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建築プロジェクトの流れ(前編)

こんにちは。清水オサムです。
これまで、多くの建物を、建築・改修するプロジェクトを担当してきました。
今回は建築プロジェクトの流れ、プロジェクトフローについて書いてみようと思います。

建物の建築は、カスタムメイドで同じものはありません。
ただし、建築プロジェクトの流れは、規模の大小・用途・新築・改修を問わず、ベースにあるもの、たどるプロセスは共通です。
オフィスビルでも、工場でも、空き家再生のリノベでも、基本的なフローは一緒。
ところが、こういったプロジェクトの流れについて、とくに事業者目線で書かれているものをあまり見かけることがないです。

オフィスも工場も古民家も、新築もリノベも、基本的なフローはおなじです

不動産投資や事業用に、これまで手掛けてきた建物建築や改修工事を行ううえでしてきたこと、気をつけてきたことを整理していきます。
企業や個人事業者の方が、建設系のプロジェクトを推進しようと思ったとき、工事が完了しオペレーションをすすめるまで、何から考え、何をやったらよいのか、参考にしていただければと思います。


1.プロジェクトフロー

建築プロジェクトのフローは、大きく

① 基本構想
② 基本計画
③ 調達
④ 設計
⑤ 施工
⑥ 運用

の6つのフェーズで進められます。

プロジェクトツリー2
建築プロジェクトのツリー

各フェーズを木にたとえてみました。

① 基本構想は、木の根っこ・木をささえる土台
② 基本計画は、木の幹
③ 調達で、方法・ツール・パートナーを選び
④ 設計で、枝葉を整え
⑤ 施工で、花を咲かせ
⑥ 運用で、果実を得る

それでは、それぞれのパートで何を行うのか説明しますね。

① 基本構想

基本構想は、木の根っこ・木をささえる土台

まずは基本構想です。
プロジェクトの背景や目的から、コンセプト・目標・事業内容・規模・時期・概算コストのイメージ、事業の構想をまとめ上げるパートです。

「なぜこのプロジェクトを行うのか?」「何のためのプロジェクトか?」
企業のビジョンや経営計画、ご自身のパーパスから、プロジェクトの背景や目的を導き出していきます。

さらにもう一歩踏み込んで、
「どんなプロジェクトにしたいのか?」「いつそこで何をやるのか?」
例えば、
オフィスビルなら、どれくらいの床をいくらで貸すのか?
工場なら、何をいつどのくらい作るのか?
といった目標を定め、事業計画をまとめていきます。

建築プロジェクトは長い時間と多くの人が関わります。
環境や条件の変化により本来の目的を見失わないようにするための極めて重要なフェーズ。
ここでしっかりとした根を張り、土台を構築することが肝要です。

<しっかり定めるもの>
・背景
・目的
・目標・コンセプト
・事業計画
<ざっくり>
・用途・規模
・ボリュームスタディ
・スケジュール
・事業コスト
・収支シミュレーション
基本構想フェーズでのアウトプットイメージ                   


② 基本計画

基本計画は木の幹

基本計画では、地域、マーケットや立地、土地や建物・インフラ、法規制等、ハード・ソフトの状況調査を行います。
プランニングの条件を押さえ、基本構想で定めたコンセプト・事業計画が実現可能なのか、具体的なプランに落とし込んでいきます。
建物規模、プラン、構造、仕様、発注スキーム、工程、コスト、運用方法などを検討していきます。
事業の実現性について検証する、プロジェクトの幹となるフェーズです。ここで要求条件・要求仕様を整理しつつ、リスクや制約をしっかり把握しておきたいです。

Quality:品質
Cost:コスト
Delivery:スケジュール
プロジェクトの評価基準「Q・C・D」             

要求条件のうち、Q(Quality:品質)・C(Cost:コスト)・D(Delivery:スケジュール)は、特に重要です。
この後の設計・施工・運用の各フェーズ実行時のプロジェクト評価の基準となるものなので慎重に設定しましょう。
なお、相関する事業収支シミュレーションは、1パターンだけでなく、標準、悲観、楽観の3つのシナリオを用意し、あらかじめ対応策を講じておくことで、様々な開発リスクに対応することが可能となります。

・現況調査
・施設計画
・調達計画(発注スキーム)
<基本計画よりしっかり>
・マスタースケジュール
・概算建設コスト
・事業収支シミュレーション(標準・悲観・楽観シナリオ)
・(上をまとめた)基本計画書
基本計画フェーズでのアウトプットイメージ           


③ 調達 ~設計・施工者選定~

調達で、方法・ツール・パートナーを選び

つづいて、調達です。
調査、設計、施工を実行する専門家を選定
し発注します。
各種調査業務や、基本構想のコンセプト・基本計画のボリュームスタディ・制約など、事業の要求条件をクリアし、計画を具現化する仕組みや方法を検討し、パートナーを選ぶフェーズです。
調達のタイミングは、発注スキーム(対象・発注方式・選定方法)により異なります。

建築系プロジェクトは専門業務の集合体によって推進されますので、信頼できる企業を選んでおきたいです。
建築をなりわいとしない事業者にとって、圧倒的に技術力の高い企業との取引は情報的に不利な立場となってしまうからです。
最近は、第三者の視点でプロジェクトを俯瞰できるよう、CM会社やPM会社を採用する事例も増えています。
計画やコストの適正性を確認するために有用な手立てと考えます。

■対象
 ・調査会社・設計者・施工者・資材/設備…
 ・CM・PM会社
■発注方式
 ・設計・施工(一括・分離)
 ・施工(一括・分離・コストオン、ランプサム・コストプラスフィー…)
■選定方法
 ・入札・プロポーザル・特命…
■選定のための図書
 ・基本計画書・各種選定要項書等
調達対象・内容のイメージ                   

2.前編まとめ

すみません。
だいぶ長文になっていますので、今回はここまでにしておきます。
本当は、基本構想から運用まで一気に書き上げようと思っていたのですが、記入していくうえでいろいろな気づきが出てきて、長くなってしまいました。
今回分をまとめます。

① 基本構想 : 木の根っこ・木をささえる土台
プロジェクトの背景や目的から、コンセプト・目標・事業内容・規模・時期・概算コストのイメージ、事業の構想をまとめ上げる
② 基本計画 : 木の幹
ハード・ソフトの状況調査、規模、プラン、構造、仕様、発注スキーム、工程、コスト、運用方法などを検討する
③ 調達 : 方法・ツール・パートナーを選ぶ
計画を具現化する仕組みや方法を検討し、パートナーを選ぶ

残りの3つのフェーズ、設計、施工、運用は後編に記載します。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。

パラリンピックが終了しました。
この1か月で世界はますます混沌としてしまいました。
個人でできることは少ないけれど、誰もが強みを発揮でき、誰にも優しい、そんな社会、それが普通の生活を、建築・不動産を通じて模索していきます。

清水オサム_New Normal Life for 100


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