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本業でPM ✕ 複業でスタートアップCTO。複業先で正社員になったエンジニアの「両輪キャリア」

本業1社にとどまらず、さまざまな企業で自身の能力や経験を活かして新たな活躍の場を広げる「複業人材」を紹介する本シリーズ。第1回目に登場するのは、株式会社LX DESIGN(エルエックス デザイン) CTOの工藤 卓也さんです。工藤さんは新卒で大手不動産系テック企業に入社し、複業では教育系スタートアップにてゼロからのシステム構築を担います。2年間の複業を経てこのスタートアップにCTOとして転職した工藤さんに、複業を開始した経緯や、本業と複業を両立するコツ、また今後の展望について伺いました。
 
< プロフィール >
株式会社LX DESIGN CTO 工藤 卓也
株式会社LX DESIGNのCTOとして教育系サービスの開発を行っている。学生時代からエンジニアリングのみならず、ビジネス領域にも強い関心を持ち、大学院在学時には総務省主催の起業家甲子園にて総務大臣賞を獲得する。また、多数のハッカソンで入賞経験があり、現在も日本最大規模のハッカソンで審査員も務める。


本業は不動産、複業は教育。異領域の共通点は「社会課題の解決」

― 工藤さんの自己紹介をお願いします。
 
私は現在、LX DESIGNという、教育現場向け外部人材活用サービス「複業先生」を開発するスタートアップでCTOをしています。北海道出身で、大学院でプログラミングを学んだ後、就職するために上京しました。新卒では国内最大級の不動産・住宅情報サイトを企画・運営するLIFULL(以下、ライフル)に入社し、エンジニアやプロジェクトマネージャーとして6年間在籍しました。現在のスタートアップには複業として2021年4月からCTOを担当した後、2023年8月に正式に移りました。
 
― 不動産系企業を本業とする傍ら、教育系スタートアップで複業をしたのはなぜでしょうか。
 
ライフルには不動産業界だからというよりも、もともと大学生の頃から興味があった「社会課題」を解決するという企業理念に惹かれて入社しました。現在所属しているLX DESIGNでも、教員の不足や子どもの学習の多様化といった教育業界の課題に挑戦しています。それに、事業を1から立ち上げてみたいという思いが強かったんですよね。当時、LX DESIGNはまさにシステムを構築する段階にあったので一人目のエンジニアとして参画しました。
 
― 工藤さんはどのようなきっかけで複業先のLX DESIGNと出会ったのですか?
 
ライフルが開催したイベントでLX DESIGN代表の金谷が登壇したことがきっかけです。金谷からシステム構築について半年間ほど相談を受けるにつれ「ちゃんと参画しましょうか」という流れになり、複業としてこの事業に関わることになりました。
 
― 当時、LX DESIGNの他に複業をしていた企業はありますか?
 
単発のご依頼にはつど対応していました。エンジニアとしてゼロからシステムを構築したり、別の教育系事業の立ち上げに関わったり、エンジニアリングとは関係なく友人のスタートアップの立ち上げを手伝ったりしていました。
 
― さまざまなご依頼に合わせて動くのは大変だと思いますが、どのように同時進行していらっしゃいましたか?
 
平日は本業の業務時間が終わったら各社の複業を遂行していました。当初は月30〜40時間でしたね。LX DESIGNが忙しくなって業務時間を増やしたくなってきた頃、ちょうどライフルに週休3日制が導入されたので、週4日で本業を、休日1日分で複業を実施しました。複業先が繁忙期だったり緊急事態が発生したりした時は本業のお昼休みに30分だけ会議を入れたこともありますが、基本的には平日の夜や土日に時間を確保していました。

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本業と複業、両立のコツは「宣言すること」と「結果を出すこと」

― 本業と複業の両輪で働くことにはどのような利点がありますか?
 
複業によって、本業ではできない経験ができることです。実は、新卒で入社した当時から、5年後にはスタートアップに挑戦したいと自分のキャリアを思い描いていました。ライフルの子会社を作る、新規事業を創出するといったアイデアで積極的に社内のビジコンにも出ていましたね。そのために入社の時から5年でエンジニアとして一人でサービスの開発・運用できるくらいの技術力を身につけようと思っていました。1000人規模のライフルで既存サービスの機能改修をメインに携わる傍ら、転職しなくても自分のキャリアを実現できる方法を探して複業にたどり着きました。本業でスキル・能力を磨いてキャリアの幹を太くし、複業で新たな挑戦ができるので学ぶことばかりでしたね。
 
― 反対に、複業があることで大変だったことはありますか?
 
