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真珠の耳飾り

今年の誕生日に、ピアスとお花を貰った。
小さな真珠の下にシルバーの半円が付いていて、片方は更にシルバーの輪っかがぶら下がっている。
お花はボックスに入ったピンクを基調とした可愛らしいものだった。



一昨年は「何をあげたら分からないから」と強制的に近くのブティックに連れて行かれてブレスレットを買って貰った。

去年は「Apple Watchとバカラのシャンパングラス、どっちが良い?」と聞かれて「どちらも欲しくない」と応えた。その日の夜は9月の割には肌寒かったので「明日ストール買いに行こうか」と言われて渋谷まで買いに行った。

ある時、バーで他のカップルが誕生日プレゼントに何を貰ったら嬉しいかを話している時に「女性ならお花とか嬉しいんじゃない?」と意見した時に、彼は「めんどくせー」と呟いていた。



箱を開けて真珠のピアスを見た時、「わぁー」と小さな声をあげた。
私なりの歓喜である。
私はダイヤよりも真珠が好きだ。

「凄く可愛いね。自分で選んでくれたの?」
「すげー迷ったよ。お店の人に相談してさ。『CAさんなんですけど』って言って勧めて貰った。一個ずつ選べて、右と左でデザイン違うやつにしてみた。」
「ふふふ。ありがとね。私パール好きなんだ。」
「おとちゃんってパールが似合うんだよね。」
「私がパール好きなの知ってたの?」
「そりゃ知ってるよ。」
「え、なんで?エスパーなの?」
「俺だってちゃんと見てるんだよ。」
「そっかぁ。」

にやにやしながらその場でピアスを着けてみる。

「いーじゃん。似合ってるよ。」
「本当?嬉しい。ありがとう。」
「そっちも開けてみなよ。」

ワクワクしながらお花の箱を開く。
「わぁー、ピンクだ。」
「可愛いよね?」

その時、ワイワイと他のお客さんがやって来た。
スイートモードだった彼が急にビジネスモードとなり、彼らをもてなし始めた。
「〇〇さんがお花くれたの初めてだね、ありがとう。」と伝えられなかった。

その夜は辛い事があるたびに、真珠の耳飾りに触れながら言われて嬉しかった事だけを思い出していた。

今はもう見る事も出来ないので箱にしまって引き出しに入れてある。

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