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今の自分は、おっさん枠か、否か。

出産後、約1年の育児専念期間を経て、4月に社会復帰をした。

フレックスかつリモート可のため、チームに支えられながら、日々育児との両立ができている。ありがたい限りだ。


ただ、実は復帰直後から、人知れず悩んでいることがある。

社内での己のポジショニングである。


社内政治や派閥がどうとか、そういう戦い方的な意味合いではない。

特に同性と話す際、「あれ…?これセクハラっぽいかも…」と、発言を控えることが急に増えたのだ。
この感情は、相手にとって喜ばしいことなのだろうか?変に警戒されないだろうか?と…。

かわいい子(ルッキズム的な意味合いを含みつつ、存在や仕草など全般を指している)に対して、ポジティブな想いをストレートにぶつけることに抵抗を覚えるというのは、今までの人生にはない感覚だった。


そもそも私の勤務先は、若者が多い。

スタートアップということもあって、20代〜30代前半メンバーが構成の中心で、40代以上のアダルトチームの層が薄い。

入社時、30代としては折り返し手前、まだアダルトチームの兄貴や姉御たちに甘えられていた自分も、気がつけば不惑が射程範囲になりつつある。

見渡せば、あの子もその子もみんな年下。
転職組も、ヤングチームが中心だ。

そんな環境下、セクハラ発言にビビりながら、私は思った。


今の自分、おっさん枠では…?


「おっさん」のGoogle画像検索をしてみると、想定内の画像のオンパレードだ。近年話題になったBLドラマの俳優陣が出てくるかな〜なんて思ったけど、世間の「おっさん」イメージの根強さを感じさせる。

上部にタグのようにまとめられている、「イケメン」とか「筋肉」「かわいい」みたいな、ポジティブなくくりも納得感がある。
ただ、右上の「セーラームーン」は、え……?


とにもかくにも、「おっさん」という言葉は、中年男性をやや軽視したような意味合いで使われることが多い。

自分の周りでいうと、年齢的には同世代及びお世話になってきた層が該当するのだが、素敵な方が多い印象だ。

それでも、というか、だからこそ、とうか、実生活で気軽に発するには、いささか抵抗がある単語であるのも事実である。


ただ、誤解しないでほしい。

ここでいう「おっさん」とはすなわち概念の話であって、性別上、年齢上のそれではない。

セクハラと結びつけて連想していること自体、固定観念丸出しで恥ずかしいが、わかりやすさを重視した結果である。
現実世界のおっさんを揶揄したい気持ちは一切ない。揶揄するどころか、基本的に私はおっさん推しサイドである。

あくまでも、便宜上の「おっさん」であるということを、どうか理解してほしい。



「おっさん枠」に属している(かもしれない)現状を、私はどう理解すればよいのか、考えあぐねていた。

何が問題で、どうしたら抜け出せるのか?

悩んだときは、まず図にして情報を整えることだ。私はポジショニングマップを作成してみることにした。

before=育休前。


after=復帰後。


伝わるだろうか?

before(育休前)は、ゆるやかな成長曲線を描きながら、「いつかワイもあのイケてる姉御枠に…!」と、憧れへの道のりを想っていた頃の私。
ところがafter(復職後)では、なんか、ただ、枠外にポーン!と飛ばされて、そこが何枠なのかすら分からない私が転がっている。

ちなみに、自分で言うのも恐縮だが、この図では私本人は一歩も理解が進まなかった。

うまくおっさん枠を表現してみようと思ったが、おっさん枠を設けるときの横軸そもそもなに?


夫が、UXデザイナー的な、プロダクトオーナー的な仕事をしており、何となく情報整理とか得意系に思われたので、残業中の彼に「縦軸に年齢をとって、おっさんをポーンと枠外に配置したいんだけど、横軸何がいいと思う?」と聞いてみたところ、数秒黙ったあとに、「パフォーマンス…?」とつぶやいていた。

いや分かるよ。私もそう思って配置してみたんだけど、そもそも別に、窓際族的なおっさんを表したいんじゃなくて、セクハラを想起させるおっさんなんだよ、でもおっさんに悪いイメージがあるわけじゃなくて前向きっていうか、おっさん自体は概念であって、なんならそのおっさんって私なんだけどみたいな話を続けたら、部屋を追い出されました。辛い。

案件難易度が高すぎたのだ。私も諦めることにした。
マーケッターならうまいこと配置できるのだろうか?できる人がいたらぜひ取るべき横軸を教えて欲しい。



今更だが、前提として共有しておくべきことがある。

私は、昔からかわいい女子が大好きである。
(※自覚している性別は女性、恋愛対象も男性。)

