【神】Hades 2 @ 2024-05-07

買わない理由がないしプレイしない理由がない。このゲームを否定する方法など私には思いつかない。そして安心してほしい、Hades 2の早期アクセスは、世間に溢れる詐欺師のような早期アクセスでは断じて無い。現段階でも本作は完成している。ただ正式リリースを迎えた暁には、完成を超えた完成に至るだけだ。

定価3400円。仮にその倍だったとしても買う価値がある。

カエルちゃんかわゆ~


長所

  • シリーズ作品を作るとき、少なくない開発者たちがミスを犯す。「前作よりもキレイなグラフィックにしなければならない!」だとか「前作とは全然違った新しいシステムを導入しなければならない!」だとか「時代はライブサービスゲームだから、ゲーム開始時にプレイステーションネットワークアカウントを作らせてログインさせてEULAにサインさせて毎日ログインボーナスを配らなければならない!」とかそういうことを堂々と始め、結果として電子産業廃棄物を大量生産している。

  • だがSupergiantは余計なことを何もしなかった。コアのゲーム性も据え置いた、グラフィックも据え置いた、パフォーマンスも据え置いた、値段も据え置いた、ただ我々が求めていた新しいコンテンツだけを与えてくれた。だから成功した。実に当たり前のことだ。

  • とはいえ、前作とすべてが同じでは面白みに欠ける。真に優れた続編とはたとえ九割九分が同じであったとしても、最も大事な一分には思い切った変更を加えてくるものである。Hades 2も例外ではない。思い切って変えてきたのはCastだ。前作HadesのCastはよく分からん石ころを相手に投げつけ、倒した敵からCastを回収する攻撃だったのだが、このシステムだけは残念ながら上手く機能しているとは言い難い状態であった。そこで本作Hades 2では広範囲の敵の足を止める呪文を足元に放つという形に変更となっており、これが大変うまく機能している。そしてもう一つ、マナを消費して行うオメガ攻撃(貯め攻撃)の概念も素晴らしくよくできている。マナを消費するにふさわしい強さのある攻撃だが、マナを「※戦闘中に」回復する手段はある程度限られており、リソース管理の妙を楽しむことができる。

    • ※戦闘が終了すれば自動的にマナが全回復する。実にうまいバランスだ。マナ最大量が十分ならば回復手段なんて用意しないで好きなだけ使いまくることもできる。

  • 最後にもう一つ。世間の無能開発者がよくやる悪習として、作りかけの残飯みたいなゲームを早期アクセスなどと主張してストアに並べるというものがある。ここ数年はあまりにもその傾向が顕著であり、それ故「早期アクセス」と銘打たれたゲームを買うのは良くて博打、悪くて愚鈍な行為であるとみなされるようになってしまった。皆様の中にも「早期アクセスだからHades 2にはまだ手を出さないでおこう」とお考えの方も少なからずいらっしゃるはずだ。だが安心してほしい、Supergiantは決して未完成のゲームを我々の前に差し出したりはしなかった。"Hades II in Early Access already has more environments, foes, and fully-voiced characters than the full version of the original Hades game" と彼らが豪語する通り、実際に、今のHades 2には初代Hades全体と同等、あるいはそれ以上のコンテンツが詰まっているのだ。今この瞬間に買って遊んだところで完成版のゲームと何一つ遜色はないが、その上で半年後にはさらなるコンテンツ追加が待っているのだ。

相変わらずキャラがいい
道中の遭遇にはこれまでになかった新要素もある。例えばこれはドレスと呼ばれる装束を貰えるイベントだが、これにより、一定値のアーマーが壊れるまでの間特定の恩恵を受ける事ができる。無被弾で過ごせれば最高だし、被弾したとしても最低限アーマーとしては役に立つ。


短所

  • 発売時期が悪い。GW明けで仕事なんかやる気が微塵も起きない時期に、突然にリリースするのは辞めていただきたい。これは我々日本国民から労働能力を奪い去るべく悪の組織に仕組まれた罠に違いない。

  • 一応、なんとか、辛うじてゲームに対する不満を探すことができたので書き残しておくが、ゲームバランスについてだ。例によって強い神と弱い神の差がどうにもひどく感じる。といってもまだ3時間ぐらいしか遊べておらず、断言はできないところだが。神のパワーバランスについては一旦目を瞑るとしても、「ショットガン可能なMultiple Projectileが5発」「Return ProjectileとPierce付きで」「しかも戻りは+50% MORE補正付き」とかいう考えうる限り絶対にバランスが取れるわけがない超絶ぶっ壊れOP投射物攻撃が平然とゲーム内に存在するのはいただけない。事実、つい先程、この投射攻撃無限に振り回しているだけで、いとも容易く第三階層まで突破できてしまった。他の装備もBoonも一切何も欲しくなくなるぐらいには壊れていて、正直これでいいのか不安になってしまう。それもそのはず、5発の投射物がショットガンするから威力は5倍、貫通して戻ってきてもう1回ヒットするから更に2倍、そして背面から当たるときは1.5倍になるから、投射物の威力が通常の15倍になるんだよな。もちろんそこにBoonの強化倍率が乗るわけ。こんなイカれた存在のバランスが正常に取れると思うか?
     昔話をするとだな、似た半年だか1年ぐらい前に似たような存在があったんだよ、Path of Exileとか言う過酷なゲームに。結果はどうなったかって?全人類がこのVengeant Cascadeとかいう壊れたパッシブスキルを使って弓を撃つビルドを始めちまってな。それぐらい壊れていたんだ。つまり投射物はショットガンできてはならない、投射物を安易に貫通させてReturnさせてはならない、という教訓なんだが、ゲーム開発者というのはどうにも全く同じバランス調整のミスを同じように繰り返すものらしい。

あー、もう一つ、戦闘中にスクショを撮ってる暇が無いぐらい忙しいせいで、バエるスクショを記事に載せることができない・・・ってのも重大な欠点に入れておこうかな?


総括。本作Hades 2、そして開発元のSupergiantは、スクウェアの最も輝かしかった黄金時代を私に思い起こさせてくれる。当時の彼らは何を作らせても神ゲーしか出せなかった。もちろんそれらの中にはバランスが良くなかったものもあるし、そこそこ深刻なバグが残されていたものもあるが、それでもつまらないゲーム、価格にそぐわないゲームは一つとしてなかったのだ。本作Hades 2にも小さな不満は確かにある、強い選択肢と弱い選択肢の差があまりにも大きすぎるとか、結局やることは前作Hadesと変わっていないとか、そういう批判をすることもできる。だが「圧倒的な面白さのゲームを文句のつけようもない低価格買い切り余計な心配一切なしで提供してくれる」という、ゲームにとって最も大事な根本原理は、徹頭徹尾守り抜かれているのだ。