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「ダサい」じゃなくて「多彩」たま~今そこにある埼玉を愛せ~

OWL magazineの読者の皆様、こんにちは!

いよいよ2日後に迫ったJ2最終節の結末が気になりすぎて、朝も起きられない大宮けんです。

そんな運命の最終節の対戦相手はザスパクサツ群馬。ゲームパティシエ清水慶記、畑尾大翔、藤井悠太、吉永昇偉、岩上祐三、大前元紀と元大宮の選手が多く在籍するチームです。ザスパもまだJ2残留を決められておらず、最終節の結果いかんではJ3降格の可能性があります。隣県で文化的にも深い結びつきがあるので、僕も好きなチームの一つ。こうしたタイミングでの対戦は非常に心苦しいのですが、ここは心を鬼にしてアルディージャの勝利、そしてアルディージャのJ2残留のために全力で応援します。

今回のJ2残留争いに巻き込まれているのは他にSC相模原、ツエーゲン金沢、ギラヴァンツ北九州の3チーム。SC相模原を率いるのは昨季までアルディージャの監督を務めていた髙木琢也氏。ツエーゲン金沢にはアルディージャ時代のチャントがすごくかっこよかった嶋田慎太郎が在籍。

そしてギラヴァンツ北九州には加藤有輝、富山貴光の2選手がレンタルで在籍しています。どのような結末になっても、われわれアルディージャサポーターは手放しに喜べそうにありません。

すたすたぐるぐるの反響続々!

先日出版させていただいた書籍『”サッカー旅”を食べ尽くせ~すたすたぐるぐる埼玉編~』。出版から1か月が経ち、お読みいただいたという方から感想を頂くようになってきました。Twitterの #すたすたぐるぐる というハッシュタグ、Amazonのレビュー、地元の知人友人や家族恋人との会話。さまざまな形で多くの方から感想を頂戴しています。

特に多くの方から言われたのが、僕の書いた大宮の記事と浦和育ちのほりけんさんの記事との対比が面白いということです。実は僕はほりけんさんとはまだ一度もお会いしたことがありません。ちょうど僕がOWL magazineに参加し始めたのと入れ替わりくらいでお休みされてしまったので、僕らには全く面識がないのです。当然打ち合わせなどは全くしていないのですが、見事なまでに対照的な文章が並ぶ結果となりました。

もちろん僕はアルディージャサポーターを代表する立場ではありませんし、ほりけんさんも同様です。たまたま好対照な性格を持った2人が筆を執ったという側面もあるのでしょうが、僕はそれぞれの原稿を初めて並べて読んだ時に、それぞれのクラブや街の特徴がお互いの人格形成に少なからず影響しているのだろうと感じました。

大宮と浦和の関係を描いた歴史や地誌の書籍はたくさん出版されていて僕もいろいろと読みますが、なかなか退屈で飽きてしまうものも少なくありません。この本は写真もイラストもほとんど挿入されていない極めて本格的な文学作品ですが、サッカーをフックにすることで街の特徴をこんなに分かりやすく掴むことができるというのは目から鱗でした。

埼玉県はさいたま市だけじゃない!

他に印象的なのが、COEDO KAWAGOE FCやアヴェントゥーラ川口が取り上げられていたことに言及した感想が多いことです。たしかに #すたすたぐるぐる のついたツイートに目を通していると、COEDO KAWAGOE FCの関係者の方やサポーターの方に多くの反響をいただいているように感じます。

西武本川越ペペでのパネル展やトークン発行型のクラウドファンディングなど様々な話題を振りまいているので感覚が狂いがちなのですが、COEDO KAWAGOE FCはまだ川越市社会人リーグの2部に属するクラブ。市リーグ2部のクラブが一章使って書籍で取り上げられることは極めて異例でしょう。そうした意味でもこの書籍は非常に画期的なものであると言えます。

大宮アルディージャと浦和レッズに関しては、あまりサッカーに関心が無い県民も名前くらいは知っています。しかしアヴェントゥーラ川口やCOEDO KAWAGOE FCは、川口市民や川越市民でもまだまだ知らない方が多数という状況です。

この本の中で僕は「彩の国郷土かるた」についても書きました。詳しくは本を読んでいただきたいのですが、僕がずっと言っているのは「埼玉県民は県への帰属意識が薄いだけでそれぞれの街への愛着は強いんだ」ということです。

大宮アルディージャと浦和レッズによるさいたまダービーが両クラブのサポーターのみならず、普段はサッカーを観ないというそれぞれの街の住人をも巻き込んであれだけ盛り上がるのも、それぞれの街の住人がそれぞれの街を本当に愛しているからです。そういう意味では、さいたま市に次いで県内2番目の人口を誇る川口市のアヴェントゥーラ川口と、県内3番目の人口を誇る川越市のCOEDO KAWAGOE FCが取り上げられていることは、非常に大きな意味があるのです。

