見出し画像

【大月書店通信】第180号(2024/1/31)

「大月書店通信」第180号をお届けします。

今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」で、注目が集まる、紫式部と藤原道長ら平安朝の人々。
道長といえば、「この世をば わが世とぞ思ふ」とうたった傲慢な権力者。しかし、史料の再解釈によって、そのイメージが大きく変わりつつあるのです。教科書が書き換えられる可能性もあります。
今月の新刊『深化する歴史学――史資料からよみとく新たな歴史像』は、古代から現代まで、歴史研究が進展していくなかで見えてきた新しい知見を、「史資料」に注目し、わかりやすく解説した本です。
史料は「文字・文献」、資料は土偶や絵画などの「モノ」をさしますが、歴史研究を進め・深めていくためには、史資料が保存・管理され、それにアクセスできることが大前提です。本書では、AIやインターネットによって利用しやすくなった史料の現在や、他方で公文書(近年、改ざん問題も発覚)の管理・公開の課題などもトピックとして扱っています。
新発見されたり、これまで注目されてこなかった史資料に光をあて、従来使われてきた史資料の新解釈によって示される新たな歴史は、とてもおもしろく、刺激的です。
ドラマのなかで、道長がどのように描かれていくのか、も楽しみなところです。

◆ 歴史科学協議会[編]『深化する歴史学――史資料からよみとく新たな歴史像』


【新刊案内】『深化する歴史学』ほか1月の新刊6点

1月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。(定価はすべて税込)

●ようこそ 歴史探究の世界へ!
……………………………………………………………………………………………
深化する歴史学――史資料からよみとく新たな歴史像
歴史科学協議会[編]3,300円
……………………………………………………………………………………………
新しく発見された史資料や、異なる読み方が示されるようになった史料などに着目し、新たな歴史像を示す39のトピック、またAIを利用した文字読解など史資料をめぐる現状を解説した7つのコラムを配置。深化しつづける歴史研究の現在を示す。

●子どもの実態から始める実践を交流しあう
……………………………………………………………………………………………
日本の民主教育2023
みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい―教育研究全国集会2023実行委員会[編著]3,080円
……………………………………………………………………………………………
教育のつどい2023は東京で完全対面で開催された。子どもの実態から始める実践やICTを活用した授業づくり、ジェンダーや包括的性教育に関する多彩なとりくみ、ウクライナ問題での学びなど、充実した3日間の報告集。

●味つけの濃いものばかり食べていると…?
……………………………………………………………………………………………
たべものの中にいるよ!3――しょっぱい塩にご用心!
パク・ウノ[文]チョ・スンヨン[絵]3,300円
……………………………………………………………………………………………
からだの中でさまざまな役割を果たし、人間が生きていくのに欠かせない塩。歴史上も塩は重要な資源でした。でも、塩分の多い食生活が続くと、からだにどんな影響があるか知っている? 科学と文化の両面から塩の功罪を伝えます。

●森林の活用で日本の環境や暮らしを守る?!
……………………………………………………………………………………………
めざせ!持続可能な農林水産業 3――ゆたかな自然環境とともにある林業へ
中野明正[監修]3,850円
……………………………………………………………………………………………
国土の3分の2が森林の日本では、古くから林業が盛んで、歴史的な木造建築が多数あります。生物多様性を守り、災害を防ぐ森林の働きを生かすには林業は不可欠。直面する課題、スマート林業などの新たなとりくみを紹介します。

●特集=臨時教職員・会計年度任用職員が学校を支えるリアル
……………………………………………………………………………………………
月刊クレスコ    2月号(no.275)
クレスコ編集委員会・全日本教職員組合(全教) [編]550円
……………………………………………………………………………………………
安上がりの教育政策の中で教職員未配置問題が深刻化するとともに、非正規教職員なしでは学校は成り立たない現状がある。臨時教職員や会計年度任用職員のリアルな実態を明らかにし、正規化や待遇改善にむけた課題を論じ合う。

●特集=軍事国家化と地方自治のゆくえ――「分権改革」の30年を問う
……………………………………………………………………………………………
季刊 自治と分権( no.94)
自治労連・地方自治問題研究機構[編]1,100円
……………………………………………………………………………………………
●シンポジウム「政分権改革の30年を問う――軍事国家化と地方自治のゆくえ」榊原、白藤ほか ●京都市都市計画の規制緩和と市民のくらし 中林浩(神戸松蔭女子学院大学)ほか

【話題の本・本の話題】

浜田敬子さんが『ユートピアとしての本屋』関口竜平さんを取材!