やはり時間の確保です。本業が忙しくなった時は複業に時間を割くのに苦労したし、本業と複業のプロダクトのリリースが重なってどちらにも時間をかけなければならない時は、ひたすら時間をやりくりしながら明け方まで稼働する毎日でした。
 
― 本業側の企業には複業を「社員のリソースが他社に流れてしまう」と考える方もいらっしゃいますが、工藤さんは自社で信頼を構築して成果を上げるためにどのように動きましたか?
 
ライフルはむしろ逆で、外で学んできた知識や経験を社内で活かせるなら社員の複業を歓迎するという方針でした。社内で複業を申請する時も「それで何を得られるのか」を記載するルールになっているので、みんなおのずとどんなスキルを身に付けようかと意識的に複業に取り組めるんです。
 
― ライフルは複業を「人材のリソースを奪うもの」ではなく「外から新たな知識や経験を得られるもの」と考えていらっしゃるんですね。工藤さんが約束どおり、複業を経験してライフルでよりいっそう力を発揮したからだとも思います。
 
ありがとうございます。本業では半期に一度行われる目標設定で「これはこんなふうに達成します」と上司と握り合い、確実にその結果を出すことは徹底していました。
 
―宣言したとおりにやりきることは、 本業と複業を両立させるためのコツですよね。
 
宣言することは大事ですよね。複業ではどうしても稼働時間が制限されるので、始めるタイミングで「この業務はします」「この業務はしません」と明確にお伝えしました。忙しいスタートアップだからと何でも気前よく「できます!やります!」と言ってしまうと先方の期待値が上がり、こちらの未達が続いたら信頼を失ってしまいます。
 
例えば、複業先だった頃のLX DESIGNには、ゼロからシステムを立ち上げる時「自分1人じゃできません」とあらかじめお伝えし、エンジニアが1人もいない頃からエンジニアの組織を作ろうと提案しました。私が何を作るのかを決めるし、実装されたものをレビューするけれど、私自身は実装しないからエンジニアを採用して彼らを管理・育成する、と。

複業に望むのはお金よりも「この会社を大きくしていきたい」という思い

― 工藤さんがライフルを退職する時、会社の皆さんから惜しまれませんでしたか?
 
有り難いことに、引き止めてくださったこともあって退職までに1年間かけました。入社1年目から自分のキャリアプランをお伝えしてきたし、ライフルに不満があって転職をしたわけではないので。会社は週休3日でしたが、毎週有給をもう1日頂いて引き継ぎを行い、私がいなくなっても事業が回るようにした上でライフルを後にしました。
 
― 愛のある別れ方だと思いました。時間をかけて少しずつフェードアウトし、工藤さんがいないことに徐々に慣れていただく。信頼関係が壊れることなく別れられたのではないかと思いました。
 
お世話になった方々との信頼関係は大事にしていますね。そもそも複業に挑戦できたのもライフルが応援してくれたからですし。退職した後もライフルで飲み会や集まりがあったら呼んでいただけるのも有り難いなあと思っています。
 
また、複業先の会社選びも重要だと思います。私はお金ではなく「この会社を大きくしていきたいんだ」という思いを持ったところを選んだので、最後まで中途半端にならずにやれたと実感しています。
 
― 現在はLX DESIGNのCTOとしてご活動になっていますが、今後はどのようなキャリアを積みたいですか?
 
エンジニアとしては、新規事業をいかに加速させてユーザーにヒットするものを作っていくかに興味があります。これまでの複業では、事業を立ち上げてからシステムを構築し、ユーザーに使っていただくまでを一気通貫で行い、エンジニアの組織作りも実施しました。この経験を活かし、同じように立ち上げで困っているスタートアップをサポートしていきたいですね。
 
― 「複業をしてみたいけれど不安だ・・・」と考えていらっしゃる方々へメッセージをお願いします。
 
複業では本業ほど時間が使えず、月30〜40時間で自分の力を発揮しなければならないので、私も最初は不安でした。先述のとおり、まずは「この業務のこの部分を担当したいです」「この業務にはこれくらいの時間がかかります」と複業先の方と期待値を調整したら上手くいくはずです。また、特にエンジニアはある程度の技術があれば本業と複業の業務内容がそんなに変わらないので、思い切って踏み込んでみると案外難しくないかもしれません。複業をすると自分に新たなスキルが付くだけでなく、いろんな方々と繋がるのでぜひオススメしたいです。
 
― 工藤さん、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
 
(取材・文:佐野 桃木)

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