見出し画像

愛猫、手術、飼い主のみぞおち


※今回の記事は、
人間の身体のお話は少なめです。
野口整体の身体のお話、風邪のお話などに
関心のある方は別記事をご覧ください。


□我が家の愛猫てんてん♂

うちには推定8歳ほどの、
クマのような猫、てんてん♂がいます。
我が家のたからものです。


てんてん♂
推定8歳

当時、函館に住んでいたわたしが、
マックスバリューのお惣菜コーナーに
悠々と足繁く通う野良猫がいるのを見つけ、
保護した男の子です。

お惣菜コーナーの店員さんや
お客さんにパン耳などをもらっていたせいか
痩せ細るわけでもなく、
いたって健康な見た目で
凛々しくもあり、ふてぶてしい顔も愛らしい、
人懐っこいおっとりした男の子でした。

保護した時から去勢されており、
拾った当時は推定1歳ほど。
気になったのは耳で、
両耳が丸く、カットされた跡があります。

いわゆる『去勢済み地域猫』の証である
サクラカットではなく、
獣医さん曰く、
「雑種だし、医療用のハサミで切られた跡ではないし。両耳が丸いのだから、おそらく虐待されていたのではないか...」

真実はてんてんにしか分かりませんが
過去はひきずりません。
日々ごはんを食べ、愛し愛され、
ぐぅぐぅと寝て幸せに暮らすのみ。

時には愛車でおさんぽに。

神社に初詣

時には猫友と交流。

飼い主が帰省の時には飛行機にだって乗れる、
割と図太い子なのです。



□異変

そんなてんてん、2月中旬、
体調が急変しました。
朝、顔周りを手で気にしながら唸り声をあげ、
右口からヨダレが止まりません。

昨日までいつも通り元気だったのに。
記憶をたどって、
触った感触などを思い出すと、
リンパ節が腫れていた様子もなかったし、
呼吸もいつも通り、
ご飯もトイレもいつも通り。
しかし、日々口の中までは確認していません。

口元を確認しようと手をのばすと、
興奮して怒ります。

病院は保護した日の一度きりで、
それ以来一度も行っていないのですが、
これは、連れて行くしかない。

覚悟を決めて
近所の動物病院へ行きました。

近所のK動物病院に到着。
獣医さんが1人、
看護師さんが3人ほど出てきました。



てんてんを診察台に乗せ、
口の中を確認しようとするのですが、
まぁ抵抗する抵抗する。

噛まれる、引っ掻かれることは
予想がついていたので、
わたしも完全装備で行き、
なだめようと声をかけたり
撫でたりしていました。

「お母さんではおさえられないから
どいてて下さい!」と獣医さんに言われ、
部屋のすみへ。


おさえつけようとする看護師さん達に対し
激しく抵抗するてんてん。
手足を封じるような
厚手のレインコートのような服を着せられ、
エリザベスカラーもつけられました。
が、猫の火事場の馬鹿力ってすさまじいもの。
ガタイのいい看護師さんの
おさえこむ手をすり抜け服を脱ぎ、
エリザベスカラーもぶちぶちと外します。

「こんなに抵抗できるのだから、
生命力がまだある証拠だな。」
となぜか少しだけわたしは安心。

獣医さんが、かろうじで口の中の写真を
数枚撮ってくださいました。


「おそらく、歯石、歯周病がひどい状態でしょう。これ以上なにか処置をするには全身麻酔をして、抜歯をしたりするのですが、人間と違って猫の抜歯は顎の骨を削ることになるかもしれません。」

そこまで大きな手術をしないと
いけないのか。

ひとまずそれ以上の処置は辞めてもらい、
その日は診察だけで帰らせてもらいました。


どうしたらいいだろうか。


急変する前から
たしかに起きるとヨダレの量は増え
口臭もあったてんてん。
ただしそれだけでみんなが皆んな、
歯周病という訳ではありません。

実は私は動物看護系の学校出身で、
ひと通り資格もとり、実習経験もありました。
在学中、さまざまな現場で目の当たりにした
日本のペット業界ビジネスへの疑念が拭えず
仕事にすることはしませんでしたが。
それももう、10年以上前の話です。