僕はさいたま市の人間ですが、さいたま市だけが埼玉県ではありません。NACK5スタジアム大宮や埼玉スタジアム2002に来られたことがあるという読者の方はたくさんおられるかと思いますが、川口の青木町公園や川越の安比奈親水公園に足を運んだ経験のある方はほとんどおられないでしょう。大宮も浦和もそれぞれ特色ある素晴らしい街ですが、その2都市だけを見て埼玉県を分かった気になるのは本当にもったいないことだと声を大にして言いたいと思います。

大宮と浦和に日々虐げられている与野には与野蹴魂会、入間市にはACアルマレッザ入間、坂戸市には大成シティFC坂戸、そして熊谷にはクマガヤサッカースポーツクラブ。今回は取り上げることのできなかった地域にも魅力あるクラブはたくさんあります。

また先ごろ開幕したWEリーグにも、埼玉県からは3チームが参加しています。大宮アルディージャVENTUS、書籍でも登場する三菱重工浦和レッズレディース、そしてちふれASエルフェン埼玉。大宮と浦和は言うまでもなくさいたま市のチームですが、ちふれASエルフェン埼玉は熊谷市をホームタウンとして活動しています。熊谷市は県北エリアにおける中心都市で、新幹線も停車します。

ラグビーワールドカップの会場としても使用され、ジャパンラグビートップリーグのパナソニックワイルドナイツが群馬県から移転してくるなど、ラグビーどころとしての印象が強い街。その一方でサッカーはアルディージャが年に一度試合を行う程度。過去には天皇杯や地域決勝を開催した実績もあるのですが、あまりサッカー旅の文脈では登場することの少ない街でした。

県庁所在地である浦和には県立浦和高校と県立浦和第一女子高校。東部地区の中心である春日部には県立春日部高校と県立春日部女子高校。西部地区の中心である川越には県立川越高校と県立川越女子高校。そして北部地区の中心である県立熊谷高校と県立熊谷女子高校。埼玉は各地域の中心都市に男女別学の伝統校があります。かつての旧制中学の時代は浦和が一中、熊谷が二中、川越が三中、春日部が四中でした。こんなところからも熊谷という街のポテンシャルの高さが垣間見えますね。

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(埼玉県教育委員会のホームページより)

そんな熊谷を本拠地にする野球チームがあることを皆様はご存知でしょうか?それはルートインBCリーグの埼玉武蔵ヒートベアーズ。皆様はご存知でしょうか?

苦しかった埼玉県のプロスポーツ

我が大宮アルディージャは皆様ご承知のようにJ3降格危機。そしてNPBの埼玉西武ライオンズは埼玉移転後初となる実に42年ぶりのパ・リーグ最下位。今年の埼玉県のプロスポーツは、あまり明るい話題がありませんでした。

そんな中でわれわれ埼玉県民の希望の光となったのがヒートベアーズでした。リーグ名、チーム名ともにあまり聞き馴染みのない方も多いかもしれませんが、有料部分ではこのチームが埼玉県で活動する意義について語らせてください。埼玉西武ライオンズという日本プロ野球をリードしてきた名門球団を擁する埼玉県で、なぜヒートベアーズが立ち上がったのか。これは書籍でアヴェントゥーラ川口やCOEDO KAWAGOE FCが取り上げられていたことと密接に関係します。野球の話というよりかは埼玉の話なので、あまり野球には興味ないんだよなという方も必ず楽しめるかと思います!

ここからは、有料公開にさせていただきます。
旅とサッカーを紡ぐWebマガジン・OWL magazineでは毎月700円(税込)で個性あふれる執筆陣による記事を毎日読むことができます。
執筆陣には、OWL magzine代表の中村慎太郎、ノンフィクションライターの宇都宮徹壱さんの他、川崎フロンターレや鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、大宮アルディージャ、V・ファーレン長崎、東京武蔵野ユナイテッドFCなどなど全国各地のサポーターが勢ぞろいです。

ルートインBCリーグはプロ野球の独立リーグ。NPBと同じ12球団で構成され、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉武蔵、神奈川、信濃、新潟、富山、石川、福井、滋賀の各球団が参加しています。近年はNPBに本指名される選手も出てくるなど、着実に人気実力ともにレベルアップしています。

12球団のうちNPB球団の立地県で活動するのが埼玉武蔵と神奈川の2球団。そして県名ではなくかつての律令国名を名乗っているのが埼玉武蔵と信濃の2球団。そしてその両者に該当するのは埼玉武蔵ヒートベアーズだけです。これは決して偶然ではありません。これこそが埼玉に2つ目のプロ野球チームが誕生した所以なのです。

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