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選挙は推し活~サッカー旅のおともにポスターを~

先日、衆議院が解散した。19日公示、31日投開票の日程で衆議院選挙が行われるが、事実上選挙戦は既にスタートしていると言っていい。各党とも完全に選挙モード全開である。

僕が本日筆を執っているのは、OWL magazine内で今月分の掲載日程を決める編集会議を行った段階では明日が投開票日となる公算が強かったためである。「17日投開票だろうから、読者の方々の選挙への関心が最も高いであろう16日に選挙に関する記事を出させてほしい」と強く要請し本日の掲載にこぎつけた。しかし蓋を開けてみれば解散こそしたもののまだ選挙公示前という何とも中途半端なタイミングになってしまった。

というのも、衆議院議員の任期が10月21日までなのだ。任期満了後まで衆院選がずれ込むというのは現行憲法下では前例がない。任期満了に伴う10月17日投開票という日程での実施を菅政権が閣議決定するというシナリオが王道だっただけに、菅前総理の突然の退陣は衝撃であった。

選挙とサッカーは似ている

とまあ読みを外した言い訳を延々していても仕方がないので本題に入ろうと思う。今回のテーマは「選挙とサッカーは似ている」という話だ。選挙をテーマにはするものの難しい政策の話は一切出てこないので「選挙」や「政治」を食わず嫌いしている方々も最後までお読みいただきたい。むしろそういう方々にこそお読みいただきたい内容かもしれない。あまりサッカーには興味がないという選挙フリークの皆様も、これを読めばスタジアムに行きたくなるかも!

OWL magazineの読者の皆様は、どこかしらのサッカークラブのサポーターをしているという方がほとんどだろう。中には特定のクラブのサポーターではないけれども推している選手がいるという方もいらっしゃるのだろうか。

サッカーの試合はただ漠然と見るよりも、応援するクラブや選手を決めたうえで見たほうがより楽しむことができる。フォーカスする対象があることによって主観的に見ることができるからだ。推しクラブの勝敗や推し選手の活躍に一喜一憂することこそがサポーターをやっていての最大の醍醐味と言っても過言ではないだろう。

これは選挙についても全く同じことが言える。選挙は言わば推し候補者の当落や推し政党の党勢に一喜一憂するお祭り。楽しんだもん勝ちなのだ。

とはいえ、いきなり推しの政党や政治家を見つけろと言われてもなかなか難しいという方も多いだろう。政党や政治家を推すことに関してハードルが高いと思う方もいらっしゃるかもしれないが、専門的な知識は一切必要ない。別にそれぞれの政党や政治家が発表している政策を端から端まで読み込んで吟味する必要など全くないのだ。さまざまな争点の中から特に大事だと思う一点にフォーカスして候補者や政党を比較すれば、推すべき政治家や政党がハッキリと見えてくる。

コロナで収入が減ってしまい生活が苦しい。子供を産みたいけど教育費が心配。結婚を考えているけどお互いの姓は絶対に残したい。切り口は何でも良いのだ。日常生活を送っていておかしいなと思ったこと、変わってほしいなと感じたこと、そう思ったポイントこそがあなたの重視する争点だ。自身が困っている問題に対して優れた解決策を提示している政党や政治家が力を持てばあなたの生活はきっとよくなる。そのために政党や政治家を推すのだ。ある種サッカークラブやサッカー選手を推す以上に明確なリターンがある。

議会は社会の写し鏡

それでもなかなか自分の重視する争点が見つからなかった場合は、自分のパーソナリティに近い候補者に注目すると良い。世代、性別、出身校、出身地、職種などなど。

世界で初めての民主主義は直接民主制であった。紀元前5世紀前後のアテナイ(ギリシア)では、市民が法律や法案に直接投票し意思決定がなされていた。しかしコミュニティが大きく広がるにつれて直接民主制での意思決定は物理的に不可能になってくる。そこで国民が選挙で代表者を選び議論してもらうことで間接的に政治参加をし、意思の反映・実現を図る間接民主主義が採用された。そしてその代表者による議論が行われるのが議会だ。我が国の衆議院議員が「代議士」と呼ばれる所以である。議員は市民の代表者。そうであるならば議会は社会の写し鏡でなければならない。

しかし実際はどうだろうか。地方議会に20代の議員はほとんどおらず国会に至ってはゼロ。男女比も明らかに男性に偏っている。これでは若年層や女性の意見が政治に反映されない。国会議員の地域的な偏在も問題だ。人口が東京に一極集中している影響で、地方選出の議員が減り東京選出の議員がどんどん増えている。また地方選出と言いながら東京で生まれ育ち地方の実情を肌で分かっていない世襲議員も多い。これでは地方の声がなかなか国政に反映されない。

