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デザイナーのための、ラテラル思考プロトタイピング

デザイナーも「ロジカルな思考」がビジネスや定量分析の現場で必須と言われる時代になってきました。
一方で、従来のデザイナーが持つ強みを生かしてバリューを出すことも忘れてはいけません

この記事では、デザイナーが本来得意とする事が多い「ラテラル(水平)思考」を、従来のプロトタイピングプロセスを通して事業に活かす方法を解説します。

ラテラル(水平)思考とは?

ラテラル思考とは、1967年にデドワード・デボノ氏が提唱した「どんな前提条件にも支配されない自由な思考法」と言われています。

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前提条件に支配されない自由な思考法とはどういうことでしょうか?
このような問題を元に紹介されています。

Q.13個のオレンジを、3人の子供に公平に分けるには、どうしたらいいか?
引用:ずるい思考法 ゼロから始めるラテラルシンキング入門

ロジカルに思考すると
・ひとり4個ずつ分配し、残りの1個を4分割する
といった発想が生まれるかと思います。

しかし自由な頭で、前提を覆すとこのような解答も思いつくことが出来ます。

・ミキサーにかけてジュースにして分配する
・オレンジの種を植えて、たくさんの果実が実ってから同数ずつ分ける

このように、自由な子供のような発想から、「正しい答え」ではなく、「自由で多様な答え」を生み出すのがラテラル思考です。


ラテラル思考が求められる背景

近年はロジカルな思考のみではユーザーが真に価値を感じるプロダクトを生み出すことが難しくなっています。

ユーザーにとっての価値が多様になり、食べ物がない時代に食べ物を生産するような「これさえ実現できれば価値になる」という確実性の高いモノづくりが少なくなってきています。

このような時代背景では、ユーザー自身もまだ気づいていない「未知の価値」を発見することが、近年のモノづくりにおいては重要になってきました。

またウェブデザインやアプリケーションのデザインと言った分野では、仮説検証のスピードが高速化したことで、特にこの傾向が顕著になっています。

このような分野で働くデザイナーにとっては、より多様な発想からユーザーの心を揺さぶアイデアを「発見」する思考の割合が増加しているとも言えるでしょう。


ラテラル思考はデザイナーが得意とする思考法

ロゴなど新しいアイデアを考えるときに、たくさんのラフスケッチを起こした経験は無いでしょうか
このときのような視覚的発想法がラテラル思考にはとても効果的だと言われています。

言語で物事を捉えると、その言葉が持つ既存の常識に囚われがちだと言われています。
また視覚的な思考の発散は偶然的な線や形状を生み出すことが多く、思いもよらなかったアイデアを生み出すきっかけとなります。

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このように、なかなか言語化出来ない発想やイメージを、指を動かし視覚的なアイデアの発散により素早く形にしてみることが、水平に思考を広げる一つの方法です。

その過程で生まれた偶然の形から新しい発想を連想してみたり、逆に光る一部の部分を抽出し強調してみるなど、発散と収束を繰り返し様々なアイデアを新結合させていくことで新しいアイデアは生み出されます。

スケッチブックで子供が遊ぶような自由さから、ぐちゃぐちゃとした思考を広げては収束させていくようなラテラル思考のプロセスはデザイン思考にも通じるものがあるでしょう。

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ラテラルにデザインを発想してみる

アイデアを発想するときにどのようにして思考を自由にすると良いでしょうか?いくつかの切り口をお伝えします。

①全く関係のないものと組み合わせる
まったく関係ないと思われるものと組み合わせてみましょう、できるだけ遠いものの方が発想が自由になります。
オフィスを出て散歩しながら、最初に目に止まったものの良い点を抽出して既存のアイデアに結合してみましょう。

②不可欠(と思っている)ものを無くしてみる
不可欠だと無自覚に思い込んでいるものを認識することも大切です。この要素がなくなったらアイデアが成立しないだろうと思うモノをあえて挙げてみることで、それが無くなったときにどう成立させることが出来るか考えてみましょう。

③分解して、かけ直してみる
既存アイデアを因数分解すると、どんな要素をで構成されていますか?いくつかの要素に因数分解してみましょう。
分解された単語の中からひとつを選び、同じ要素をもつ別の何かと組み合わせて新しい発想を得ましょう。

④性質の一部を誇張してみる
強みや弱み、特徴的な部分を見つけて、極端に強調したり、いっそ無くして見ることでどんなアイデアになるか検討してみましょう。

⑤シチュエーションを変えてみる
使う人や、時間帯、場所、組み合わせなど、さまざまな取り巻く環境を変えた時にどうなるかという視点で発想をしてみましょう。


素早くプロトタイピングして検証する

ラテラル・プロトタイピングにおける深堀りは、ロジカルシンキングではなく、プロトタイピングによって行います。

新しい価値には前例が無いため、ひとりで思考を尽くして考えても正解はわかりません。
そのためラテラルに発想したアイデアは、素早くユーザーが触れる形に変換し、素早くフィードバックをもらうことで価値の本質に迫ることが出来ます。

ラテラル思考で生まれたアイデアは一見すると荒唐無稽で、既存の経験からは反射的に否定したくなるようなものが多いです
しかし、そんな荒唐無稽なアイデアもユーザーに触れてもらうことで、自分達が思ってもいなかった感想をもらえることがあります。

プロトタイプはユーザーが触って感想を言える形であれば、どんな形でも構いません。
・表紙やLPを想像で作ってみる
・4-8コマの漫画にしてそれを使ったときのストーリーを伝える
・架空のプレゼンテーションを作ってみる
などの方法で、素早く身近な誰かに触ってもらってフィードバックをもらってみましょう。

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ラテラル思考から生まれるアイデアは、イノベーティブな課題解決の種です。
ロジカルに順を追って考えていてもたどり着けない解決策が、ラテラル思考なら見つかる可能性があります。

ロジカルな思考も、正解を煮詰める際には重要なプロセスですが、
新しい価値を生み出す時は、ラテラル思考とプロトタイピングを行き来することでより広い仮説検証ができ、まだ見ぬ価値を生み出せる可能性が高まります。

広い世界へ飛び立とう!

ロジカルに寄りすぎると素早く仮説検証を繰り返しているようで、実のところ小さな庭から出れていない、、、、といったことがあります。

不確実性の高い地代だからこそ、新しい価値を生み出そうとするときはラテラルな思考でイノベーティブなアイデアを生み出してみましょう。

参考書籍


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