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大阪産ワクチン開発中止安倍政権・維新の“お友達”企業に多額補助金〜すべてがNになる〜

2022年10月2日【2面】

 吉村洋文大阪府知事が新型コロナウイルス感染症に対する「初の国内産ワクチン」「早期実用化」などと売り込み、国が多額の補助金を支出した創薬ベンチャー「アンジェス」(大阪府茨木市)による「大阪産ワクチン」の開発中止が決まりました。安倍政権や維新の“お友達”が創業したベンチャー企業に巨額の税が投じられたにもかかわらず、今に至るも成果が明らかにされていないことに、国民から厳しい視線が向けられています。

 (森糸信)

 アンジェスが大阪大学と共同でDNAワクチンの開発を行うと発表したのは、新型コロナの日本上陸から間もない2020年3月でした。4月には吉村知事や松井一郎大阪市長が記者会見を開き、大阪大学など府内の公立医療機関と府市が連携協定を締結し、研究や治験に協力することで、大阪発のワクチンを「年内には10万~20万単位で投与できる」(吉村氏)などと語っていました。

創業者は特別顧問

 アンジェスの創業者は森下竜一大阪大学寄付講座教授です。森下氏は、安倍政権下で内閣府規制改革会議の委員や健康医療戦略本部戦略参与などを歴任。大阪府市では特別参与などを経て、現在は府市特別顧問や関西・大阪万博に府市が出展する「大阪パビリオン」の総合プロデューサーを務めています。安倍自公政権の規制緩和路線を支え、大阪での維新政治に深くかかわってきた人物です。

 同社は東証マザーズ上場直後の02年12月期から21年12月期まで20期連続して最終赤字が続いており、22年12月期第2四半期も純損失74億2500万円もの赤字を計上しました。しかも、同社が開発・実用化した医薬品は遺伝子治療薬「コラテジェン」しかなく、ワクチン実用化の実績はありません。

 こうした厳しい財務状況や乏しい実績にもかかわらず、同社のワクチン開発に国の補助金が採択されたのは、安倍政権や維新とのつながりの深さが影響したのではないかと、当初から疑われていました。

 厚生労働省は20年8月に、「ワクチン生産体制等緊急整備事業」として、アンジェス社を含め6事業者を採択し、ワクチンの生産・製剤化に補助金の支出を決めました(後に2次公募で1社追加)。これに基づき、アンジェスには厚労省と国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)から93億8030万円が交付される予定でした。

 しかし、アンジェスは今年9月7日、開発の中止を発表しました。同社によると、「21年11月に初期ワクチンでは期待通りの効果を上げることは難しいとの判断に至った」とし、さらにワクチンの濃度を上げた臨床試験を行ったものの「期待する水準には至らなかった」と説明しています。

問われる説明責任

 専門家からは、国の補助金が投入されている以上、臨床試験など分析結果の詳しいデータ開示を求める声もありますが、同社は「最終的なデータがまとまった後に厚労省やAMEDへ最終的な報告を行う」とし、臨床試験などの「詳細データの開示は予定していない」と拒否しています。

 今回のワクチン開発には、これまでに総額で約75億円の補助金が交付されています。同社は「結果の成否による補助金の扱いに変更はない」としており、補助金を返還する考えはありません。

 アンジェスの株価はワクチン開発の開始を発表した20年3月には600円台でしたが、同年6月に吉村氏らがワクチンの治験開始を公表した直後に2300円台に急騰し、この年の最高値を記録しました。まだ治験すら行われていない段階で、ぬれ手で粟(あわ)です。

 未知のウイルスに対抗するワクチン開発が難航したり、失敗することはあり得ることです。しかし、多額の補助金に支えられた事業であるからには、アンジェスはもちろん、補助金を採択した厚労省や、無責任に実現可能性を盛った吉村氏ら維新政治家にも説明責任が問われています。

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