「未成年者略取誘拐」等・都道府県公安委員会に対する、警察法79条に基づく苦情申出書サンプル
初めに:警察法79条は警察官の職務執行に対する、苦情申出の制度を設けています。この制度は何人でも利用できる(リンク参照)ものです。
また、様式については極めて簡素であり(東京都公安委員会リンク参照)、住所氏名と電話番号、苦情申出の原因を郵送するだけで構いません。(ファックス、メールは不可)
この制度、警察法79条により都道府県公安委員会に応答義務が生じるもので極めて強力ですが、2001〜2011年で見てみると苦情件数は全国で1年に1000件あるかないかです。
つまり10万人に1名ぐらいしか、1年間にこの制度を利用しないということであり、極めてインパクトは大きいはずです。
苦情申出書面サンプル例(筆者が実際に書いたものを、逐次、修正)
苦情申出書
令和5年X月 XX日
東京都公安委員会 御中
江藤貴紀
電話 XXXXXXXXXXXXX[1]
住所 東京都XXXXXXXXXXXX
警察法79条に基づき、以下の警察職員の職務について苦情を申し入れる。
第一 苦情申出に至る経緯
1 2023年X月XX日に江藤貴紀(以下、筆者)は、妻の弁護士XXXによる、XX行為に関して刑事告訴状を警視庁XX署へ提出したい旨をXX署へ電話で連絡した[2]。
2 同日、同署の刑事組織犯罪対策課、知能犯捜査係主任の巡査部長・XXと電話で会話したところ、「あなたは離婚調停中と聞いている。その関係者や弁護士について刑事告訴なんかすると調停がぐちゃぐちゃになりますよ」などと、刑事告訴を受理しない方針の伝達があった。
3 筆者はそれでも刑事告訴を受理してもらいたい旨、またレターパックで刑事告訴状を郵送する旨をXXに告げてXX罪についての刑事告訴状を投函した。
4 翌日の10月6日、XXから刑事告訴状を受け取ったがそれについて話をしたい旨があり、筆者とXXが日時を調整の上、筆者がXX月XX日の午前X時XX分にXX警察署へ出向く旨が決まった。
第二 苦情申出の原因
1 X月XX日に筆者は予定通りXX警察署を来訪して午前X時XX分ほどから同署のX階にある一室でXXと2名きりで告訴状についての相談をすることになった。
2 XXが筆者に調停はどうなったか尋ねたので、XXXXXということ、またおそらくは離婚訴訟が調停前置主義をとっていることから、形式的に調停を妻側が起こしたであろう旨、「調停」という文字を取ってはいるが事実上は和解などよりは紛争の提起に近いものであることなどを述べた。するとXXは「離婚調停がどのようなものか、初めて知りました」と言った。これは「調停がぐちゃぐちゃになりますよ」などと言って、告訴を拒否したい旨を示したXXにしては信じられない無責任な態度である。
離婚調停の意味や制度上の立ち位置も知らずに、「調停中である」ことを理由に、告訴へ否定的な態度をとったXXの職務執行態度は、研鑽を怠って適当に物を言っていたものという他なく甚だ警察官として不適切である。
3 またXXはこの話し合いの中で筆者の妻である「XXXがXXXに対して相談したことがある。」と筆者に述べた。
ところが、XXは離婚調停での裁判所への提出書類においても、警察への相談は触れておらず、また筆者に対して口頭などで告げたこともなく、XXXX課もまた筆者に「接近禁止命令」などの措置は取っていなかったため、XXが口を滑らせたことで筆者はXXが警察のXX課に「XX」などと言っていたことを知った。
以上は①妻のXXおよび弁護士にとっては、捜査情報、相談情報の漏洩で、また場合によっては離婚訴訟で隠し球にしていたかもしれない情報の漏洩であり、②筆者にとっても、離婚の危機にあるとはいえ妻への不信感を煽る物であった。
XXX課保有の以上の情報を筆者に述べたXXの行為は、警察職員の職務として極度に不注意であり不適切である。
4 筆者はXXに「モラハラと言われても、それは何を持ってモラハラかが曖昧すぎるし、告訴状の不受理と関係ないと思う」旨を述べた。
ところがXXは「相手がモラハラだと思ったら、それがモラハラなんですよ」と答えた。
その後に筆者が「誘拐の認知件数が今年に入り、増えている」という警察庁統計が存在する旨をXXに述べたところ「どういう事案ですか」とXXは聞いた。
筆者はXXに「告訴が受理されたら当事者も口を閉せと言われるし、捜査官はもちろん口外しないだろうから分からない」としか答えようがなかった。
XXは「ああそうですね。」と言ったが、これは明らかに分かりきった話の不要な問答であり、圧迫面接のような物であって警察職員の職務として不適切である。
