手元に欲しくなる - Eleven Stories
大概の場合は、どんな音のバンドか知った上でアルバムを買うだろう。
でもこのアルバムは、あとから演奏しているバンドに出会うこととなった。
・・・
渋谷と代官山の間に位置する「レザール」において、たまたま東京に来ている奏者がきっかけで集まったメンバーがいた。
その日の演奏はとてもご機嫌で、偶然相席した観客も心一つとなって盛り上がっていた。観客同士が良く笑い、音楽への「好き」をそれぞれに語っていたことが鮮明に思い出される一夜だ。
その時演奏していた1人が、サックス奏者の横田寛之さんだった。
穏やかな第一印象とは対照的でパワフルな演奏がインパクトを残し、その音、世界観の続きが気になった。
そうして手に入れたのが、「ゴウダヴ (Gaudav)」という、横田さんがリーダー務めるユニットの2作目、「イレブン・ストーリーズ」というアルバムだった。
物理的なアルバムを買わなくなる人が増えていく中で、どうしても買いたくなってしまう理由がある。
そのアルバムを初めて手にした時、受け取った時の情景が、そのアルバムのストーリーの一部になって後々思い出されるのもその一つ。
でもそれ以上に、どうしてそのアルバムの曲を選曲したのか、どんな思いでアルバムを製作したのか、そしてオリジナル曲の場合は、その曲の背景にどんな物語があるのか。その文章を読むことが好きだからだ。
「イレブン・ストーリーズ」は、開けてみるとギッシリと文字の詰まった一枚の用紙が挟まっていた。
アルバムの題名からも想像できるように、11曲が収められており、それぞれが短編小説のサウンドトラックや主題歌のように見立てられ、物語が綴られていた。
私としては最大限好みのアルバムの形式だった。でも勿論それだけではない。
一曲一曲に込められた物語は、時に優しく、時に激しく、そして時に異世界を地球に呼び寄せるかのように演奏が繰り広げられていた。
世界観の異なる11曲が、それぞれ意味を持って存在しているように感じられ、これは本人たちの生の演奏に出会って見なければ、と思ったのであった。
それが、私の音旅の更なる広がりに繋がってくるとは、まだその時は全く想像せずに…
11 Stories (イレブン・ストーリーズ)
横田寛之:sax
堀秀彰:pf
安藤昇:b
横山和明:dr
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