ゲンさんの呟き。
「仕事なんか、辛くなきゃおもしろくねえだろ」
ゲンさんは相変わらず過激で暴力的だけど、聞き進めば納得の落とし所が見えてくる。
「素人10人と同じレベルの仕上げなら、そいつは仕事なんかじゃねぇ。ただのお遊びよ。ママごとみてぇなもんでしかねえ。
仕事ってぇのは、ズブの素人さんより頭ひとつぶん抜きん出てっからプロとして胸を張れるのよ。人様にありがたられるのよ。金払うだけの価値があったわぁって納得してもらえるわけよ。人並みの月並みにしか仕上げられなきゃ、誰も金払うだけの価値は認めてくれねえ」
「仕事ってのはなぁ、プロの手腕を見せつけるお披露目の場なわけよ。駆け出しのひよっこには真似のできない結果示して、感心させるものなのよ」
「仕事、覚えるまではたいへんだよ。腕を磨くのって容易かないよ。苦労して、辛抱して、ない知恵絞って絞りすぎて干からびて、その苦しさ、辛さから這い上がる。だからこそ価値がある。価値が出る。
楽してこなせる仕事なんざ、仕事とはいえねぇ。単なるホビー。でなきゃ老若男女入り乱れた戯れたオママゴト。だろ?」
苦労して耐え抜いて殻をぶち破る。たったこれだけのことなのに、その時に得られる達成感と言ったら。
「だろ? やり遂げたぜと、どーんと胸を張れるのは、辛苦を奥歯噛み締めて、怒涛の投網をやっとの思いでくぐり抜けてこそ。そんな苦しさ尽くしの仕事が楽しいわけがねぇ。苦しい、辛いが勝る。ほとんどがそれらで埋め尽くされちまってる。
こんなだから、障壁を切り抜けたあとの煌めきが目に染みるのさ。
仕事は楽しかないが、おもしろい。仕事ってそういうものだろ?」
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