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イラスト詩集「オイラの公式」前文

 なにかと仲直りしたことはありますか?
 私は小さい頃から「あんた」という言葉が苦手です。
 言われるといつもびくっとします。
 でもさいきん、言葉で遊んだり言葉に遊んでもらったりする身として、苦手な言葉があるのは悲しいな、もったいないな、と考えるようになりました。
 例えば日本の西の方では「あんた」という言葉で親しい人を呼ぶ文化があるそうです。もちろん、東西問わずそういう意味や意図で人を「あんた」と呼ぶ人もいることでしょう。
 本当のところ、私は「あんた」という言葉自体が苦手なのではなくて、それにまつわる思い出や、小さい頃の私を「あんた」と呼んだ人が苦手なのです。そう分かっていても、「あんた」と呼ばれるとやっぱりびくっとしてしまいますが。

 なので、私は「あんた」と仲直りしてみることにしました。
 「あんた」にハチミツをたくさんかけて、綺麗な場所に飾って、隣に私の好きな言葉をいっぱい並べて、ついでに私は「おいら」になってみて。そうしてみたら、ちょっぴり「あんた」が苦手じゃなくなりました。

 これは、おいらが「あんた」と仲直りするための詩集です。
 あんたにもきっと、苦手な言葉や場所があるよね。もしかすると、あんたはあんた自身が苦手かもしれない。
 おいら、それってちょっぴり悲しいなと思う。
 だから、おいらが先に「あんた」と仲直りしてみるから、見ていて。
 そんなこんなで、これがなんかのきっかけになって、いつかあんたもなんかと仲直りできたらいいなって思うんだ。
 「あんた」とか「なんか」とか「そんな」とか「こんな」とか、なんだかややこしいね。音が似ているし。
 人生みたいにややこしいね。
 おいらとあんたみたいに、ややこしいね。
 おいらとあんたみたいに、似ているね。


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