だからこそ、若者や女性はその一点だけで推すメリットがある。若者は若者、女性は女性ならではの目線を持っている。若者も女性も社会の大事な構成員。社会の針路を決めていく議会の場に若者や女性がほとんどいないのは極めて不健全だ。若者や女性の視点が欠落した政治を続けてきた結果が、我が国が直面している少子高齢化社会であり巨額の財政赤字なのではないか。議会の構成が偏ることはマイノリティのみならず社会全体にとって不利益となる。これを是正するという意味でも、政治にチャレンジしようという若者や女性はどんどん推していくべきなのだ。

あまり政策を生真面目に考えすぎてしまうとめんどくさくなってしまって結局政治そのものに関心を失ってしまいかねない。いきなり各党の公約集を端から端まで読んで比較をするのは、サッカー初観戦の人が戦術ブログを書くようなものだ。サッカー初観戦の人はスタジアムの雰囲気やサポーターのチャント、スタジアムグルメに注目していればいいのだ。小難しい戦術分析など必要ない。雰囲気に魅せられて二度三度と観戦を重ねていくうちに自然と戦術も分かってくるようになる。選挙も全く同じ。入口はポップで良い。イケメンだから推す。美女だから推す。声が良いから推す。雰囲気が好きだから推す。どんなきっかけだろうと関心を持って見続けていけばおのずと問題意識も広がり、必ず広範な政策分野に関心を持てるようになってくる。

開票速報=やべっち、スパサカ、Jリーグタイム

国政選挙の投開票日の夜はNHKからテレビ東京まで全てのキー局で開票速報が放送される。子どもの頃は楽しみしていていたバラエティ番組やドラマが流れてしまい、開票速報を見ながらああだこうだと語り合う両親や親戚の脇で一人いじけていた記憶がある。

しかし自らが選挙権を得て推しの政党や政治家が出来てからは、開票速報を見るのが一気に楽しくなった。自分が投票した候補者は当選するのか、推し政党はどのくらい議席を得ることができるのか、アンチの政党や候補者はどのような結果になったのか。様々な切り口から速報される各選挙区の情報を楽しむことができる。

思えばこれは夜のスポーツニュースと同じだ。BS1で放送されているJリーグタイム、あるいはテレビ朝日からDAZNにお引越ししたやべっちFC改めやべっちスタジアム、かつてTBSで放送されていたスーパーサッカー。サッカーファンの皆さんなら毎週見ているという方も少なくないだろう。

推しの政治家や政党が見つかれば、それらの番組を見るのと同じような気持ちで開票速報を楽しむことができる。それまでは単なる数字の羅列にしか見えていなかった候補者の得票数や各党の獲得議席が、推しの政党や候補者にフォーカスすることで途端に意味のあるものに感じられるようになる。しかも開票速報は読んで字のごとく速報だ。いわば生中継の他会場途中経過的な要素も含まれており、結果を知ったうえで見る夜のスポーツニュースよりもさらにワクワクすること間違いなしだ。

議会傍聴のススメ

今の時代、テレビやネットでもサッカーの試合を観ることは可能だ。しかしスタジアムで観戦することによってテレビやネットでは得られない様々な発見がある。テレビカメラには収まらない選手のオフザボールの動き、リザーブの選手たちの試合中の様子、監督やコーチのベンチワーク、副審や四審の所作動作、客席の模様。長年スタジアムに通っているとむしろテレビカメラが映さない部分にこそサッカーの面白さが凝縮しているとさえ感じるようになってくる。

議会も同じだ。国会をはじめとするほとんどの議会においてネット配信は行われているし、国会であればNHK、埼玉県議会であればテレ玉で中継されることもある。しかしサッカーと同じように議会も実際に生で見ることで初めて分かることがたくさんある。そして生で見なければ分からない部分こそがそれぞれの政治家の本質を表しているように思えてならない。自分の質問時間以外はロクに議場にいない議員、意見の異なる会派の質問が始まると途端に内職を始める議員、終始居眠りしている議員、期数の浅い若手議員や女性議員にばかりヤジを飛ばしている議員など様々な問題議員を見てきたが、これらは家で中継を見ているだけではなかなか分からない。

答弁する側も同様で、自分に関係のない分野の質問はまるで聞いていない大臣もいれば、全ての質問に耳を傾けてうんうんと頷いている大臣もいる。都合が悪くなると全て事務方に答弁させる大臣もいれば、答弁に窮した役人を庇って手を挙げる大臣もいる。

意見の異なる他の会派の政治家に対してどのような態度を取るか、自分よりも立場の低い役人に対してどのように振る舞うか、同僚の若手議員に対してどう面倒を見ているか。いわゆる議会のオフザボール的な部分こそが見られるべきであり、これは議会を傍聴することによって初めて見えてくる。

旅情をそそる選挙ポスター

ここまでは選挙とサッカーは似ているという話をしてきたが、ここからはサッカー”旅”と選挙も繋ぎ合わせることができるという話をしていきたい。旅が大好きな皆さんは必見だ。

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