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450円で接客の神に会いに行く

東京大学に通う大学院生です。

最寄り駅の丸ノ内線 本郷三丁目駅から大学に向かう道中に赤い帽子をかぶったおじちゃんをよく見かけます。

登校時にいつも見かけるので、何をしている人なのかと疑問に思っていましたが、よくよく見てみるとBIGISSUEの販売をしている方でした。

BIGISSUEって何?って方のために説明すると、様々な事情で働けない方々に雑誌販売の機会を提供しているサービスです。
定価450円のうち、230円が販売員の収入になります。最初の10冊は無料で提供され、その売り上げ(4,500円)を元手に、以降は1冊220円で仕入れて販売する仕組みになっています。

出典:THE BIG ISSUE JAPAN
https://www.bigissue.jp/about/system/

BIGISSUEの活動理念に共感しているのと、雑誌自体がコンテンツとしておもしろいのもあって、見かけたら購入するようにしていました。

いつものようにBIGISSUEを購入しようとして、赤い帽子のおじちゃんに「一冊ください」と話しかけました。

するとおじちゃんは落ち着いた声と柔和な笑顔で「一冊450円です」と返答し、僕はBIGISSUEを手にしました。

この時、妙に胸騒ぎがしました。
このおじちゃんの接客すごい気持ちいい!

大した会話はしていないのに、こんなに印象に残る接客があるのかと驚きました。声のトーン、会話の間、表情などすべて完璧でした。

一冊雑誌を買っただけなのに、ここまで感動した接客体験をしたのは初めてです。

購入後に僕がその場から立ち去ろうとした時に、おじさんは帽子をわざわざ取り、「ありがとうございます。いってらっしゃい!」と声までかけてくれました。

購入時も購入後も気持ちよすぎる接客体験。

興奮冷めやらぬまま大学に着き、その日は授業には1mmも集中せず、なんであんなに気持ち良い接客ができるのかだけを考えていました。


その日以降、登校する日は必ず赤い帽子のおじちゃんのところに行き、BIGISSUEを買うようになりました。BIGISSUEは2週間に1回新刊が出るのに対し、僕は週2でBIGISSUEを買っていました。

何回受けても気持ち良い接客。
声よし、トーンよし、間よし、表情よし。

いまとなっては、450円払って接客の神にお参りに行くような感覚で登校しています。

赤い帽子のおじちゃんの接客を受けるたびに学びがあります。
お客さんと接した時の目線、声のトーン、言葉遣いなど、上げればきりがないですが、毎回気づきを与えてくれます。

高いお金を払えば、良い接客が受けられるかというとそうではないと思います。高級なホテルやレストランにいけばある程度の接客は受けられますが、感動するほどの接客を受けれることはめったにありません。

この赤い帽子を被った接客の神に巡り会えたことに感謝をして、今日も学校に行ってきます。


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