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机の上にある小さな「地面」が人生をこんなに幸せにしてくれるとは。

私のお気に入りの机の上には、小さな「地面」がある。数年前に直島の美術館で購入したものの、大切にしまいすぎてずっと使ってなかった「それ」を、私はようやく日常に使い始めることにした。

小石がぎっしり敷き詰められたモルタル素材のコースターは、まるで切り取られた「地面」みたいだ。カップを置くと、ざらりとした質感がある。周囲はよく磨かれていて、素材の固さに対して優しい手触りになっている。

つくった人は、使う人が傷つくことのないように、周囲を丁寧に削ったんだろう。どこを撫でても尖りを感じない。裏側には厚手のスポンジが貼られていて、机に置いた時にタン、という丸い音がする。モルタルと机の間に収まったスポンジが、両者がお互いに傷つかないように、適切な距離を置けるように気遣っている。まるで細かなことに気がつくよくできた友人のようだ。

ずっと、自分のカップにコースターなんて使っていなかった。ホットコーヒーにコースターなんていらないし、冷たい飲み物を飲んだ後に残る水は拭き取ればいい。コースターは、生活に必ずしも必要なものじゃない。

だけど、このコースターに、お気に入りのカップを置いて、実際に飲み物を飲んでみて気づいた。

「このコースターは手触りを通じて日常の豊かさを伝えてくれる」

小石の敷き詰められたコースターは、紙やコルクのコースターよりも、情報量が多いのだ。手で触ると、ひやりとした感触にざらざらとした質感が指先に伝わってくる。それが、日々、創作を続ける私の脳には、とても心地よい刺激となるのだ。

人間の脳は1秒間に1億個の刺激を受け取ってるけど、そのほとんどは捨てられていって、自分の脳には残らない。自動的に捨てられていく刺激のわずかでも、自分の脳で逃さずに感じ取ることができたら、世界がもっと豊かなことに気づけるかもしれない。その入口にこのコースターがある。

机の上に現れた小さな地面。その存在の心地よい違和感が、いつも私の創作を支えてくれる。

Pull Push Products.のCEMENT COASTER /南国石。


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