AERA編集長、Business Insider統括編集長などを歴任したジャーナリストの浜田敬子さんが、関口竜平さんの営む「書店lighthouse」を取材した記事です。
一時の「嫌韓嫌中本ブーム」を生んだ出版業界の構造や、「バズらせる」ことよりも「誰もが安心して来店できる」ことを大事にするお店づくりなど。

全文無料で読めます。
「ヘイト本は絶対に売らない」、小屋から始めた独立系書店オーナーのこだわり(連載「だれが本を生かすのか」第5回 書店lighthouseを営む関口竜平の矜持)

◆ 関口竜平[著]『ユートピアとしての本屋――暗闇のなかの確かな場所』

本の試し読みはこちら

「レイシャル・プロファイリング」が話題になっています

人種差別に基づく職務質問 沖縄は全国7位の多さ 根絶へミックスルーツの市民ら3氏が議論 「社会が変われば警察も変わる」(沖縄タイムス)

昨年弊社より刊行された、宮下萌[編著]『 レイシャル・プロファイリング』の刊行記念イベントが1月27日に開催されました。イベントのレポートを沖縄タイムスで記事化していただきました。(有料記事)

1月29日に、人種や国籍、外見などを理由に職務質問をすることは、差別にあたり憲法違反であるとして、外国にルーツのある3人が賠償を求め、国などを提訴しました。
以下に今回の訴訟に関連する記事などをいくつかご紹介します。「職務質問と差別」の問題を一緒に考えてみませんか?

●“ 人種や国籍を理由に職務質問” 国などに賠償求め提訴へ(NHK NEWS WEB)

「肌の色や人種が理由の職務質問は違法」と訴え。レイシャルプロファイリング巡り国などを提訴(ハフポスト)
※こちらの記事は『 レイシャル・プロファイリング』にも執筆している国崎記者が書いたものです。

人種差別的な職務質問をやめさせるには|人種差別的な職務質問(レイシャル・プロファイリング)を受けてきた原告3名が賠償求め初の提訴。当事者たちに訴訟の狙いを聞く(ポリタスTV)
今回の訴訟で原告の一人であるマシューさんが出演します。(2月1日19時公開予定)

◆ 宮下萌[編著]『レイシャル・プロファイリング――警察による人種差別を問う

【イベント】

聡子の部屋 第54回(2月22日)『レイシャル・プロファイリング──警察による人種差別を問う』刊行記念イベント


警察という公権力による人種差別は、差別の中でもとりわけ悪質な差別であり、人間の尊厳を損なう重大な人権侵害です。本イベントでは日本ではじめとなる『 レイシャル・プロファイリング ―警察による人種差別を問う―』(大月書店)を通じて公権力による人種差別であるレイシャル・プロファイリングの問題を考えます。(申し込みHPより)

出演者:梁・永山聡子(成城大学)、宮下萌(弁護士)
日時:2024年2月22日 (木)19時~21時 
会場参加:1,500円/オンライン参加1,500円
※後日、アーカイブ動画を配信いたします。
会場:Readin’ Writin’ BOOK STORE

【今月の赤旗全4段】

【編集後記】

年頭の震災には本当に驚いた。被害の甚大さが明らかになるのも、救援や支援が届くのもあまりに遅く、政治の責任を感じざるをえない。『クレスコ』2024年2月号では、いまや非正規雇用の教職員なしには成り立たない学校の現状、なぜこうした事態に陥っているのか、構造的な問題を解き明かす特集が組まれている。今回の震災でも、子どもたちをケアし支える教職員たちが被災しているなかで、教職員や専門職のだれもが不安なく力を発揮できる労働条件は不可欠だと思う。『クレスコ』の次号3月号は、被災以来毎年つづく「3.11」特集。ご期待いただきたい。(子)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?