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書店員日記 「この本、最近出ましたか?」

先日、お客さんとこんな会話がありました。
 
「これ私買ったかどうかわからなくなっちゃって。最近出た本かしら?」
「えーと、これは……最近じゃないですね」
「そうなの。いつ出たの?」
「えっと、今年の2月に発売されていますから、もう3か月くらい前ですね」
「あら、今年出た本なのね。ならまだ買ってないわ」

 
書店の商品のサイクルはとても速いです。
主な文庫本だけを見ても、月の前半は文春文庫、光文社文庫、幻冬舎文庫、双葉文庫。
中旬で講談社文庫、集英社文庫。
後半は角川文庫、新潮文庫。
ハヤカワ文庫や創元推理文庫は月に1回ではないし、大手出版社の合間を縫って、実業之日本社文庫、祥伝社文庫、徳間文庫、スターツ文庫、ちくま文庫、岩波文庫など当店ではそれほど配本が多くない出版社の文庫も入荷してきます。
レーベルによっては30点ちかくが一度に発売されますし(たぶん一番点数が多いのはKADOKAWAです)、棚も平台もどんどん入れ替わっていきます。
ですから、書店員にとって、「最近」というのは「1~2週間くらい」のことです。
百歩譲ったとしても、せいぜい「今月出た本」が「最近の本」です。
(もちろん、そのへんの意識は書店によって違うと思いますが)
 
でも、それは毎日、書店に居る書店員だからこその意識ですよね。
お客さんにとっては、もしかしたら「半年」くらいまでは「最近」なのかもしれません。
 
売る側の「当たり前」と、買う側の「当たり前」
本をよく読む人の「当たり前」と、たまにしか本を読まない人の「当たり前」
しょっちゅう書店に来る人の「当たり前」と、年に数回しか書店を訪れない人の「当たり前」
 
店主も含め書店員の多くは前者に属するわけです。でもお客さんの多くは後者。
この件に限らず、後者の「当たり前」をちゃんと理解していないと、お客さんのニーズにしっかり応えるのは難しいよね、と思いました。

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