卒制ログ日記-ep1

卒業制作も佳境に入りここまでの制作について振り返ろうかなと思ってログを残すことにしました。

美大の卒制って本人たちにしか分からない謎の空気感があると思うんです。
卒論をマストとする学部と違って産みの苦しみを体感する1年間。

人生を通して常にツーアウト満塁みたいな感覚で生きてきた私の中でも、この1年は殿堂入りしちゃう勢いで濃く、これはエピソードとして残しておきたい気持ちが沸々。勢いで綴る、いつまで続くかもわからないログになりそうです。

学部4年のこの忙しい時期になにをやっているんだってnoteを書いていると我ながら思うのですが、苦しい時こそ思うこと感じることが多くなっているので、自身の作品と絡めて作品のお披露目の時までを綴ってみてもいいかなと。少し自分に酔ったことをやっても「まあ大学生だしね笑」で済まされるうちにやってしまおうと。

さて、前座という名の後の私への弁明を一通り終えたところで卒制について綴ろうかな。

ep1:「きっかけ」にまつわる話

1年前、元々あった病気の発作が久しぶりに起こりました。それも大事なプレゼンがあった日に。今までの人生の中でもプレゼンやテストなどの、なにかしらの”発表”という場を放棄することの無かった私にとって大きな挫折となりました。発作の原因は薄々わかっていて、自分のキャパを過信したがゆえのものでした。発作の起きた次の日も大事な作品の発表があり、なんとか行ったものの史上最低の出来で、そんな私に先生は怒ることなく同時に進めていた作品の完成を楽しみにしているから頑張りなさいと鼓舞されてしまいました。
正直、やり切れる自信がまるでありませんでした。
楽しみにされていた作品は自分1人だけで作るものでは無い分、逃げることも隠れることもできない、退路を断たれて頭を抱えてしまいました。
今思うと軽い鬱だったのかなって。
それでもなんとか完成した作品は私の人生を間違いなく変えたと思うのです。

「音を可視化する」そんなテーマの私たちの作品。
教室という空間を全く違う空間に魅せるインスタレーション課題に、私たちなりの出した答えは音楽空間にすることでした。

・・・コンサートホールに入った時のあのワクワク感、目を閉じて思い返す素晴らしいパフォーマンス...音楽は決して耳だけで楽しむのではなく五感を駆使して私たちの血肉となる。表現したかったのは、あの日、音楽を通して感じた高揚感そのもの。

そんな謳い文句をファサードに綴り、一つの教室を魅せることに成功した時、涙が止まりませんでした。それは1人じゃ無いから完成できたと痛感したからです。

インスタレーション作品”Neiro iro iro"

お披露目を終え、メンバーと泣きあった瞬間、あの瞬間から私の卒業制作はスタートしてたと思います。
インスタレーション作品の制作メンバーはたった3人。でも本当は3人だけで完成したものでは無いです。私たちを支え、制作に参加してくれた80人を超える人の手を借りて、やっとの思いで完成した渾身の作品。
そりゃあ、泣くでしょ。これは泣いても許されるでしょ。と思う反面、倒れるまでの自分はあまりいい人間とは言えないのに、こんなにもたくさんの人たちが制作を手伝い、気にかけてくれたことに改めて驚きました。完成まで無我夢中で昼夜を問わず制作していたので、ある意味人の心が無かったかもしれないのに。助けてくれる。こんなに自分を省みるに有り余る経験は無かったです。

そこから私の卒業制作の軸が生まれました。
またあの完成の瞬間のような高揚感をみんなで体感したい。
これに尽きます。

・・・持続可能な音楽は存在するのか...今回展示に使用したモビールは全てペットボトルを再利用したもの。資源は有限であるが、使い方によっては形を変えてまた私たちの前に現れる。音楽は昔のように生の演奏だけではなく、多様な方法で人々に寄り添ってきた。
今回はあえてコンサートホールで生の音楽的体験を視覚的に表現した。コンサートは聞き手のあなたが居なければ完成しない作品そのもの。あなたの心の中にある音楽的体験と重ねて、その記憶を半永久的にしてほしい。

インスタレーション作品のDM裏側に綴った思い。
約10000ピースに及ぶモチーフはペットボトルを再利用したもの。
よくもまあ、こんなに壮大な作品をやってのけたなあと自分のことなのに感心してしまいます。
約1年後の今、こうやって当時を振り返ると私の卒業制作の血肉になっているとよくわかります。
自信の無い私を変えてくれた運命的な作品の完成。
独りよがりで、ただ寂しいだけだった自分を前向きにしてくれた作品。
周りに生かされていると痛感した作品。

今私が作っている作品はそんな「きっかけ」から派生した純粋無垢な思いそのものです。こうやって過去を振り返ることで私を鼓舞できたのならいいなと思いながら、今回のエピソードはおしまいにしようと思います。おやすみなさい。

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