過去何度か飼い犬の看取りも経験してきたので
ある程度、医療知識はありましたが、
こういった治療の選択は
何度おとずれても慣れません。
出来るだけ自然治癒力にまかせたい
という方針は、人間に対しても、
動物に対してもおなじです。


全身麻酔は猫によって
合う、合わないがあるし、
顎の骨を削る必要がもしあったら、
てんてんの身心は果たして
耐えられるのだろうか。

かといって、
悪い歯が自然と抜けるまで
待てばいいのだろうか。
整体の知識と技術でどうにかなるような
話ではないし、ご飯も水も飲まないから、
このままでは弱る一方だろう。


病院では、
4.96kgと標準体重あったてんてんだけれど
抱いてみると、いつもより軽く感じました。

生命力が落ちたり、具合が悪くなると、
生き物は実際の体重よりも軽く感じます。
5kgの赤ちゃんを抱くと、
5kgの米袋を抱くよりも
重く感じますよ。なんていう話を
整体教室でも、よくしています。

処置をどうするか。
家に帰って家人と相談です。

□飼い主のみぞおち


わたしはその日眠れず、
自分のみぞおちを触ります。
いつもよりずっとかたくて息が吐きづらい。
緊張している証拠です。
お腹の腹圧は、
みぞおちはズブズブと柔らかく、
逆に下丹田はパンと張りのある状態が
いい状態です。
食生活だけでなく、感情の溜まり具合や
リラックス度も腹圧で測ることが出来ます。

胸骨も触ります。
ここもいつもよりずっとかたい。
胸は呼吸器、メンタルと関連があります。
胸に手をあて、愉氣をするも、
胸骨はかたいままです。
原因となっている不安が
なくならないのだから、仕方ありません。


□急遽、手術へ


翌日。

若くもないけど、年老いてもいない。
目もツヤツヤと輝きがあるし
あれほど看護師さんに抵抗する力もある。
私たちはてんてんの生きる力を信じて、
処置をしてもらうことを決意しました。

湘南の海を見に行った時。


ごはんが食べられず弱ってしまう前に、
出来るだけ早く、処置してもらいたい。

前日行った動物病院が運悪く
今日、明日定休日。

急遽隣町の動物病院に電話で事情を説明し、
今日までの状況を時系列で
書き留めた記録ノート、
前日処方された薬など持参して病院へ。

なるべく診察台に乗せられる時間を
短く済ませて、
話をスムーズに進めるためです。

ケージを開けると自ら入るてんてん。
前日連れて行かれた病院の記憶より
わたしとお出かけした記憶のほうが強いのか
とくに気にしないタイプなのか。
今日はどこに行くの?という顔で、
ケージに入ります。


隣町の動物病院へ到着。
再び診察台へ。

今日の病院は前日とは違い、
獣医さん1人、看護師さんが1人。

診察スタイルもまた全然違います。
終始、獣医さんも看護師さんも、
てんてんに声をかけ続けていました。

「かっこいいな〜イケメンだね。」
「ちょっとお熱を測るから、おしり気持ち悪いけどがまんだよ〜」
何かする時に、てんてんに心の準備を
させるように必ず優しく声をかけています。

手足を封じるようなレインコートも
エリザベスカラーもつけず
看護師さんはてんてんを撫で続け
てんてんはわたしや看護師さんの腕に
顔をうずめていました。
わたしも保定に協力しながら診察は終わり。

「このまま、処置してしまいましょう。」


電話の時には、今日中の手術は
引き受けられないと事前に
説明を受けていましたが、
手術中の嘔吐の可能性も低い、と判断し
臨機応変な対応をしてくださった獣医さん。
体力が弱る前に早く処置してもらいたかった
わたしとしては、感謝しかありません。

