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外交とサッカーの類似性~知彼知己者百戦不殆~

J2の残留争いが佳境を迎えている。

我が大宮アルディージャも不本意ながらその渦中にいるクラブの一つだ。11月16日現在で残り3試合、降格圏内の19位ギラヴァンツ北九州とは勝ち点差わずかに3。全く予断を許さない状況である。

今季はクラブOBでもある岩瀬健氏を監督に招聘。加藤望監督のもとで絶望の淵に沈んでいた柏レイソルを見事に復活させた実績を持ち、名将の誉れ高い大分トリニータの片野坂知宏監督の右腕としても活躍してきた岩瀬監督。戦術に詳しいサポーター仲間からも期待を寄せる声が多く寄せられたことを記憶している。新生アルディージャの船出は希望に満ちていた。

しかし良いサッカーはするもののなかなか結果がついてこない。現在残留を激しく争っているSC相模原や愛媛FC、ギラヴァンツ北九州などといった下位チームからの取りこぼしも目立った。結局15試合でわずか2勝しか挙げられず、5月半ばに解任となってしまった。

その後佐々木則夫暫定監督を経て就任したのが霜田正浩現監督。V字回復とまではいかないものの、2度の2連勝をマークするなどチームは着実に上向いた。ここにきて4戦勝ちなしと再び苦境に陥ってはいるが、霜田監督でなければもっと苦しい位置に置かれていた可能性は極めて高いだろう。

敵を知り己を知れば百戦危うからず

僕は試合前後の監督のインタビューを見るのが好きだ。当然話せることと話せないことがあるのだろうが、インタビューを聞くとその監督の哲学や思想を垣間見ることができる。

岩瀬監督はどちらかというと「自分はどういうサッカーをしたいのか」という視点での発言が多かったように感じる。その一方で、自軍の選手たちの特性や対戦相手の特徴について言及する場面はあまり見られなかった。

僕は岩瀬監督の志向するサッカーに大きな魅力を感じていた一人だ。3列目からの持ち上がりやハーフスペースの活用で再現性のある攻撃の形を模索した岩瀬監督のチームは見ていて非常に楽しかった。

しかし、トップチームは結果も求められる。本来はトップチームのカテゴリーに関係なくファン・サポーターやスポンサー、行政に同じように支えられる状態こそが理想ではあるのだが、残念ながら我が国のサッカー文化はまだそこまで成熟していない。J3降格となると入場料収入もスポンサー収入も大きく減少してしまう。そのダメージたるや、J1からJ2に降格した時以上のものであることは間違いないだろう。

一方で霜田監督のインタビューは自軍の戦力や相手の特徴に言及したものが非常に多いように感じる。もちろんインタビューでの発言内容だけで監督を評価することなどできないが、試合を観ていても選手の特性をしっかり活かして相手の良さを消すサッカーが出来ているように思う。霜田監督が自軍の選手の特性や対戦相手の特徴をしっかりと分析して試合に臨んでいることが、就任後のチームの復活に繋がっていることは確かなようである。

皆さんは孫子の兵法の一節に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というものがあることをご存じだろうか。読んで字のごとく、敵の情勢も味方の情勢も知っていれば百回戦っても危険がないという意味だ。ちなみに孫子は「敵を知らずして己を知れば一勝一負す」「敵を知らず己を知らざれば戦う毎に必ず危うし」とも言っている。敵の情勢を知らなければ、いくら己の情勢を知り尽くしていても五分五分の勝負にしかならず、敵の情勢も己の情勢も知らなければ戦うたびに危険が生じるということだ。

選挙とサッカー

地盤もカバンも看板もないのに選挙に負けたことがないという地方議員の方から選挙の心得をうかがう機会があった。そのときに仰っていたのがまさに孫子の兵法。敵と己の双方を知れということであった。

敵というのはすなわち他の候補者。他の候補者はどこの地域を地盤としているのか、どのような政策分野に強みを持っているのか、男女比はどのくらいで年齢の分布はどうなっているのか。これらを熟知することによって、重点的に回るべきエリアや特に力を入れるべき政策分野が見えてくるし、キャッチフレーズやプロフィール等の見せ方も変わってくる。

そして己というのはもちろん自分自身。例えば僕の場合は25歳という若さが何よりの武器になるし、47都道府県全てを回って地方創生の現場を見てきた経験は大きな強みになる。いくら対立候補の情勢を正確につかめていたとしても、自身の強みがなんなのか分からなければその価値は半減してしまう。まさに孫子の言うとおりだ。

以前にもサッカーと選挙という切り口で記事を書いたが、改めてこの両者の類似点を発見したように思う。


外交とサッカー

所信表明記事でも触れたように僕の専攻は地方創生だが、大学4年次はあらかた単位も取り終えて時間が余っていたので、外交のゼミにも籍を置いていた。


特に香港の問題に関心を持ち、中国についてのレポートを書いたり報告を行ったりした。一時期メディアにもよく取り上げられていた”民主の女神”を連れ回して遊んだのは良い思い出だ。

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現在我が国が直面する最大のリスクの一つが中国の脅威だろう。だからこそ中国について深く知ることは極めて大事なことだ。僕の専門である地方創生が「己を知ること」であるならば、外国の情勢について学ぶことは「敵を知ること」。

日本の強み・弱みと外国の情勢の双方を知ることによって、初めて国益にかなう外交戦略を考えることができるのだ。諸外国と対話をしようとすると売国奴だと怒り出す人たちも、我が国の素晴らしさに目を向けず出羽守のようなことばかり言う人たちも、僕からしたら同じようにしか見えない。

痛点を知れ

先日こんなニュースが中国から飛び込んできた。

あまり大きな話題にはなっていないが、中国の事情を分かっていればこれが極めて大きなことで、我が国にとっても多大な影響がある話だということは容易に分かる。有料部分ではなぜこのニュースが我が国にとっても大事なのかお話ししよう。

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