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ちゅーりっぷのマキちゃん

私の人生には三人のマキちゃんがいる。

学生時代のマキちゃん。
部活が一緒で、帰りの電車でよくイヤホンを分けっこしてウォークマンを聞いていた。悩み相談したり流行りの洋楽を教えてもらったりした。

ママ友だちのマキちゃん。
バザーやイベントの係でよく一緒になった。ほんわかと落ち着いているのにテキパキ仕事をこなす。誰に対しても距離を詰めすぎず皆から信頼を集めていた。

この二人はいまは疎遠だけど連絡先はわかるので会おうと思えば会える。
もう連絡先もわからないのが小学校のときのマキちゃんだ。


🌷

小学校のマキちゃんは小学校に入ってすぐにできた友だち。
私は幼稚園になじめなくて窮屈な思いをしてきたのだが、小学校の友だちは可愛くて親切な子たちばかりで世界がぱあっと明るくなった。
マキちゃんはそんなクラスメイトの一人だった。

マキちゃんちは一軒家でお庭があった。何人かで遊びに行ったときに、庭に机を広げて学校ごっこをしたのがすごく楽しかった。マキちゃんには2〜3歳上のお姉さんがいて先生役をやってくれた。
2階の子ども部屋には本がたくさんあって『スーホの白い馬』や『パディントン』の絵本を見せてもらった。いまでも『スーホの白い馬』と聞くとマキちゃんの部屋を思い出す。

狭い我が家に来てもらったとき、うちにあった『大草原の小さな家』シリーズの本を見て「これテレビのだよね!」「本があるんだね!」と話に花が咲いた。
当時海外ドラマ『大草原の小さな家』が放送されていたのだ。主人公のおてんば娘ローラが大好きだった。テーマ曲も懐かしいなあ。
このときのやりとりは私にとって初の「オタ話」だったのかもしれない。

小学二年生の途中で私が引っ越しすることになり、マキちゃんと文通が始まった。小学生が切手のお手紙交換するなんて!大人びた体験にわくわくした。

手紙はこちらが出す→返事が来る→また返事を書く、のループなのだが、ある日マキちゃんが「なにか合言葉決めない?」と言ってきた。
いま思うと女子っぽい。
で、その合言葉が

ちゅーりっぷ

あえての平仮名だったと思う。
手紙の最後に書いてじゃあまたねって感じ。
「ちゅーりっぷ」の文字の色を変えたり蛍光ペンで囲ったり。
マキちゃんの意図はよくわからなかったけれど秘密を共有してる感があった。私たちは特別な友だちなんだよーという。

だが、小学四年生のときに我が家はもう一度引っ越し、いまの実家に来る。このあたりでマキちゃんとの文通が途切れてまう。


🌷

それから数年後、私が高校一年の秋だった。
突然マキちゃんから手紙が来た。

マキちゃんも引っ越しをしていて別の住所になっていた。高校生活のことや近所の友人の話が書いてあってやはり最後に「ちゅーりっぷ」とあった。
私はうれしくてすぐに返事を書いた。
このとき一度会っておけばよかったのかもしれない。(同じ県内だったし)

手紙のやりとりは数回続いた。
あるとき彼氏ができたと書いてきた。どこそこに行っただとかバイクの後ろに乗せてもらっただとか。(自転車だったかも)

へーふーん。

腹心の友ダイアナよ。
あんたもそっち側だったのかい。

返事を書く気が失せた。
「リア充爆発しろ」までは思わないが、
心根(こころね)が病みつつあった私には
健全な女子高生っぷりがまぶしすぎて
コントラストで目の前が真っ暗になった。

以後マキちゃんとの連絡が途絶えた。
私は返事を書かなかったし
二度と手紙が来ることもなかった。


リアルに一緒に過ごしたのは小学校に入ってすぐのわずか一年半。
腹心の友マキちゃん、どうしていますか。
あのとき返事出さなくてごめんね。



画像は宇ヨン様にお借りしました。
ありがとうございます。


それではこれにて。ありがとうございました!

(ライラン56日目)




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