コロナ禍の遠隔介護で知る イチローさん(父 88歳)が人生リ・デザイン中
実家のドアを開けると、テレビのリモコンが飛んできた(笑)
「来るな!」イチローさん(父)の苛立ち攻撃だ。
「もう死ぬ、死んでやる」
「出ていけ」
「人と話がしとうねえ」
イチローさんいろんなことが思い通リに行かないのだ。
私も10代の時に、自分のエネルギーをどこにぶつけていいのかわからず
校舎のガラス割りたくなったなあ(笑 そんなことを思い出しながら、たぶん、イチローさん本人も、言った後、自己嫌悪に陥っている。
こういう時は、家族が心配していることを伝えるより、笑い話にしたいな、と思った。
ちょうど、月が綺麗な夜。
「テルコさん(母89歳 認知症で施設にいます) 月が大好きだったよね~。月を見たら、宇宙人が攻撃してくるって、ビームス光線も家を狙ってるって。外に出て家を守ってくれてたなあ(笑)」
少しイチローさんの口が少しほころんだ。
テルコさんの話はイチローさんの笑いのツボだ。
テルコさんはレビー小体型の認知症だったので、いろんな幻想が見えていたのだが、いつも月を見ながら、おっとりと(笑)宇宙人を睨みつけていたような人だった(あっ、亡くならしちゃいけない、施設で生きてま~す(笑))。
ただ、イチローさんはリアルに苦しそうだ。
・肩で息をしている
・食事も前ほど租借ができていない
・身だしなみも気にできない
ただただ、カラダを海老のように曲げて寝ている。
病院に行っても「老化」以外は病名はつかない。
テルコさんの介護ができなくなったこと、自分が自立して生きていけなくなっていることにがまだ、受け入れられない?変化への戸惑いと苛立ち。
ひとり暮らしの限界と共に、もう一度、イチローさんが感じている使命「テルコさんの面倒をみる」ができるように本人と話、母と同じ施設に入所をお願いした。
たぶん、カラダの事もあるが、生きる意味=新しい使命がイチローさんには必要だ。
テルコさんはイチローさんをもうわからないのだが、それでも、ね。
施設に連絡すると、なんと、一部屋しか空いてないというお話。
今、申し込まないと、明日にはほかの人の視察があるとのこと。
この二年間のコロナ禍で、高齢者の方々のコミュニティはなくなり
外で人と話さなくなり、施設へという方々が増えているとのことだった。
多くの高齢者たちのコミュニティは崩壊されている。
88歳のイチローさんが直面しているこの辛さは、何だろうか...と
考えているうちに、私がやっているオトハルラジオ『三三五五』で、法政大学キャリアデザイン学部教授、廣川進さんをゲストにお迎えした時の
“中年危機(ミドル・クライシス)”の話を思い出した。
この話は40代前後が最も意気盛んな安定期に見えて、実は心の危機をはらんだ時、という心理学のユングも唱えた時期の大切さ。
加齢による身体的変化、家族のライフサイクルの変化などから、戸惑い、不安、やがて人生の大切な転換点を体験する。
その時、経験するのは「底落ち」というどん底の感覚。
私もあったなあ。イヤ今もよくあるぞ「底落ち」。オトナ思春期をデザインするプロジェクトを作ったのも「底落ち」がきっかけだ。「底落ち」はあるけれど、反対に、自分の人生をリ・デザインできるチャンスにもなる。
人生100年時代になり、中年だけでなく、88歳のイチローさんにも「底落ち」→人生のリ・デザインの時期が来ている気がした。
加齢による身体的変化は激しく、88歳の「底落ち」はたぶん、本当に辛いだろう。が、イチローさんの人生の最終章のリ・デザインが始まった。
中年危機の時は解決の方向性は「行動する」が基本なのだが、今回、イチローさんはカラダの力を振り絞って、施設に入るという「新しい行動」に出たのだと思う。
そんなイチローさんの88歳からの「底落ち」、リ・デザインを娘の特権で、しっかり見せてもらうことにした。
正解はない。
家族としての見守り方も試行錯誤しながら。
廣川進先生がゲストのオトハルラジオ『三三五五』はこちらから。
『大学の先生に人生のリ・デザインに繋がる“中年危機”の話を聞いてみました』
みよしの活動
「オトナ思春期をデザインするプロジェクト」(オトハル)は40代50代のココロとカラダと暮らしの変化を応援します。
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