小学生の頃にはすでに自分の嗜好に気づき、以来周りにも公言してきた。

繰り返すが、「かわいい」とは、ルッキズム的な意味合いも多大に含みつつ、その人となりや存在そのものを指している。要するに、顔もだけど、顔だけじゃない。


世の中の女子は、すべからくチャーミングで、皆何かしら光るものを持っている。

それはときに原石であり、ときに華々しく開花しており、さまざまな様子で魅せてくれる。
不思議なことに、素敵なポイントを嗅ぎ分ける嗅覚のようなものが、女子に対してだけ圧倒的に発揮されるのである。

(女子という言い方はよくないかもしれない。年齢区分は特にないが、「女性」という言葉を使うと文脈上ややしっくりこないため、便宜上「女子」で進めさせていただく。)

今までの人生もずっとそうであったように、育休前も、職場はかわいい女子で溢れていた。(つまり女性が多く在籍していた。)

学生時代、さまざまな個性に惹かれて仲良くなりたいと思いつつも、結局声をかけられず繋がらなかった縁が数多くあった。

もう、そういう後悔はしたくないので、最近は特に積極的に、かわいさはもちろん、素敵だと思ったこと、自分の心が動いたこと、感謝したいことはなるべく言葉にして伝えるようにしている。

そうやって、女子好きという私のポジショニングを遺憾なく発揮してきた自負がある。
おっさん枠としてではなく、自然体の自分枠で、である。

女の子が好き、というのは、ある意味おっさん的視点であり、私は俗に言う「オヤジ女子」なのかもしれない。
でも、その視点に性的搾取のようなドロリとしたものは一切なく、逆に崇拝するような崇高さもない。
天気がいい、空気がおいしい、そういう、ポジティブな現象の「事実のみ」を切り取って伝えてきたつもりである。

もしかしたら、指摘を不快に感じる人もいたかもしれない。笑顔で反応してくれていても、いい気がしなかったケースもあったかもしれない。

でも、相手へのアウトプットには、躊躇がなかった。
他者のかわいさへの反射神経が発達している自分にとって、他者へ向けた「かわいい」というメッセージは呼吸であり、本能であり、無意識の領域のものであった。
私イタリア人なの?


でも今私は、その本能に抗っている。

おっさんにはおっさんの作法というものがあって、女子の見た目や振る舞いについて、軽々しく発言することを推奨されないシーンが多々ある。
育休後の私は、そのシーンに度々遭遇することになり、戸惑っている。

かつて一人目を出産したあとの復帰では、スキル不足で悩んだ。
二人目のときは、休んだ期間も長かったので、より悩んだ。
そして三人目の今回。まさかの、スキル云々とは異なる、斜め上の問題が降りかかってくるとは…。
人生、何が起こるか分からない。


なぜ、私は、おっさん化したのだろうか。
私が世間と距離を置いていた1年の間に、世間もしくは私に、いったい何が起きたというのだろうか…?

育休前の自分と彼女たちは、同じ目線、同じ境遇ならではの、仲間内での共通言語として「褒め」を消費できていたのかもしれない。

職場の女性陣が、ひとえに仕事上たくましく成長しており、共通言語としての「かわいさコミュニケーション」が成り立たなくなっているのかもしれない。

かつて自分がこなしていた仕事ですらキャッチアップしきれていない現実ゆえの、「申し訳ない」という気持ちが、自らを弱くさせ、枠外まで遠ざかり、守りに入るようなコミュニケーションを起こさせているのかもしれない。

あるいは、育休中大人同士の会話が極端に減って、そもそもの会話スキルが落ちているのか…

理由は次々思いつくが、どれも核心に迫るほどではない。


復帰後の人事面談で「何か悩んでいることはありますか?」的なことを聞かれた際も、さすがに「なんか私、おっさん枠じゃないですか?どうしたらいいですか?ねぇ私!どうしたらいいですか!!」とは言えなかった。


そういうわけで私は、身の振り方と、この変化の原因を、ひとり悶々と考えている。


事業の成長に伴い、育休中に入社したメンバーも多い。
まだお互いに、心の距離がある状態では、「かわいさコミュニケーション」がうまく機能しないこともあるだろう。

あーーーーーなんだかなーーーーー

早くおっさん枠から抜け出して、「え!髪色変えた?イイ!!!」とか、「今の返答の仕方なに!!んもーーーそゆとこほんとカワイイ!!!今旦那に嫉妬している!!!」みたいなことを思ったままに口にしたい。

うざいかな。うわーーやっぱうざいんかなーーーーーうざいっつーかチャラいっつーか。
書いてみるとなんと言うか、おっさんよりもおばさん?概念としてのおばさん?むしろ。

え?私、ただ老けただけ?そそそそそういうことか?!?!

真相は分からない。
今の私にできることといえば、枠外で漂っているところから、再び自らのポジショニングを定め、方向性を間違わずにひたむきに努力すること。
そして、改めて共通言語を獲得できるよう、メンバーたちのことを知り、彼らの仕事を知り、自らも開示していくことだろう。

というわけで、まずはとりあえず、お仕事がんばります。





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