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正月明けて、苦笑い。

 白にグレーに茶褐色、あたしゃ人を色で捉える。ドス黒さが滲み出る腹の腐った笑顔も見過ごさぬ。心の錦を喧伝するのに故意に纏った偽のボロ着、そんな不埒な格好も、擦れて破れた若者ファッションと同じなのだとお見通し。あたしの識別眼が本性の色合いを見抜いてる。

 どんな花とて在る健気、そのカケラをも利用しようとする不届き者の狡猾な色合いも、寸分違わず見分けちゃいるよ。あたしにゃ、ささやかだけど躾の行き届いた警察犬レベルの嗅覚がついている。

 人の腹色は混沌だ。着飾るように、誤魔化しながら、肥溜めに落ちた一輪の花だよと、さもそれこそが自分の投影なのだと嘘をつき、人を欺き、あやめとる。

 汚物ばかりでないにせよ、見るに忍ばぬ厄介者を、最初からなかったように目を逸らせるようになったのも、この身を誤魔化すことを学びとったからなのさ。自分にとって要らぬものは最初からそこになかったのだと、見たくもないエゴはあとづけの理由で見事に御破産にしてみせる。ゼロに戻す、無に帰する。

 すると、あるひとつが浮かぶ。この心もまた、なんと傲慢な、奢った者の振る舞いよ。

 人の見栄は罪深く、建前とおせば許されるよと、あげた声は案外まっとうなふうに受け取られ、今の世の中なんとなく均衡を保ったように装うよ。それが社会の正常進化だと信じて疑わぬ無垢で純真な金箔纏い、鈍くなった図体ひっさげて、背中を丸めて殊勝にやれど、どっこい本音の色が漏れ出てるのに気づかない。お天道様じゃなくたって、そんなこと、はなからわかっているよと、遠目で嘲り、苦笑い。

 ああ、苦笑い、苦笑い。
 今日は仕事始めだと、自分を奮い立たせて苦笑い。
 本音は違うよ、どこまでも。なのに腰上げドア開けて、本音滲み出るもキリリを装い、行くよ会社に。苦笑い。


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