織原 一然(かずしか)_マクロ経済学考察ノート

政治経済の特にマクロ経済学について語ります。 自学自習ですがぜひお読みいただければ幸い…

織原 一然(かずしか)_マクロ経済学考察ノート

政治経済の特にマクロ経済学について語ります。 自学自習ですがぜひお読みいただければ幸いです。

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最近の記事

経済学の前に―倫理と道徳①

アダム・スミスは元来、経済学者ではなく哲学者であり、国富論の前に出版されていたのは「道徳感情論」という倫理哲学書だというのは意外と知られていません。 そう、経済学には前提として「倫理学」が必要になるのです。 さて、この倫理と似た言葉で「道徳」という言葉があります。 皆さん、倫理と道徳の違いをご存じですか? 私も良く分かってはいません。実は何度も興味を持って調べるのですが、いつの間にか頭から抜け落ちるのですよね。倫理と道徳が似ているからなのでしょうか? そう、倫理と道徳は似て

    • 存在を無視すると起こる弊害―経済学論考 1―

      この間、面白い現象に気づきました。ある理論を無視をすると、寧ろその無視をした論が際立ち、無視しているのに論として確立してしまう、という現象です。 例えば、ある人物Aが「ミクロ経済は事実上存在しない」と言ったとしましょう。 「世の中の貨幣はマクロ経済の分野で成立した信用貨幣論によって成り立っている。よって、全てのミクロ経済的現象はマクロ経済からの産物であり、この世には本来ミクロ経済学は存在しないと言って良い」 一見すると一理あります。 しかしこれを認めると大変なことが起こ

      • 2つインフレの正確な理解と対策

        ■前置き 巷を騒がせるインフレですが、コストプッシュインフレ(以下CPインフレ)とディマンドプルインフレ(以下DPインフレ)を混同する、或いは簡単に「どちらもインフレには違いない」と言って区別しなかったり、と千差万別な反応がなされています。 ついこの間、我が国はデフレだったのですが、デフレには警戒感が無く30年以上放置したのに、「インフレにはこれほど一喜一憂するのか」と個人的には滑稽に感じてしまいますね。 さて、CPインフレとDPインフレを混同するとどのような判断を下

        • 閑話―「仲裁」と民主主義の思想

          ■仲裁とは 仲裁とは、 「当事者間の合意に基づき、第三者が紛争解決を行う」ことを指します。 逆に言えば、「当事者間の合意」がなければ、第三者に仲裁権限は与えられません。 無断で仲裁することは不法行為であり、状況を悪化させることは明らかです。 しかし、仲裁が成功すれば、仲裁者は大きな権力を手に入れることができます。そのため、「仲裁役を買って出る」人は意外と多いです。 私的に、この仲裁役を買って出てくるタイプは、基本的に「状況を悪化させる存在」と見て良いというのが私の考えで

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        • 内生変数と外生変数について
          5本
        • 豆知識
          9本
        • マガジン「格差と社会福祉」
          4本
        • マガジン「商品貨幣論」
          18本
        • 目次
          4本
        • マガジン「三点監視の応用」
          9本

        記事

          ミクロ経済学=価値史観

          これまで、ミクロ経済学は価値の移動・交換を観察する「物質的価値論学」と述べました。 価値は貨幣価値へと交換することができるわけですが、歴史を紐解くと、その貨幣化できる価値は時代ごとにその重心が変わってきているのが分かります。 今回は、歴史的場面ごとの「貨幣化できる価値説」について説明します。 ■重商主義(コルベティズム) フランス革命より前、ルイ14世のフランスにおいてフランスは当時の世界最高の経済大国となっていました。その時行われていた政策は、コルベール財務総監の下行

          ミクロ経済学=等価交換はあり得ない―金利の思想―

          ■ミクロ経済学の常識である等価交換は実は間違いである さて、前回までの説明を前置くと、「交換とは『同等の価値』を有する同士が交換されるのでは?」と多くの人が考えるでしょう。 生活必需品ではないことを前提に、単純な物々交換で説明しますと、 Aが所有する商品aは、 Bが所有する等価値の商品bと交換され、 商品aは移動してBが所有することとなり、 商品bは移動してAが所有することとなります。 (移動には「時間」の概念も伴います。時間とエネルギーを消費して「移動」するのですが

          ミクロ経済学=等価交換はあり得ない―金利の思想―

          物質的な商品・サービス・貨幣に共通する「価値」

          私たちは「商品」や「サービス」に対して貨幣を支払うことを選びます。これは、商品やサービスが私たちにとって何らかの「価値」を持つからです。 この価値は、私たちが商品やサービスを欲しいと思う気持ちを引き起こします。そして、その価値があるものを手に入れるためには、貨幣を失っても良いと感じます。 つまり、「貨幣」にも「商品」と「サービス」を交換しても構わないという「価値」があります。 ■価値の特性とミクロ経済学 価値は全て「価値ある別のものを介在して交換することも可能」という特

          物質的な商品・サービス・貨幣に共通する「価値」

          ミクロ経済学=物質的経済学とは

          ■それは観察できる物質であることが望ましい ミクロ経済学とは、経済主体が取引や交換を行い、価値を交換する関係を分析する学問です。 具体的には、あなたがお店で買物をするという状況を考えてみてください。あなたは貨幣という価値を払い、商品という価値を購入する。ミクロ経済学は、このときの貨幣や商品の価値の流れや、その価値の市場における偏りを分析する学問です。 上記を分析する、という事は、つまり ミクロ経済学は「極めて物質的な視点を重視」するという事が分かるかるかと思います。

          経世済民・イデオロギー

          まだ私にとって勉強途中の分野ですが、つい最近、その件に関してポストをしたところ、個人的に「結構反応があったな」と驚くものがありました。 それがこれです。 こんな経済学、というニッチなポストに146いいねが付いたら、そりゃあ驚くしとても嬉しいです。 ありがとうございます。 さて、ポストにも書いたことですが、改めて述べますとそれは 「資本主義と共産主義は」共に「商品貨幣論」なのだよ、ということです。 資本主義の真逆が共産主義、というのは多くの人が持っている共通見解です。世界

          国民は倫理を求めよ!

