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三度目の《ステージゼロ》


先日、
一年半ぶりに受けた癌健診で大腸がんが見つかった。
進行度合いを示す《ステージ》は0から4のうち0(ゼロ)、
初期の大腸がんだった。

私は7年前と5年前にステージ0の膀胱がんを経験している。
今回は、部位は違えど3回目、
人生三度目のステージ0だ。


(最初の膀胱がんについて書いた記事)
       ↓


【三度目のステージゼロ】
大腸癌

私はこれまで、おおよそ年に一度、市で行う癌健診を受けている。
対象部位は胃、肺、大腸だ。

今回はいつもより少し遅れてしまい、前回の健診から1年半が経過していた。
かかりつけの病院で肺と胃の検査をし、同時に大腸がん検診の申し込みをした。
大腸がんの検診は、「便潜血検査」から始まる。

《便潜血検査》
大腸癌健診の入り口となる検査。
専用のキットを使い自宅で二日間にわたり便を採取し、病院へ持って行く。
検査結果は、おおよそ1ヶ月後に自宅へ郵送されてくる。
(いつもはそうだった)
しかし、
今回はーー
1ヶ月後に郵送されてきたのは胃と肺の「異常ナシ」を知らせる通知書だった。
大腸については、その前に電話が掛かってきた。

私はその電話を、外出先の騒音の中で受けた。
何度か聞き直す私に、電話口の女性は声を張り上げ、叫ぶ様に言った。
「便潜血検査が、陽性です!
なるべく、早く、来院して下さい!」
 検査キットの提出から10日目のことだった。

自宅に戻り便潜血検査について調べた。
その結果得られた情報はーー


○便潜血検査で陽性となっても、大腸がんである確率は10%以下である。
○精密検査として大腸内視鏡検査が必須である
○大腸内視鏡検査は事前に腸内を空にし、洗浄をする必要がある。
◉便潜血検査で陽性と判定されても、大腸内視鏡検査が事前の準備等を含め容易ではないため、スルーする、つまり、内視鏡検査を受けない人が少なからず居る。
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もしも「陽性」⇒癌であったなら、時の経過とともに手が付けられない状態となってしまうだろう。それでは
そもそも「大腸がん検査」を受ける意味が無いではないか
「陽性」を放置する選択肢は無い、と思った。

あとは、経験豊富な医師を探すことだ。

翌日、検診センターへ行き、医師の説明を聞いた上で、他院への紹介状を書いてもらった。
その病院において、大腸内視鏡検査の実施数は少なすぎたから。

【大腸内視鏡検査】
相鉄二俣川駅に隣接したビルに、内視鏡検査専門のクリニックがある。
開院して数年だが、インターネットの情報によれば、院長は内視鏡検査のエキスパートだ。
少なくとも、紹介元の検診センターの数十倍の場数を踏んでいる。
紹介状を持参して診察を受け、検査の日を決めた。

〔検査当日]

準備は早朝8時から始まった。
下剤と、2リッターの洗浄剤を飲む。
(これが大変)
大腸が空っぽになった事を確認し、
検査が始まる。
直前に鎮静剤を投与され、痛みや苦しさは全く感じない。
名前を呼ばれて目を覚ました時には、検査が終了していた。

〔医師からの説明]
検査が終わると、医師(院長)から説明があった。
「12ミリのポリープがあり、切除しました」
画面に映し出された私の大腸らしきものを指し示し、彼は言った
「たぶん大丈夫と思います」

「14日後には組織検査の結果が出ていますから、聞きに来てください」

とてもアッサリしている。

私は胸を撫で下ろし、診察室を出た。
ああ、良かった、
今回は良くない予感がしていたのだがどうやら杞憂に終わったようだーー
足取りも軽く家路についた。

〔組織検査]
再びクリニックを訪れたのは、内視鏡検査の日から17日後だった。
診察室には、院長とは別の、少し年長の医師が座っていた。
彼は、私が椅子に腰掛けると同時に言った。
「やっぱりね、これは癌でしたね」
「えっ?」
耳を疑った。
誰か、別の人と間違えているのでは?と思う。
しかし、
目の前に広げられた写真には、私の名前がある。
「たぶん大丈夫」はどういう意味だったのか、院長はどこに居るのか?
混乱し、言葉を失っていると、奥から院長が姿を現した。
「ああ、3か月後にもう一度検査をしますから」ゴム手袋を外しながらそう言った。

「大丈夫」は、「癌でも大丈夫」の意味だったのかもしれない。
「心配は要りませんか?」と尋ねると
「心配は要りません」医師は即答した。「癌は根こそぎ取ってますから」
「初期、ですか?」
「初期ですね。少し大きいですが。ステージゼロですね」
非常にアッサリとしている。まるでニキビの話をしているかのよう。
ーー話は終わりーーそんな風に彼は何度か頷き、私は診察室を出た。

エレベーターに乗ると、自分でもびっくりする様な、深い溜め息が出た。
何はともあれ、助かったようだ。
3ヶ月後の検査は気が重いけれど
命には代えられない。


病は人を選ばず

まるで珍道中のような私の「ゼロ経験」が、いつか誰かの「ゼロ」に繋がることを願いつつーー