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第三子の名前を5秒で決めた話。


2月に誕生した第三子(長女)がとにかくかわいい。

普段ドッカンドッカン怒り散らかしてる私でも、赤子を前にするとあら不思議、完全に毒牙が抜けて、ただのデレふにゃおばさんと化してしまう。

9ヶ月を過ぎ、ちんまり生えてきた前歯がかわいい。
振り向きざまに笑顔で手をあげる様子がかわいい。
手をパチパチしたりなんとなく発話を真似たりするの最高!優勝!

いちいち全部かわいくて、我が家の男たちも、やれ自分のことを見て笑っただの、やれ真似してきただの、毎日大騒ぎである。

もぉぉーー誰か取り締まってくれよぉォかわいすぎるうちの子をォォ!!!!



ところで、そんな我が家の姫は、長男次男とは異なり、生誕時にまだ名前が決まっていなかった。

生誕時どころか、1日たっても、3日たっても決まらない。新生児期は、とにかく名前を呼んで愛でる機会が多いので、これが非常に困った。

里帰りをしていたので、実母もあやす度に「ねぇ名前決まった?」「一応最有力候補だと呼び方は“ふーちゃん”になると思うけど…」「ふーちゃん(仮)ね」「ふーちゃ〜ん(仮)」みたいな感じで呼んでいた。

たまに最有力候補が入れ替わったりして、「すーちゃん(仮)」と呼んでみたり、「ふ」と「す」の間みたいな、「ふぇ」と言いながら空気が抜けるような着地の発音で呼んでみるなど、その節はいろいろと気まずかった。


過去2人の子どもの名前を決めたときと同様に、互いに候補を出しながら落とし所を見つけようとしたものの、これがなかなか決まらない。

なにしろ、夫が候補として挙げてくる名前が、くそダサいのである。

もちろん、名前にダサいもなにもない。すべての名前に愛があり、想いがあるわけで、あくまでも好みの問題なのだけれど、昭和生まれの我々にとって馴染みがありすぎたり、知人を想起してしまったりする候補ばかりを、いそいそと挙げてくるのだ。
(逆に、夫からすれば、私が挙げる名前は奇抜で受け入れ難かっただろう。)

ただでさえ、「大塚」は広く馴染みのある名字だ。
そこに夫の候補の名前をくっつけたら、病院で呼ぶだけで7人ぐらい振り向くようなことが起こりかねない。
飛行機搭乗中に、「お客様の中に、大塚○○様はいらっしゃいませんか?」とか言われたら、「私です!」「私もです!」「あの…僕もなんですけど…」「えっ…私も…」ゾロゾロゾロ…


これは非常にまずい。

このままでは、我が子の名前が、病院と飛行機のスムーズな運用と運航を妨げてしまう。呼ばれるシーンが緊急を要する場合、最悪人の命を奪いかねない。

そうなってしまったら、きっと娘もひどく胸を傷めることになるだろう。それだけは…それだけは親として、避けてあげねばなるまい…!


我が命名権をかけて、長女の名前を全力でお守りせねばッ……!!!


私の中の武士がスッと立ちあがり、使命感に熱き血潮が激った。


そこから、候補出しの日々が始まった。毎日まいにち、寝ても覚めても、子の名前をあーでもないこーでもないと考えた。

名付けというのは、意識する範囲がなかなかに広い。
音、意味、響き、見た目、名字との相性、気にする場合は姓名判断、漢字の意味、諸外国での印象、呼びやすさ、あだ名、先に産まれた兄弟の名前との相性…。
知人被りもあるし、友達の子どもにつけてたな、とか、芸能界やスポーツ界、映画やアニメなどにもそれが及んでしまうし、元カレ(元カノ)と一緒!とかもあるし、なんだかもう、いろいろと大変である。
※あえて一緒にするのも、それはそれでもちろん良い。あくまでも我が家の場合。

候補は出るものの、正直決定打に欠ける。
夫も私も、互いの候補がイマイチすぎて、決まる気がしない。


もーーーーみんなどうやって名前決めてるの?

もーーーーーーーーこれ以上…戦えないよ……


衛生兵…!衛生兵ーーーー!!



あまりにも過酷な戦いを強いられ、私の武士魂と使命感の灯火は、静かに、確実に、小さくなっていた。



そうこうしているうちに、子が産まれる。
名前はまだない。

…もう、漱石でいいんじゃないの?大塚漱石。普通にいいよね。
ちょっと女子向けではないけど。

2/17が予定日だったから、「ニイナ」とかでいいんじゃない?産まれたのは2/18だけど。
もう、かわいいから、存在が姫だから、そのまま「姫」は?

あーーーーーー雑ーーーー

※どちらもいい名前だけど、親の想いが乗ってるかどうかって話。


名付け沼に身が沈みかけていた私は、スーパーの店員さんや、通りすがりの人にまで、「あのーなんか女子の名前ないっすかね、いい感じのやつ」と声をかけかねない状況だった。
それくらい、切羽詰まっていた。
何しろ子はすでに産まれているのだから。


そうして迎えた生後7日目。

その時、歴史が動いた。



数ヶ月こねくり回した候補名をゼロベースにしたところに、まったく別の名前が降ってきたのである。


あれ…?これ、いいんじゃない…?

いい!いいよ!


思いがけない希望の光に、勇み足で沼から抜け出し、名付けのセルフPDCAをぶるんぶるん回し、あらゆる私チェックをしてみたところ、非常に見通しがクリアで達成は確実である。(なんの?)


これで決めたい…!!
もう、もう、後がない!!!!

希望の候補名を、LINEで夫に猛プッシュする。
返信を待つ数分が、永遠に思えた。

夫「他よりはこれかな。検索サジェストで字が出てこないことが難点だけど」

くっ…冷静かよ!

「じゃ決定!!」

とねじ込み、10年後には今の検索の仕組みもアプデしてるだろってことで、無事名前が決まったのである。


やったー!!


PDCAとプッシュ後の返事待ちのタイムロスこそあったものの、閃いてから自分の中で決定まで至った時間は、実に数秒程度。
まさか秒で名前を決めるだなんて、まったく想像していなかった。
だけど、とても腑に落ちたし、今もその名前を、家族みんなが気に入っている。


今日も娘の名前を呼びながら、数秒の裏に隠れた怒涛の数ヶ月を思い出す。
その数ヶ月の裏には、私と夫の価値観を作り上げてきた30数年がある。

本当に、名付けという行為は、なんとも愛おしく重みのある作業だな。
過程も想いも家族それぞれだけど、名前ってどれもほんとサイコー!!
自分の名前も、みんなの名前も、大切にしたいですね。




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