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アフガニスタンの美(ショトル・ミュージアム)


アフガニスタンの美(ショトル・ミュージアム)

 アフガニスタンは、アジアの内陸にある国ですね。二〇一四年現在は、政情不安な国であることで、知られています(^^;
 また、イスラム教国であることでも、有名ですね。

 かつて、この国では、仏教が栄えました。その頃の遺跡が、たくさん残っています。
 正確には、「残っていました」と言うべきかも知れません。イスラム教の勢力が強くなり、政情不安と相まって、多くの仏教遺跡が、破壊されてしまったからです。

 本書には、以前のアフガニスタンで見られた、数々の仏教遺跡が、紹介されています。
 仏教の遺物に限らず、ギリシア・ローマ文化の影響を受けた遺物も、たくさん載っています。シルクロードの交流を示す遺物ですね(^^)

 有名なバーミヤンの大仏を始め、ローマのガラス製品や、インド風の象牙の女神像、中国製の漆器、北インドのカニシカ王のコイン、ギリシア神話の神々の像、美男子の菩薩像などが、紹介されています。
 まさに、古代のアフガニスタンは、文明の十字路だったのですね。

 本書の白眉は、「仏像を守護するヘラクレス像」でしょう。ギリシア・ローマ文化と、仏教文化との邂逅【かいこう】です。これほど、東西の文化交流を造形化した例は、珍しいです。

 個人的には、アフガニスタンのハッダ遺跡にあったという、仏頭も好きですね。
 静謐な表情をたたえた、気品ある仏頭です。日本の、旧・山田寺の仏頭―現在は、興福寺にある仏頭です―に匹敵する美しさです。深い精神性を感じます。

 これらの遺跡や遺物が、「もう、この世にない可能性が高い」と思うと、涙が流れそうになります。
 いつか、アフガニスタンが平和になって、人々が、自分の国の歴史を誇れる日が来て欲しいです。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

危機に瀕したバーミヤン大石仏  平山郁夫

はじめに
アフガニスタンという国

アフガニスタンの遺跡
 1 バーミヤン 痛ましき大仏
 2 ベグラム 文化の宝石箱
 3 スルフ・コタール 拝火教の神殿
 4 バルフ アレキサンダーの都
 5 フォンドキスタン 優美な仏たち
 6 ハッダ 美男におわす仏たち
 7 その他の遺跡

コラム
 大仏さまの歩いた道
 玄奘【げんじょう】三蔵が見たアフガニスタン
 象【かたど】られた仏陀―仏像の誕生
 アフガニスタンでは女性は
 王子から覚者【ブッダ】へ―釈尊の生涯

アフガニスタンとシルクロード



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