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続・顔の見えない女とのドライヤー戦争

昨年の開戦から8ヶ月。
私は胸やけの様な不快感に襲われている。

4月に入り変化があった。
化粧水・メイク落とし・コンタクトの保存液が綺麗になくなった。
しかし全く形跡が無くなった訳ではない。
ドライヤーは勿論の事、綺麗に干された洗濯物に「彼女」の形跡を所々に感じていた。

3日前、久しぶりに彼の家を訪れた。
相変わらずドライヤーのノズルは縦になり、マイナスイオンのスイッチはOFFとなっていた。
(この件に関して私の勝手な憶測であるが、「彼女」の「少しでも他の女に嫌な思いをさせてやろう」と言う意気込みを感じる。髪の毛サラサラになりたくない女子などこの世にいないのだ。)

帰り際、結婚式に出席する為に慌ただしく出発した彼を思い、溜まった洗濯物を洗い干されていた洗濯物を取り込んだ。
数枚のパンツと靴下を収納棚にしまおうと引き出した瞬間、その不快感は襲って来た。
全パンツがおにぎりの様に小さく畳まれ綺麗に整列していた。
全靴下もおいなりさんの様に小さく畳まれ綺麗に整列していた。
まさかと思い、他の収納棚やクローゼットを確認すると、全Tシャツ、全ズボン、全トレーニングウェアがアパレルショップの如く綺麗に畳まれこちらを見て来る様に整列しているのだ。
ここでのポイントは「全て」の衣服に息が掛かっている事だ。
たかだか1〜2日泊まっただけではたまらない量の衣服量である。
わざわざ収納棚の端っこで潰れてしわくちゃになっているTシャツまで取り出し、隅から隅まで畳み直した訳である。

つまり、「彼女」は私物を置いて帰るマーキングから、彼の衣服を隅々まで自分色に染めるかの如く畳み直すというマーキングに戦法を変えて来たのだ。
敵の顔は分からないが、中々ひねくれた性格である事は垣間見れた。
事実、3日経った私に今も尚精神的攻撃を続けて来ている。
GWの多忙な時期に、仕事中忙しさで一瞬忘れつつも、ベトナム上空でパンツの整列がフラッシュバックして来た。

私はと言うと、相変わらず「何もしない」攻撃をしている。
何も私物は残さず、洗濯物も適度に雑に畳み、ゴミを出して帰宅した。

次に彼女がどんな攻撃を仕掛けて来るのか、見たい様な見たくない様な、不思議な気分だ。

しかし、劣勢ではあるが、不思議と負ける気はしない。
おにぎりパンツで諦めるほど安っぽい恋ではないのだ。

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