まずは鎮静剤。
これは注射なので、
さすがに抵抗しはじめたてんてんを
上手に横に倒して保定です。
注射は成功。

しかし、興奮状態のてんてんには効かず
口を開けてくれるまでには至りません。

「仕方がありません。
全身麻酔に切り替えましょう。
お母さんも一緒に来てください。」
と、わたしも同行させてもらえました。

この頃にはわたしはもう、
こみあげる不安をおさえきれず、
涙と鼻水でぐしゃぐしゃに
なっていたのですが、
手術の際に身内がそばに居てくれたら
どんなに力になるかは理解していました。
最後までそばで触れていようと
心に決めていました。

全身麻酔は、ガス麻酔です。
ガスマスクがてんてんにつけられました。

私も昔、自身の盲腸の手術で
つけた経験があります。
苦い記憶がよみがえる。
てんてん、どうか無事でいて。

「てんてん、お母さんと一緒よ〜。」
麻酔で意識朦朧としているてんてんに
声をかけながら撫で続ける。

獣医さんが、眠ったすきに、
口を大きく開けさせました。
「これなら大丈夫。」と言い
ペンチを持ってきて
てんてんの茶色くなった右奥の臼歯をつかみ
少し引っ張る。

「カラン......ッ」

どうやら根っこまで茶色く腐っていたのか。
あまり引っ張ることなく、
歯はきれいに抜けました。


術後、持ち帰らせてもらった
抜いた右奥の臼歯
根本も茶色い歯石がついています。

他にも、歯石がびっしりついている
歯があったけれど、少しペンチでたたくと
ポロンと歯石だけが取れました。
残った歯は割ときれい。

「これなら、顎の骨を削る必要もありませんよ」

手術は、無事に成功。

病院にいた時間は1時間15分。
薬をもらい、
てんてんも、その日のうちに一緒に
帰ることが出来ました。


□生命力


帰ってきて数時間は、
全身麻酔がまだ残っているせいで、
後ろ足がおぼつかず、
フラフラしていましたが、
トイレにもすぐに行っていました。

6時間後には
「ニャー」となき、
お腹が空いた、とごはんを要求。

それから、
経過をずっと観察していますがとても良好。
むしろ回復のスピードに驚いています。

獣医さん、看護師さん、
そして本来は仕事だったのに
事情を汲んで予定をズラして下さった方々、
本当にありがとうございました。


今回の経験を経て、
特に獣医さんは、人間の医療と違い、
整形外科、内科、心療内科、歯科、
などと細分化されておらず、
しかも犬、猫に限らずハムスターなどの
エキゾチックアニマルも診るのですから
人間の医者よりある意味
大変なのではないのだろうか。
と思ったりしました。


回復するてんてんを見ながら、
私は再び自身のみぞおちを確認。

普段通りのやわらかさに戻っていました。
胸骨も、やわらかさを取り戻し、
自分の呼吸と共に浮き沈みのある、
弾力ある状態になっていました。

それにしても、無事でよかった。
本当によかった。
幸運のラッキーボーイ、てんてん。


有事のときでも
うろたえぬようにと、
日々呼吸法や稽古をしたり
人に指導をしている訳ですが、
やっぱり揺れ動くのが人間です。

ましてや自分のたからものが
いなくなってしまうかも。
と思って、動揺しない人なんていません。
それでも、いつかニュートラルな
いつもの自分を取り戻せるなら、
それでいいじゃないかと思います。


日々ごはんを食べ、愛し愛され、
ぐぅぐぅと寝て幸せに暮らすのみ。
いつもの猫生を取り戻したてんてんです。

私のたからもの、てんてん、
今日もありがとう。
これからもどうぞよろしく。



#野口整体
#猫
#猫の歯周病
#やさしい手当て
#猫のいる暮らし
#保護猫
#動物の生命力

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?