櫻のこと

櫻は、もう15年ほども前にまだプロとして文章を書き始める前に書いた作品です。
それをそのまま出せるとは自分でも根性が座ってると思いますが、素人の時には知らなかったいくつかのルールなどについて修正した以外はほとんど加筆修正しておりません。
それでも自分で読めてしまうので、物書きとしての進化はあまりしてないのかもしれませんねえ。
困ったものです。

桜の木の逸話、いくつもありますね。
桜の木の下には死体が埋まっている。
桜の木には怨霊が棲む。
あの儚げで美しい花は日本の国の花でもありますが、月明かりに浮かぶ桜の木の幽玄の美は、筆舌に尽くしがたいものがあります。
魂ごと吸い取られそうな美しさ。
花は普通太陽に向かって咲くものであるのに桜は下を向いて咲いています。
それがまた、桜に抱かれているような、そのままどこか遠い地へ招かれるような錯覚を起こすのです。
その、桜のイメージと逸話からイメージしたのがこの短編集でした。
元の作品はとってもえろいR18作品です。ただ、男性に向けたとか女性に向けたとか意識して書いてないので、女性読者も当時から結構いてくださいました。(R18版は実は探せばどっかで売ってます。声はついてませんが)

桜の木には、美しい女性が似合います。
それが怨霊となれば、なおのこと。
櫻は、私の中で古典的な日本の女性霊として誕生しました。
長く黒い艶髪。
白い肌。
美しくも儚い女性が怨霊になるのは、日本古来から愛のためと決まっております。(一部の例外を除き)
櫻もそうして、愛した男を殺めずにはいられない存在として誕生したのです。
ちょっと惚れっぽいのが玉に瑕、でしょうかね。

櫻を演じていただいている榊原智美さんは、初めからこの方だと決めていました。
別のユニットの企画で怪談を読んでいただいたのですが、その時に惚れこんだのです。
らんどを作るか作らないかの時、櫻の朗読劇の話が持ち上がった時に、「櫻は榊原さんで」と頼み込みまして。
それくらい、惚れこんだ櫻です。
もう、聞いてくださいましたか?
まだですか?
これからですか?
ぜひ聞いて、あなたも櫻に囚われてください。
第一章ではナレーションと殺され役(この言い方もどうか)がどこぞのハムスターとマネージャーという組み合わせになっておりますが、これもまた違った面を聞くことができてとても新鮮ではないかなあと思います。ことに、佐藤さんの安定したナレーションは途中の心情描写などのさじ加減も絶妙で世界にどんどん引き込んでくれます。

便宜上、朗読劇とは言ってますが私は朗読劇を詳しくは知りません。
ただこの作品の世界に、皆様も溶け合っていただけたらと思うのです。
そのために、声優さんの力をお借りしました。
この櫻、番外の掌編も含めて6章までございます。
どうぞ、ごゆるりとお楽しみください。

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