越える構造的暴力は止揚を拒絶する
不貞腐れた幸福は偽善に充ちる水銀灯下に佇む
【散文詩】好きではなくても
好きですといった。好きではないといわれた。
次の日も手を繋いで家路を歩いた。
二ヶ月後に好きだといった。好きですといわれた。
反復を反復して、手を離し、さようならと。
さようならといわれた。
好きではなくて怖かったのだ。本当は。
【散文詩】敵はいますか
単刀直入な憎悪で刺す
言質の取り合いは
身柄を攫って埋めればいい
瞬間に気化する衝撃と
簀巻きの海底で喰われるか
思い通りにさせないことが肝要
誰かを褒めると背後から刺突
夜襲にそぐわない態度表明
潮の干満に砂浜の首が頬にかかる
命乞いをする相手も去り
闇夜の波音に混入する呼気
【散文詩】赤色の霧雨
雨降りにまた逢えるかな
似合わない心模様
赤いパラソル
くるくると
名前も知らない
揺れ動く心の居場所に
スキップは虹色
水たまり避けて
まっすぐな瞳に
揃えた前髪が揺れて
いきをのむ
どうすればせいかい
なにがまちがい
本気で死にたくなるほどに抱きしめたとしても
夢のなかの亡霊
【散文詩】空飛ぶ好奇心
団栗眼で見入る先には大きな空が広がって、ぼくの手元を飛び去るのは夢を掴むために地を蹴り翼を羽ばたき上昇気流に乗るだろう。
小さな身体の密度は可能性の塊でどこにでも行ける。
だから、いっしょに飛べる。
人生の主役を降板しても苦にならない「人」がいなかったのに二人目が君だった。
河川敷で空を駆ける飛行機雲を指差し振り向く君を肩車して帰り道。
橙色の西の空に「空斗」の顔が染まって迎えに駅によって三人
雨はいまだやまず濡れる
枯れ葉を踏む音でわかるほど何もかもわかっていたのは独り善がりの自己愛だった。
どんなに抱きしめても心まで掴めないこと。
終わったのは愛でも恋でもなく生命の鼓動。
人生の選択肢はないんだと、思い通りに喜怒哀楽をみせるのが思いやりだと勘違いしていたと今更の後悔。
立ち上がるのは誰のため。
負い目は弱さか、謙虚さか、それとも思い上がり。
苦しまなくてもいいことに打ちのめされては傷が増えて、愛さ