他の女の子のお泊まりセットの破壊力
※写真は実際のものです。
洗面台の鏡裏はパンドラの箱である。
分かっているのに今日も開けてしまう。
「今月は忙しい」と言われ、1ヶ月会えない間も夜遊びはしっかりしていた痕跡がそこにはあった。
鏡裏に他人が置いて行った、コンビニで1,000円で買えるお泊まりセットとコンタクトケースがあるのを知りながら、
「ねぇ、前に脱毛クリニックでサンプルで貰って来てくれたメイク落とし引き出しになかったっけー?」
と聞くと、
「何かしらあると思うよ」
と言いながらわざわざリビングから来て、鏡裏を開けて同じ棚に入っていたサンプルのメイク落としを出してくれた。
お泊まりセットが私に見えない様に素早く扉を閉めた。
彼は私が物色する可能性を鑑みないのだろうか。
隠せているつもりなのか、隠すつもりがないのか分からない。
案の定、ドライヤーのノズルの向きは変えられていた。
顔の見えないその女の子はどんな気持ちでそのお泊まりセットを置いて行ったのか。
彼とどうなりたいのだろうか。
どれくらい彼の事が好きなのだろうか。
私は飽きられてしまうのだろうか。
お泊まりセットを見付けてしまってから1週間が経った。
いつもなら数日で悲しさも紛れるのだが、なぜか今回は心にしこりが残る。
1,000円のお泊まりセットの破壊力は思ったより強かった。
ドライヤー戦争に負けてしまいそうだ。
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