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知らない人の知らない生活

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日記です。
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記事一覧

怒りを持たない酔っ払いはとにかく大丈夫

パートナーとお気に入りのイタリアンに行った。 いつものようにサラダとチーズを食べ始めたところで、ドアが開いた。 「私は白ワインが好きです。」 低めのよく通る声に思わず振り返ると、黒いコートに火野正平が被ってるみたいなニット帽、もみあげから口までつながる立派なヒゲの男性が、若干笑みを浮かべながら開けたドアの前に立っていた。 一瞬で「何だかこれはまずいかもしれない」と私のセンサーが反応した。 「開いているお席へどうぞ。」と声かけがあったが、ここのお店のお姉さんは結構声が小

コンサルと施工屋のバトル

お気に入りのカレー屋さんにお昼ご飯を食べに行った時の話。 行列ができる人気店で、その日も少し並んで入った。 いつものように季節のメニューで2辛(MAXで3辛)でオーダーして待っていた。周りは1人でもくもくと食べてる人がほとんどで、いくつかのテーブル席では、それぞれ話が盛り上がっていた。 私は窓側の席で店内に背を向けて座り、真後ろはママ友2人組が保育園の話をし、その向こうは、仕事の同僚2人組という感じだった。待ってる時間は暇なのでなんとなくまわりの話が耳に入ってくる。

耳を開くワークショップで鼻が開いた話

奈良県の山奥で、サウンドスケープのワークショップに参加した。 主催は奈良県立大学(実践型アートマネジメント人材育成プログラム) CHISOU lab.さんと12面体スピーカーで有名なsonihouseさんで、「その土地、その時にしか生まれない音を通じて、土地に積み重ねられた層と感覚の広がりを体験するプロジェクト」ということらしい。 友人に誘われて、「よくわかんないけど、まあ、行ってみるか。」と思って出かけた。 我々は奈良県宇陀市のまちの中を流れる川を水辺から水辺へと、そ

金木犀おばあちゃんと通帳おばあちゃん

朝、出勤するためにバスを待っていた。 バス停で目の前のベンチに座ってたおばあちゃんが、立ち上がって垣根まで歩いて、金木犀の匂い嗅いで、ベンチに戻った。私は心の中で「いい匂いだよね」と思った。 その後すぐに、その隣に通帳を眺めるおばあちゃんが座った。 しばらくすると、「もうなに!!!」「金木犀!!!」という2人のおばあちゃんの絶叫が聞こえて、私は驚いて2人の様子を見た。 すると通帳おばあちゃんは「もう!いらんことばっかり言わんといて!!!」と金木犀おばあちゃんにブチ切れ

知らない人の知らない生活

twitterとかinstagramとかを見ていると、手のひらの中を「知らない人の知らない生活」がヒュンヒュン流れていくような感じがする。 これまで自分が育ってきた環境や置かれている状況からは、交わることのなかった、たくさんの人の日々の営みが。 そんなことがあるのか。そんな人がいるのか。と、ただ思う。 私の見た景色もここに書いておくとどこかへ流れていって、誰かにとっての「知らない人の知らない生活」になるはずで、なんとなく、記録をすることにした。気が向いた時だけ。