5 告訴状の中で筆者は、XXのあと子供と口も聞けていない心理的外傷からXXXの診断を受けた前提にある旨を書いており、XXもそれを知ってこの面談に臨んでいた。また面談前に「この半年、3時間以上続けて睡眠が取れたことがない」という旨をXXX署X階のエレベーター前でしていたりしたにも関わらず、XXは筆者の話を鼻で笑うことがあった。それに対して筆者が「鼻で笑いましたね。私は傷つきました。モラハラ、パワハラですよ」と述べたところ、XXは「そうですね」と謝罪した。
謝罪することは良しとして、XXの診断を受けている筆者に自身で認めるような「モラハラ」をすることは警察職員の職務として非常に不適切である。なお、このXXの態度で筆者は心臓に動悸を覚え、自身の委任した弁護士にその旨を相談している。
6 仮に、「本人が傷つけばそれがモラハラだ」というXXの見解が、あまりに広くモラハラの範囲を取っていた場合、それを理由に最初にXXが筆者を責めた言動が、警察職員の職務として不適切である。
7 XXは本件告訴状でXXXX罪が成立しない理由として①「自宅内にXXがあったこと」②「信書の名宛人は江藤貴紀となっているが、事実上は世帯に対して送られたものなのでXXが処分しても良い」、という2点を挙げた。
しかしそもそもXXXX罪は器物損壊罪の特別規定であると一般にされているところ、器物損壊罪の保護法益はその物の効用である。実際、有名な器物損壊罪の成立を認めた判例に、大正時代に学校長を困らせる目的で小学校の教員が教育勅語を持ち出して学校内に隠匿した事件がある (大審院大正4年5月21日判決)。以上を前提とすると①の自宅内に隠した行為であっても、子の入学先を当時同居していた筆者に知らせて入学式の案内を行う、という「XXXXX」の効用は完全に害されており、「自宅にあったから」はXXXX罪の成立を否定する理由にならない。
②について仮に「江藤貴紀」宛に出された信書が世帯宛のものだったとしても、その性質は共有物であり、その処分には共有者全員の同意を必要とする(民法251条)。実際、窃盗罪や器物損壊などは共有物について、共有者の一人が行った場合にも認められることを定めている。
XXの法解釈①と②について江藤はおかしいと言ったがXXは取り合わなかった。告訴の不受理という結論を維持するために、馬耳東風をつら抜いたXXの態度は警察職員の職務として著しく不適切である。
8 XXによれば①と②は警視庁本庁に照会したところ出てきた結論という。しかし警視庁本庁で、この①や②の如き、雑な法解釈をするとは思えず、警視庁にXXが行った連絡についても調査をしていただきたい。
第三 未成年者略取誘拐罪について
今後、未成年者略取誘拐としても告訴の予定がある事案として同封の令和5年3月29日付警察庁通達をXXに示したが、XXは「連れ戻しの事案についての通達です」という態度を崩さなかった。
しかし連れ戻しについてであればすでに最高裁判例2つが未成年者略取誘拐罪の成立を認めており、ニュース報道などでもしばしば事件が報じられたきたのであるから、わざわざ警察庁が通達を出す必要がない。
筆者は「同居する配偶者の一方が」連れ出した場合にも「被害届の受理等に遺漏なきよう」とあるのは、特別な意味がある旨、XXに主張したが馬耳東風であった。
第四 まとめ
犯罪被害を訴え出た筆者(XXの状態)に対して、自身でいうところのモラハラ行為に及び、告訴は法解釈と言えない理由で受理をせず、またその後の詫びの挨拶もないXXの10月13日午前9時40分からの職務執行は全体として不適切で、筆者は心的外傷を深めた上に、必要と思われる捜査も行われていない。
東京都公安委員会の必要な調査と措置を願います。
処分結果については、通知を希望します。
添付書類
「告訴状」および、告訴状と同封してXX警察署へ送付した書類一式
以上
[1] 携帯電話の方が繋がりやすいです。
[2] これは、同封する「告訴状」の通り、XX罪の手段の一部あるいは先行行為として行われたものであった。
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【10月16日追記】 警察法79条に基づく苦情申出について、形式が整っているにもかかわわらず「苦情」として適切な応対をしなかった場合に国賠法上の違法性を認めた事件が「弁護士法人 金岡事務所」の2023年10月4日付ブログに掲載されていた。
【10月26日追記】実際に受付されるとこういう確認の書面が特定記録郵便で届きました。
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