          あけましておめでとうございます。 本年も宜しくお願いいたします。 数時間前、石川県で震度7以上の大きな地震と津波が発生しました。 石川県並びに、周辺の被災者の皆様に謹んでお見舞い申し上げます。 さて、経済学者ケインズは、師アルフレッド・マーシャルの「経済騎士道」という倫理学的気質を批判していました。 大変ざっくりと、詳細は不正確ながらマーシャルの経済騎士道を説明しますと次の通りとなります。 市場は自由で構わない ただし、その自由な市場で活動するのは「経済騎士道」とい

          帰結主義か?義務論か?―甘ったれた民主主義のガキ―

          金銭的幸福を第一優先として唱えると、行き着くのが 「論理を優先させるが故に醜悪になる精神」です。 例えば、 とある犯罪を容認しそうな、 ですがまだ犯罪を起こしていない人がおり、 その人に対して不穏さは感じるが、 法的にはまだ不法者ではないAという人物がいたとしましょう。 とある親子がいて、そのAに愛すべき我が子を預けることが提案された時、その人はまだ法を犯していないのだから善人であるという前提に立って一切の疑いの余地なく、その人に我が子を預けるべきか? それとも、Aの不

          帰結主義か?義務論か?―甘ったれた民主主義のガキ―

          自称道徳者の傲慢と貨幣プール論

          人間には欲望があり、それを叶えることを目的とし、そして叶えられたらその状態を幸福と考えます。 ですので私は、経済学における経世済民の実現の根源的正当性(倫理的な基準)を「人間の最低限の欲望の充足」に置いて考えています。 人間の動物的本能の三大欲求はほぼ全世界の人間当てはまる「幸福の最大ベース」に当たるものであり、この考えに地理的要件をプラスすることで「国家」という集団組織が形成される、と考えています。 これは、イギリスの古典派経済学の人物で功利主義の大成者、「最大多数の最大

          実はまだ貨幣のプールの中にいる人たち

          実に厄介極まりない、貨幣を物質と見做し、その物質がAのプールからBのプールへと移動することで価値が移動する、という貨幣プール論(商品貨幣論)ですが、事の始まりはアダム・スミスどころではありません。 実はこの貨幣プール論は 古代ギリシアの哲学者アリストテレスの時代、つまり紀元前4世紀から、一貫してこの貨幣プール論で貨幣を考えることがなされてきました。 アリストテレスは一貫して貨幣は交換の手段としてのみ容認され、利益を得る手段としては、つまり投資という手段自体は否定しています

          実はまだ貨幣のプールの中にいる人たち

          CPインフレとDPインフレとバイイングパワー(購買力)

          コストプッシュインフレ(CPインフレ)とディマンドプルインフレ(DPインフレ)の区別は バイイングパワー(購買力)を中心に考えると分かり易いです。 というか、経世済民を主題とする以上、これをまず中心にして考えるべきなのです。 購買力、というのは需要者側が、可処分所得を充分に持っており、その所得を用いて、多くの商品・サービスを購入することができる能力のことです。 さて、それではまず、DPインフレをある図表で示してゆきたいと思います。 物価が上がるのに対して、需要者の所得

          CPインフレとDPインフレとバイイングパワー(購買力)

          【動画】国債の付利と日銀当座預金の付利について――資料1:国債に付利あり 日銀当座預金に付利なし の場合――

          動画を作成しました。 内容は題名の通り、 国債の付利と日銀当座預金の付利について ―資料1:国債に付利あり 日銀当座預金に付利なし の場合― という内容になります。 https://www.nicovideo.jp/watch/sm42012485 ←ニコニコはこちら なぜこの動画を作ったのか、と言いますと、 実は 日銀当座預金への付利(正確には超過準備への金利の導入)は発行元の日銀(中央銀行)の収入になる、 と私は思っていたのですが、 ある人から「そうではない」と言

          【動画】国債の付利と日銀当座預金の付利について――資料1:国債に付利あり 日銀当座預金に付利なし の場合――

          2つの外生的パワー ―内生変数と外生変数5―

          商売をして経済成長をするのは構わない、だが、犯罪という商売を成り立たせるわけにはいかない。 そこで、膨張する内生的パワー抑える役割として 外生的パワー が存在します。 この外生的パワーには大きく分けて2種類があります。 一つは法律・制度・行政執行です。 これは法律により、その犯罪が行われるのを防ぎ、その犯罪が行われたら取り締まること、という「直接的にパン生地Aの形を整える」作業です。 例えば、生地Aは上から見るとまん丸ですが、これを理想の形状である四角形に整えると

          2つの外生的パワー ―内生変数と外生変数5―