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シャフタール・ドネツクは「シャフチョール・ドネツク」と呼ぶ?

こんにちわ。二進法の人です。
ウクライナ関連の記事を小出しで出しています。

今回はウクライナのややこしい言語事情について触れていきます。

ウクライナは多言語国家

ウクライナの公用語は、現在ではウクライナ語のみとなっています。しかし、東部のドンバス地方やクリミア半島などは、約80%の住民がロシア語話者であるように、地域ごとにバラツキが見られます。

欧州では2番目に大きな国土を有するウクライナですが、現在の形になったのは、20世紀にソビエト連邦の構成国の「ウクライナ・ソビエト社会主義共和国」が元になっています。それ以前はロシア、ポーランド、ハンガリーなどの諸外国の領土になったり、タタール人の国家が存在するなど、長い歴史が影響したことから、ウクライナは多民族であり、多言語を使われています。

国語はウクライナ語のみですが、元々は多民族が住むことから、実際はロシア語、ベラルーシ語、ポーランド語、クリミア・タタール語、ブルガリア語、イディッシュ語、ルーマニア語、アルメニア語、ガガウズ語、現代ギリシャ語、ルシン語など、欧州屈指の多言語国家です。

大半はウクライナ語とロシア語で二分される

多民族国家のウクライナですが、ソ連時代の少数民族の強制移住やロシア人の流入によるロシア語の拡大、1991年のウクライナ独立以後のウクライナ語の国語化により、ウクライナ全土では9割以上はウクライナ語かロシア語のどちらかを使用しています。

ウクライナ語話使用地域

ロシア語話者地域

※共にWikipediaから引用

ソ連時代にロシア語化が進まなかった西部のリヴィウ州、ヴォルィーニ州、テルノーピリ州、イヴァーノ=フランキーウシク州はウクライナ語が圧倒的に優勢であり、ロシア語は日常生活でも話されることは稀です。その地域で迂闊に「ズドラーストヴィチェ(こんにちわ)」「スパシーバ(ありがとう)」など使うと、冷たい顔されてしまいます。

逆に隣国ロシアとの関わりが深いドネツィク州、ルハンシク州などはロシア語が優勢で、ウクライナ語を使えない人も多くいます。またウクライナとしての歴史が浅い南西部のオデッサ州もロシア語が優勢。首都キエフ、中部のドニプロペトロウシク州、ハルキウ州なども日常生活でロシア語を話す人口も多く、2006年の統計では約半数がロシア語を話すと言われています。

ただ、政府機関がウクライナ語のみを使用し、学校教育でもウクライナ語で授業を行っていることから、ロシア語話者も多かったキエフやドニプロペトロウシクなどは、近年はウクライナ語話者が増えているようです。

ドネツクでは「シャフチョール」と呼ぶ

ウクライナ・プレミアリーグは、首都キエフをホームとする「ディナモ・キエフ」と、東部ドネツィク州をホームとする「シャフタール・ドネツク」が二強体制を確立しており、ウクライナ・プレミアリーグ初年度にタフリヤ・シンフェロポリが優勝した以外は、ディナモかシャフタールのどちらかが優勝しています。

そのシャフタール・ドネツク。ホームがロシア語話者が大半を占めるドネツィクです。

「シャフタール(Шахтар)」とはウクライナ語で、「鉱夫」「炭鉱労働者」を意味しています。これがロシア語になると「シャフチョール(Шахтёр)」になるため、現地では「シャフチョール」と呼ばれるのが一般的です。

また本拠地のドネツクは、ウクライナ語では「ドネツィク(Донецьк)」であり、一般的に呼ばれる「ドネツク(Донецк)」はロシア語になります。

つまり、「シャフタール・ドネツク」では、「ウクライナ語+ロシア語」になってしまいます。

ウクライナ語の表記に従うのであれば「シャフタール・ドネツィク」
現地のロシア語に従うのであれば「シャフチョール・ドネツク」

それが「シャフタール・ドネツク」では両方の言語を使うことになります。いつの間にそうなったのか分かりませんが、混ぜこぜになってしまいました。

「シャフチョール・ドネツク」と呼んでしまったら、ドンバス紛争にて親露側を支持することに捉えられがちでややこしくなりますが、それが問題なら「シャフタール・ドネツィク」と呼ぶほうがまだ分かる気はするものです。

ディナモ・キエフは「ディナモ・キーウ」?

そして、シャフタール・ドネツクの最大のライバルである「ディナモ・キエフ」ですが、こちらも気になるものです。

「Динамо」はロシア語でもウクライナ語でも同じで「動的」「動くこと」という意味で、主にスポーツクラブでよく使用されます。ディナモ・モスクワ、ディナモ・ブカレスト、ディナモ・ザグレブ、ディナモ・トビリシ、ディナモ・ミンスクなどなど…。

しかし、キエフ(Київ)はロシア語の呼び名であり、ウクライナ語では「キーウ(Київ)」と言います。

これも現地の言葉に従うのであれば、「ディナモ・キーウ」になりますね。


この他、チョルノモーレツ・オデーサ(露:チェルノモーレツ・アジェーサ)、ゾリャ・ルハーンシク(露:ザリャ・ルガンスク)、メタリスト1925・ハルキウ(露:メタリスト1925・ハリコフ)など、ウクライナ語とロシア語では呼び名が異なります。時間があるときにでも紹介したいと思います。

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