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推し活翻訳5冊目。Under Rose-Tainted Skies、勝手に邦題「あなたと空を見上げたら」

原題:Under Rose-Tainted Skies
原作者:Louise Gornall
勝手に邦題:あなたと空を見上げたら

概要と感想

ノラは17歳。13歳のときに発症した広場恐怖症と強迫性障害のために、この4年間、自宅を出ることもままならない。今日もそう。ドクター・リーヴィスのカウンセリングを受けるために、母に励まされ、引きずられるようにしてやっとのことで車に乗ったけれど、結局、診察室まで行くことはできなかった。
 
ある日、ノラの面倒を見ながら生活を支える母が、出張に出ることになる。心配をかけまいと、「家の中にいれば平気」とうそぶくノラ。けれど、現実には、宅配業者が玄関ポーチにおいて行った食料品を取りに出ることもできない。玄関の中からデッキブラシで荷物を引き寄せようと悪戦苦闘するノラに、隣に越してきた高校生のルークが手を差し伸べる。
 
病気を隠し、ルークとなんとか会話らしきものをかわしたノラだったが、直後に発作に見舞われ、ベッドから起き上がれなくなってしまう。そんななか、母が旅先で事故に遭い、帰宅が遅れるという連絡が入る。ドクターが様子を見に来てくれるものの、ノラはパニックの嵐に巻き込まれ、極度の緊張を解くために自傷行為にはしる。
 
一方、ルークは、なにかとノラに近づいてくる。引っ越してきた日に、窓辺の小鳥を追い払うノラの姿を見かけ、自分に向かって手を振ったのだと勘違いしていたのだ。後にわかるのだが、診察のために外出するノラを見かけたルークは、ノラがメンタルイルネスを患っていることに気づいている。そのため、時間をかけて距離を縮めようとするものの、ノラのほうは、次々に起こる未体験の出来事やルークに対する自分の気持ちに動揺し、いざというときになるとパニックの波に飲み込まれてしまう。
 
おたがい好意を持ちながらも、目の前には、相手に触れられないという高い壁がある。それでも二人は時間をかけ、メールを交わしたり、おしゃべりを楽しんだり、ゆっくりと関係を築いていく。けれどついに、ノラが最も恐れ、どうしても避けたかったことが起こる。ルークに発作を起こした姿を見られてしまったのだ。
 
もう取り返しがつかないと思ったノラは、ルークには「ふつうの子」がふさわしいと一方的に関係を断つ。おりしも、ルークの通う高校のクイーンがルークに積極的にアタックをはじめ、ノラの危うい恋心はますます自分を傷つける方向へと向かってしまう。
 
ノラの恋の行方はどうなるのか、つらい病からの出口は見つかるのか……。

              ☆  ★  ☆
 
今回は、メンタルイルネスを抱える女の子が主人公のYA作品。パニック症状や心理状態などを、筆者が自身の体験をもとに赤裸々に描いていて、胸が苦しくなる場面もありますが、でも、この作品、重さを感じさせないんです。それはきっと、ちょっぴり甘く切なく、ときにユーモラスで、涙が出るほど笑えるラブストーリーであり、そして、病に向き合うノラの成長の物語となっているから。
 
ラスト近くに起こる事件は、ターミネーター(古い!)という映画で、サラ・コナーが逃げながら敵をプレス機におびき寄せるシーンなみに心臓がバクバクしますし、かっこよくて優しくて辛抱強いルークみたいな男の子が、実は深い悩みを抱えているとか、読みどころがいっぱい。うーん、中高生のとき読みたかった……。
 
発表当時に映画化の話があったのですが、立ち消えになったのかも。わたしの脳内では、ノラとルークの出会いのシーンは出来上がっているのですが。

タイトルに合わせたピンク色がかわいい装丁
わたしの故郷も空がきれいなのでちょっとご紹介

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